第三十七章
「おお、いたいた。テリー、こんな所に来てたか」
同じ頃、大陸中央部の砦。アーカンサ地方と呼ばれるここは、大陸のほぼ中心に位置する。東はファンブルグ、西はルーカスへ至る架け橋のような街。連戦に次ぐ連戦により疲弊した彼らは、この場所で休息を取っていた。
「お、やっと来たか?ったくよ、皇国軍の連中が俺達に気付いてな。共同戦線を張れだなんだって、人使いが荒くてな。そっちはどうだ?」
「こっちも同じさ。シャルが最前線だと危ないってんで、もっぱら後方のモンスター討伐だけどな。そうだ、途中でちょいと怪しいおっさんを見かけたんだけど。先生は?」
テリーが指し示した方角には、一軒の民家があった。取り残されたように建つ、古い家屋。砦という場所には不釣り合いなそれはしかし、明らかな傷は一つとして残されていなかった。
「先生の生まれ故郷、なんだとさ。母親がこの地方で生まれ育ったらしい。実家が綺麗なまま残ってる事がおかしいってんで、一人で見に行った」
「あれの父親は、元天使軍の長だがな。それより、休んでいる場合でもないぞ。皇国も軍備を整え、次の会戦を考えている。あのガキが帝国側の切り札を潰したおかげで、決戦を望む声が高まったからな」
誰が、彼の名を知らないと言うだろうか。かつての帝国軍において最強と謳われ、無敗を誇った怪物。数々の武勇伝を生み出し、今なお存命する前大戦の英雄の姿を。リュージュは一度学園でその姿を見ていたが、初見であるテリーもまた、目を丸くしていた。
「ああ、俺はあいつの元級友でな。今回の戦乱に関しても、元同僚の仕業となれば無視出来ない。安心しろ、現時点では皇国軍を敵に回すつもりはない」
「え、もうあの儀式魔法って、潰せたんですか?レイル君とクロハ、一体何やってるんだろ……?」
「あれ、リュージュは知らなかったか?つい数日前だけどな、儀式の実行役全員が捕まって、皇国軍に引き渡されたってさ。ああ、そういえばその頃って―――」
「私、ずっと海の上だったからね?でもおかげで、頼まれてた人は全員集まったよ。大陸中の港に行ったから、もうクタクタだよ~……。でもさ、レイル君に黙って連れてきちゃったけど、良かったの?」
見ればリュージュの遥か後方に、数人の人影が見えた。中には、見慣れた人影さえも。この戦争を終わらせる為、ゲイルらが必要と思った人材を呼び寄せたのだった。実際の交渉はリュージュとナギ、シャルロッテの三人が行っていたのだが。
「これで全員、だよな。自分で言うのもなんだけど、随分豪華なメンツだぜ。いっそ勢い余って、このまま大陸制覇でも目指すか!」
ゲイルの声に、その場の全員が笑い声をあげた。冗談でなく、彼らであれば、軍の一個師団にも匹敵するだけの戦力を持つ。長引いた戦乱で疲弊した皇国軍が相手であれば、それなりに渡り合える程に。軍が彼らを頼みとした背景には、そういった理由も含まれている。




