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Folktale-side DARKER-  作者: シブ
第二部
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第十章

 細い体が、宙を舞う。繰り出す攻撃は悉く弾き返され、リュージュとゲイルは、窮地に立っていた。

「何で、こんなに強いのよ……。こいつら、一般兵よね?」

「どう見ても、将軍ではないな。コピー品みたいに同じ目をしてる、多分操られてるだけなんだろ。にしてもこの力、肉体強化してるレイル並じゃねえか!」

 剣を弾きつつ、ゲイルは叫んだ。繰り出される一撃は重く、速度はテリーと互角。彼らの知る範囲での強敵を掛け合わせたかのような戦力に、二人は久々の苦戦を強いられていた。

「久しぶりよね、こんな敵。今まで盗賊とか山賊相手だったから、ちょっと楽しいかも!」

 曲がりなりにも、二人共に学園都市において、好成績を修めていた実力者。そして反乱でも生き延び、リュージュは―――魔法抜きとはいえ―――レイルとも肩を並べる程の実力者。この状況においても笑顔を作れる程度に、鍛えられてきた。

「死んだような目をしてるくせに、力は一級品か。気をつけろ、一部の奴ら、障壁も展開してやがる」

 ゲイルの見た先には、二人の剣士がいた。相手の数は八人、半分に満たないとはいえ、物理・魔法どちらかの障壁を持つだけで、取るべき戦法は変化していく。

「両方、という事はなさそうですね。幾つか試してみましたが、初級魔法でも効果を確認しています。まあ、複合型の習得難度は最上級ですから、そうそう持たれていては敵いませんが」

 二人の後衛として、ユーリがついていた。現在ミネルバらは、三班に分かれて活動している。理由は一つ、そうしなければならない事情がある為だった。


 相次ぐ暴動と略奪行為。最初は全員であたってきたミネルバらだったが、ついにそれは破綻を迎えた。あまりにも人数が多すぎる為に、ユウとナギでは支援が追い付かなくなったのだった。後衛もクロハとユーリのみで、護衛と対処が間に合わない。それ故に、彼らは部隊を三つに分ける事を決めた。二つはこのまま暴動や山賊らの討伐、もう一つはレイルの捜索と遊撃。捜索活動には速度に定評のあるテリー、シャルロッテの二人があたっている。

 残る八人は四人ずつに分かれ、それぞれゲイル、リュージュ、ナギとユーリ。そしてショウ、ミネルバ、ユウとクロハという顔触れ。突出型より、バランスを求めた中では、最も均整の取れる陣容であろう。

「先生、ユウの方に二人行きます!クロハ、援護射撃は任せる。突っ込むぞ!」

 半端者、と揶揄されるショウが吠える。実力は進学科内でも下ではあるが、潜在能力に関しては一級品という。初等部の頃から学園にいたというから、当然なのだが。

 長剣が敵兵の鎧を砕き、生身を晒させる。そこへ追撃の炎の矢が飛び込むも、寸前でかき消されていった。魔法障壁、それに他ならないのだが、様子がおかしい。

 障壁の類は、発動時にその周辺へ魔法陣を浮かばせる。しかし、クロハのファイヤアローが貫いた際、それが出てこない。大気中に霧散したかのように、勝手に消え去っていったのだった。

「まさか、能力の一つ……?でもこの敵、人間の意思を感じない。なら、一体どうして?」

 能力、特技―――様々な呼ばれ方をされているが、その内容は一点に絞られる。即ち、魔力の一方向的運用。自身で選択した効果を、制限の範囲内で使用する為のカギ。ミネルバはそれを能力と呼び、ジェノスは特技と呼んでいた。一瞬はそれを疑ったが、相手にはヒトとしての意思を感じる事が出来ず、まるで操り人形。能力の使用には一定の意識が必要とされ、完全自動で発動させられる物は滅多に存在しない。あまりに特殊な物は、習得する事が困難である為にほかならない。

「どっちにしても、倒さないといけない、って事ですよね。私達の後ろには、街が―――無関係な人が住む場所が、たくさんあるんです。それに、ユウもいます。レイル君がいないなら、私達が守らないと。戻ってきた時、彼に顔向け出来ませんよ?ショウ君、もっと前に出ていいよ!牽制は私がする」

 クロハは叫びながら、魔法の詠唱を開始していく。それを見たミネルバは、嬉しそうな笑みを浮かべた。教え子の、真っ直ぐな成長。その事実が何より嬉しいから。そして、だからこそこの子達を、未来を守りたい。心からそう願い、自身がそれだけの力を持つ事を、また嬉しく思っていた。

「私も、まだまだ負けていられないわね。老け込んでたら、若い子達に笑われちゃう。いいわ、後の事なんて考えない。久しぶりだけれど、思いっきり暴れさせてもらうわ。クロハちゃん、背中は任せるわね?」

 それに対し、クロハは無言で答えた。首を縦に振り、肯定の意味で。持てる力全てを注ぎ込み、彼女らの攻勢が始まる。本来であれば、その場にいるはずの彼。その姿を胸に描き。


「何だ、こいつら……。生気を感じない。っていうかこの雰囲気、前に何処かで?」

 街へ戻り船を返却したレイルは、旅を再開していた。生まれ故郷の場所へ、両親の墓参りをする為に。奇しくもその日は、二人の命日。遺体の入っていない墓ではあるが、彼にとっては大切な場所の一つであった。その途中、何者かによる襲撃に遭ったのである。

「教官並の耐魔力……?いや、それ以上か。それなら、こっちはどうだ!」

 疾駆する体を、兵は受けきれなかった。交差する度に二、三回の剣撃を受け、体は切り刻まれていく。しかし、その歩みは止まる事なく、ただレイルを狙っていた……。動く死体、その言葉がレイルの頭を横切る。

「薬か、改造手術あたりか?制圧しても、口を割るってことは―――なさそうだな、っと!」

 繰り返される、暴力的な攻撃。各々が勝手に動いているようで、実は高度な連携を保っている。意識を失っているにも関わらず、体が自動で反応する。まるで、操り人形の如く……。

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