第一部 -序章-
第一部 -序章-
静寂・・・・・・。
まさにそれがぴったりだ。この険しい山脈地帯を通るものはめったにいなく、またそこで何者かがさわぐ、という場所でもない。しかし、そこをたくさんの人が歩いてくる。みな手にはきらきらと輝く物を持っていた。それは人には「剣」や「槍」とよばれた。それらはこの場にはまったくというほど奇妙にうつった。そして今、その先頭を歩いているものは豪華な身なりをしている。おそらく相当な身分のようだとわかる。その男は顔をしかめていた・・・
「変だ・・・。」 「もうそろそろ敵の国に入るはずなのだが・・・・」
男はあたりを見回すが、周りはすべて岩でできたがけによって視界がはばまれて何も分からない。
「引き返した方がよさそうだな・・・・」
そう彼がつぶやいたときであった。
歓声が響いたかと思うと突如がけの上に3000ほどの兵があらわれたのだ。みな手には弓を持っている・・・
「いかん!ひきかえせ!!」
そう彼は部隊に伝えた。がどうやら遅すぎたようだった。
1人の隊長らしき人が号令をかけると、がけの上にいた兵たちはいっせいに弓をかまえ、矢を放った・・・・。
その矢はやがて1つの獣のようにおそいかかってきた。獣は空を覆い、まるで夜になったようであった。
その男の兵は次々とその獣に襲われていった。悲鳴は絶えず、まるでそこは地獄のようであった。
「早く引き返さんか!なにをしている!」
「羽厳様!大変です!」
どうやらこの男は羽厳というらしい。
「今きたところが敵によって妨害され進めません!!」
「上のがけに気をとられている内に回り込まれたものと思います!」
「なにっ!!」
そう羽厳が驚いたときである。
衝撃が彼の背中を襲った。矢だ・・・・・背に矢が刺さったのだと羽厳は分かった。
「羽厳様ー!!」
自分の兵の声が聞こえたが、なぜか変な音が混ざって聞き取りにくい・・・
ふいに何かが倒れるような音がしたが、それは自分が倒れたのだ、とわかった。
目の前が白くなっていく・・・・・
周りでは自分の兵がうろたえていく内に敵に射倒されるのがうっすらと分かった。
「俺はここで死ぬのか?」
そう羽厳は思ったが、そのうち何も考えることができなくなってしまった。
視界が白く、明るくなっていった・・・・・
どうでしたでしょうか?「羽厳」と呼ばれるこの男はだれか?一体何が起こっているのか?
すべての謎は 第2部 -宿命- であきらかになります。
これからもよろしくおねがいいたします。