第十四話 信長が将軍を理解する
安土城・本丸。
四国討伐の軍議は、朝から続いていた。
だが──進まない。
広間の空気は荒れていた。
勝家が巻物を叩きつける。
「朝廷が口を出してきおった! 寺社も反発しておる! 公家まで……!」
長秀が眉を寄せる。
「信長様。このままでは、四国の出兵日程が……」
勝家が吐き捨てる。
「将軍が余計なことを……!」
信長は書状から目を離さずに言った。
「将軍は戦っている」
「しかも──勝っている」
広間が止まった。
勝家が言葉を失う。
長秀が息を呑む。
信長は書状を指で押さえた。
「軍ではない」
「人を動かしておる」
「政治でな」
勝家は理解できないという顔をした。
「政治……?」
長秀は静かに言う。
「……朝廷、寺社、公家、堺……すべてが、将軍様の動きに反応しております」
信長は笑った。
「戦場が違う」
「将軍は武士と戦っておらぬ」
「国と戦っておる」
勝家は拳を握る。
「信長様、四国討伐は……」
信長は淡々と事実を並べる。
「朝廷は“慎重に”と言う。寺社は“乱を憂う”と言う。公家は“調停すべき”と言う」
「堺は沈黙しておる」
「それが一番怖い」
長秀が息を呑む。
信長は書状を置いた。
「将軍は、国を動かした」
信長は小さく笑った。
「見事だ」
勝家は震える声で言う。
「信長様……このままでは軍が……」
信長は立ち上がった。
「軍は遅れる」
「だが──」
「革命は遅れぬ」
勝家が驚く。
長秀は静かに息を吸った。
信長は天守の窓から京の方角を見る。
「将軍は構造を使う。朝廷、公家、寺社、商人……すべてを同時に動かす」
「速さでは勝てぬ」
長秀が問う。
「では……どうされます」
信長は笑った。
「面白い」
勝家が目を丸くする。
信長は続けた。
「将軍」
「遊んでやる」
信長は京の方角を見た。
「革命は」
「止まらぬ」




