第3部 -希望-
日が高く昇る。そのせいで地上には陰はほとんどみえなかった。
もちろん兵達の疲労も計り知れなかった。
その証拠に行きには元気だった兵達も口数は出発の時よりも明らかに減っていた。
城を出てからかなり歩いていた。
−休憩をとるか・・・−
そう羽炎は思って声を張り上げた。
「木陰が見つかったら休息をとる!」
そういったとたん兵達の顔が喜びに変わった。
兵達はまた歩き始める。いささか元気がでてきたようだった。
しばらくすると、丘に木が1本たっているところに出た。その木はとても大きく、おそらく何千年も生きてきたのだろうと、羽炎はふと考える。今日のような天気にでも喜んでいるのだろうか驚いているのだろうか、そよ風にのって葉達が踊っていた。1本の木の、たわいもない遊びなのだろうが羽炎はしばらくその踊りに見入っていた。
他の兵や鬼猿もぼぅっとして気が抜けたようだ。
羽炎は我に返ると、皆に休息をとるよう、うながした。
「見張りを5人ほどたてる!」
そういうと鬼猿が5人すぐに選んできた。
その兵達はこの炎天下のなか見張りにたたされるにもかかわらず、さほどいやな顔はしていなかった。そういうやつでなければ勤まらない。というよりも、羽炎が鍛え抜いた兵にいやな顔をするものはいなかった。いやな顔をするようなやつはとっくに里に帰ってる。
5人の兵はそれぞれ見晴らしのよい所に立った。
それでやっと兵達も落ち着いたようだった。さっきまでピリピリしていた顔はなくなっていた。そよ風に身をまかせる。直射日光が当たらないせいで涼しい風だけが体を抜けた。新鮮な空気を吸うと体の中にいたもやもやがすっきりと消えたような気がした。しばらくここに住もうか。そう思わせられるような場所だった。青空には雲はほとんどなく、まるで空に吸い込まれるようだった。
静かな時が流れる・・・。羽炎がうとうとし始めた頃だった。
「敵です!」ふいにだれかが叫んだ。
羽炎が飛び跳ねたように起きあがるとそこにはさっきの見張りの兵が立っていた。
息が荒く、汗が滝のように流れ出ているのを見ると、よほど急いで走ってきたのだろう。
「北の方角から、3000程度の軍勢かと思われます!」
周りにいた兵隊が静まりかえった。
そよ風がながれた。
「迎え撃て!」
そう羽炎が叫ぶと兵達もあわせて歓声をあげた。