第2部 -宿命-
羽厳が戦死してから3年がたった・・・
家がある。表札には「羽」と書いてある。おそらくあの羽厳のものであろう。しかしその家にはあのかつての大将の家とはいえないほどさびれていた・・・・
すると、その寂れた家から1人の青年が出できた。その家とは不似合いのりっぱな顔立ちをしている。その顔はあの羽厳に似ていることから、おそらく羽厳の息子であろうとおもわれた。腰に立派な剣をもっている。その男は歩き出した。どうやらこの町の宮殿に向かっているようである。
「おぬしは・・・」
そういったのはここの城の主である。でっぷりと太っていて、いままでどういう暮らしをしていたかがわかる。
「おぬしはかつての将軍、羽厳の息子ではないか!」
「父のことを言うのはやめてください」
「そうか・・・すまん。」「おぬし、名をいったか・・・たしか・・・」
「羽炎です。」
その息子は答えた。
「羽炎か。」「で、なにようだ?」
「もう18です。私も戦いに参加させてください。」
「むむ・・・そうかあれからもう3年か・・・」
3年、本当に早かった・・・父が死んだのも昨日のような気分だ。
そう、父が死んだのはここの北にある反乱軍の町の近くだ。
反乱軍・・・
とはいってもこんな豚のようなやつに性格が悪く、農民を収集してこきを使うようなやつには誰だって反抗したくもなるだろう。
父だってこんなやつに仕えなければあんなことには・・・・いや過ぎたことを悔やんでもしょうがない。
「いいだろう、お前に5000の兵をやろう。」
ピクリ、と羽炎の眉がうごいた。ここから一刻も早く出たかった。
敵の総兵力は10万とも50万ともいわれている。
どう考えても5000ばかりの兵で敵の要塞を落とすことなど不可能だ。
「少ないと思うのですが。5000ばかりでは敵に遊ばれるだけです!」
「今までのよしみで貸してやっているんだぞ。嫌なら貸さん。」
ふざけてる・・・こいつは戦争というものを知っているのだろうか。
とにかく私はここから離れることにした。
城をでると、1,000騎ほどの騎兵と1人の武人が到着を待っていた。
騎兵は羽厳、つまり父の精鋭部隊である。「最炎」とよばれるこの部隊は、この国の部隊でも1番の強さを誇る。
武人の名は「鬼猿」昔からの親友であり、私の1番の部下だ。
鬼猿がいった。
「どうした?」
「いや、なんでもない。」
「おまえはいつもそうだ。きちんと返事もできんのか?」
鬼猿がわらった。
「5000の兵をもらった。」
「5千?ほんとにそれだけか?」
「うそなんかいうか。第一あいつがそんなに貸してはくれんだろう。」
「そうだが・・・5000では何もできんぞ。」
たしかにそうだ。しかしこれもまた運命なのかもしれない。と、羽炎は思った。
「とにかく、あいつの兵だ。どうせ鍛えられてはいないだろう。」
「訓練か・・・確かに大切だが羽炎、お前の鍛えかたははんぱじゃない。」
「なにをいってる。戦争で犬死にするよりはましだろ。」
「そうかもしれんが、あれはやりすぎだ。」
確かに訓練で、毎回何人かが兵を辞める。しかし私はそれを止めなかった。そんな弱気のやつじゃ兵は務まらない。戦場に行ってもすぐ死ぬだけだ。
訓練が始まるとすぐに弱音を吐くものが現れてきた。そういうやつはいらない。羽炎
はそういうやつは里に返してやった。里にかえって農業に専念していたほうがよっぽど役に立つ。
しかし「最炎」部隊は違った。
部隊には弱音をはくものはもちろん、それどころか息切れ一つもしていなかった。
馬上だというのにきっちりと並び、それは見るものを感嘆させた。
羽炎がつぶやいた。おそらく彼の言葉が聞こえたものはいないだろう。
仇は討つ。かならず・・・・
ここはつなぎの部分ですので説明が多くなってしまいました。
次回はいよいよ、羽炎が出兵します。