表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Folktale-side DARKER-  作者: シブ
第二部
24/74

第六章

 ミネルバ達は、沼地を進んでいた。光の沼と呼ばれる、大陸内では数少ない、安全地帯。ここにはモンスターの類は一切生息せず、いたとしても安全な、決して人を襲わない種のみとなっていた。

「うう、何かここ薄気味悪い……。ゲイル君、もっと他の道は無かったの?」

「後は砂漠の横断か、激しい遠回りの山越えかだな。ここも若干遠回りではあるけど、モンスターがいないから楽なんだよ。いくら戦力が整ってるからって、無駄に体力を使うわけにはいかないからな」

 最後尾を歩く、リュージュとゲイル。砂漠を通ってもモンスターは比較的に少ないが、盗賊が出る上に、町も一つしか存在しない。水分補給が要となる為、資金面に不安のある一行では、その選択肢は最初から無いも同然である。

「今更だけど、ルーカス行きなら、古都を通るのも有りじゃないか?あっちなら街道も整備されてるし、わざわざこんな場所を通らなくても……」

「その代わりに、高い通行料を取られるんですよ。あの街は、今では商業都市となっています。街道にある街を通る度に通行料を課されるのですから、やはり選択肢には入らないでしょう?」

 前を歩くテリーとユーリが、会話に加わる。隊列は一直線となり、先頭にはミネルバ、後ろにクロハとショウが横に並び、中心にはユウ。その後詰としてテリーとユーリ、最後尾にリュージュとゲイルが付くという形になっていた。二つに分けるという案も出たようだが、支援がユウ一人という点から、ゲイル発案のこの隊形が採用されている。

「そういう事。金も比較的かからない、且つ襲撃の心配が無いって点を見れば、このルート以外は選べないんだよ。それに、今のユウに戦闘を任せるわけには、な?」

 最後は小声となり、ゲイルは呟くように告げた。城にいた頃は気丈に振る舞い、周りにも笑顔を見せていた彼女。長年の付き合いであるリュージュやゲイルには、それが空元気である事が見てとれていた。レイルの長い不在。それが、彼女の心を暗く、曇らせていた……。

「だな……。学園で一回顔を見ただけで、会話は出来てないんだろ?俺達には、色々と話していったけど。無駄に律儀っていうか、気にしすぎじゃないか?本人の気持ち、気付いてないわけじゃないだろうに」

 ユウが持つ最高の笑顔は、レイルの前でしか見られない。学園内ではリュージュやナギに次いで人気のある彼女だが、その笑顔が自分に向かないと分かり、軒並み男子連中はその想いを告げる事を諦めていた。彼らはレイルの成績、また戦闘能力を知り、更に絶望していくのだが……。

「いや、多分本気で気付いてないな。戦闘技術、状況判断能力に関しては、多分先生と同程度。でも恋愛とか、プラスの感情についてはかなり鈍感だからな、あいつ。ベッタベタのラブコメ展開を見せないと、二人が付き合ってるって事も分からない位だ……」

 事実、とある学部の二人が付き合っている、という噂が流れていた。ゲイルやショウはその現場を目撃した上に、しばしば二人が並んで帰る場面を見ている。が、それを見たレイルは一言、『仲良いんだな、あの二人』と言っていた程に。

「って、無駄話はここまでか……。テリー、気付いたか?」

「ああ、見られてるな。気配は隠してるけど、数人は殺気を向けてる。盗賊、野盗の類か?」

 一瞬、微かな気配を元に、二人は一つの方角を見る。左斜め前方、進行方向に該当する位置に、何らかの視線を感じていた。

「先生は気付いてるけど、無視してるって所か。テリーは元の位置に戻って、ユウの護衛に。先生、なるべく気付かれない範囲の物で結界の準備、お願いします」

 二人は頷き、元いた場所へ戻っていく。ただ、テリーはそこから少し前方に移動し、中心にいるユウを守る配置へ。そのさり気ない動きに彼女は気付いておらず、ただ前を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ