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怪奇事変 黒い窓

掲載日:2026/10/26

一時的にですが、怪奇事変はこの回を持ちまして、不定期更新とさせていただきます。

何時も見てくださった方々、本当にありがとうございました!

第五十一怪 黒い窓


 幼少期の頃に見える子供には見えた景色が存在する。

 それは生ある者と死せる者の境界と言うべき世界……。

 子供は確かに見た、その境界線と言うべき世界を、そして疑問に思った。

 何故親や兄弟には見えなくて、自分にだけ見える世界があるのか…と。


 「黒い?いやだ、ちゃんと映ってるわよ」


 「幸助はもしかしたら夜景の事を言ってるんじゃないか?」


 「いいえ、窓全体が真っ黒だって」


 「そしたら幸助にしか見えない世界があるのかもしれないな」


 「ちょっと、子供に変な事吹き込まないで」


 「……」


 幸助と呼ばれた男児は一部の窓ガラスだけ真っ黒に染まっている景色が見えている。

 外の景色など見える事などできていない、ただ窓が真っ黒に染め上げられている。

 時折蠢いている様に見えるのは気のせいないのか、幸助には分からなかった。


 季節が廻り、歳を重ねてもその光景だけは残っていた。

 幸助が小学生になる頃には部屋を持つ事であまり窓ガラスを見る機会は減ったが、それでもリビングに行くと自然とあの真っ黒な窓ガラスを見る機会はあった。

 他の窓ガラスだけはちゃんと見えるのに何故ここだけはハッキリと見えないのだろ?

 何故他の家族にはちゃんと外の景色が見えて自分には見えないのだろう?

 日記にそう綴って、絵を書き足して、その光景を記録した。


 その日記をみた両親はやはり難病を抱えているのでは?と心配され眼科に連れて行かれ検査も受けたが、決して視力が悪いとかの問題ではなかった。

 そしてまた季節は廻り、中学生になった頃にそれはハッキリと見える様になっていた。


 「父さん、母さん、霊って居るのかな?」


 「何急に?」


 「いや、この間爺ちゃんが亡くなったでしょ?もしかして来てるのかなって」


 「幸助は爺ちゃんっ子だっからな、まぁもしかしたらこっそり幸助を見守っているのかもしれないな」


 「……」


 この時、どう切り出せば良いか分からなかった。

 まだ中学生である自分が“あの窓ガラスには霊が居る”なんて到底信じてもらえるとは思っていなかったからだ。

 当時の幸助はそんな葛藤を父方の祖父に話す事があった。

 そして祖父はその話を真剣に聞いて、祖父もその黒い世界が見える人物だった事を語ってくれた事があった。

 だが、普通の人には視えない世界だと言われ、2人だけの秘密と言う事になったのを覚えている。


 「幸助、その世界を見続けるな、人には言っちゃアカン、爺ちゃんと2人だけの秘密だ」


 「なんで?」


 「人ってのは自分にしか見えない世界を喋られると、皆怖がって離れていくんじゃ、幸助もパパとママに離れられるのは嫌だろ?」


 「……うん」


 「幸助、お前は嘘は言ってない、ただ他の人には視えないだけなんだ、困ったら爺ちゃんが相談に乗ってやる」


 「本当?」


 「ああ、約束だ」


 その約束も他界してしまった祖父にはもう相談はできない。

 祖父は自分達が暮らす家にあまり入り浸りたくなかった様子もあった。

 それはやはりあの黒い世界が関係あるのかもしれないと思っていたからだ。


 そしてまた季節は廻り、幸助は社会人へとなった。

 この家を出て都会で暮らす事になった幸助は引っ越しの準備を進めていた。

 当然リビングに立ち寄ると、一か所だけまだ真っ黒な窓があった。

 日中なのにあそこだけ光を灯さない、少なくとも自分の視界にはそう映っている。

 

 不気味に感じながらも引っ越しの準備を進めていると母が話をかけてきた。


 「幸助、そう言えばお父さんが持っていた遺品の中に、幸助が大人になったら渡して欲しいって言われた物があったの」


 「爺ちゃんが?」


 「ええ、これなんだけど」


 「眼鏡?」


 それは祖父が何時も掛けていた眼鏡だった。

 だが何故それは大人になったら渡す様に両親にお願いしたのかは不明だ。

 試しに掛けてみたが、視界がボヤケる事もなく、ただの伊達メガネじゃないかと思った時、ふと視線を感じた。


 「?」


 その視線はなくなっており、視界に“あの窓”が映るとそこには黒い色は取り除かれており、外の景色がハッキリと映っていた。

 試しに眼鏡を外すと、また真っ黒な世界に包まれた窓が現れ、眼鏡を掛けると透き通った光の世界があった。


 「もし要らないなら捨てるけど——」


 「いや、貰うよ。ありがとう」


 これ以降、たまに帰省する時はこの眼鏡を使う事が多くなった。

 そのせいで親からは視力の心配をされたが、伊達メガネだと言う事と、祖父の遺品と言う事もあって付けてた方が喜ぶと思ったから、などと適当な事を言って済ませた。

 そう、効果はあった。


 都会に出てからと言うもの、あの黒い世界は窓だけじゃなく、他にも沢山見かける事があったのだ。

 近寄りがたく不気味に感じる世界も、この眼鏡をかけているとその世界を覆ってくれる。

 そんな安堵感から手放せなくなってしまった。

 だが視界を覆うだけで嫌な雰囲気は残ったままだった。

 

 ある霊媒師が助言をくれた事があった。

 自分は“視える側”だと、その意味は霊的な意味にあった。

 その時に黒い窓の話もしたが、霊媒師はあくまで仮説でしかないがその理由を教えてくれた。


 あの黒い世界は——霊道と呼ばれる霊の世界だと言う事を。

 黒い世界は霊が密集し、できた形の可能性があると言う事も。

 そして祖父がくれた眼鏡、これは魔除けとされる力が施されているらしく、効果は薄いが霊的な力から多少の身を護る術があったらしい。

 祖父は気づいていたのかもしれない、だが何故大人になった今に渡されたのかは、未だ謎のままだった。


 

 第五十一怪 霊の世界


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