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第9話 ミニアの初進化

荒野の朝は薄青く、冷たかった。夜の狩りで身体に溜まった疲れを、風が少しずつさらっていく。

魔蠅の俺、クロは複眼を空へ向けながら羽を軽く震わせた。

(さて……今日もやるか)

その横で、小さな蟻の魔物——ミニアが、ちょこちょこと動きながら、俺の方を見上げている。

(ああ、行くぞ、ミニア。今日でさらに強くなるんだ)

ミニアは元気よく顎を鳴らし、俺の足元にぴたりと寄り添った。


俺は高度を上げ、ミニアは地面を走る。最初に見つけたのは、小型のトカゲのような魔物だ。

(まずは軽く行くぞ)

俺は黒い魔力弾を高速で撃つ。

ピシュッ!

「ギッ!?」


トカゲ型魔物が毒&腐敗液をくらって大きく怯んで倒れた瞬間、ミニアが低く跳び上がり、鋭い顎でやわらかそうな足首に噛みついた。

カチン!

(お、いいぞミニア!)

【経験値+3】


俺は魔力を吸収しながら、トカゲ型魔物の死肉をむさぼるミニアを見る。

ミニアの体表……ほんのわずかだが、「黒光りする節」が増えている気がした。

(これ、進化の兆しかもな……)

 

***


次の獲物は、少し大きめの魔物だった。体長50センチほどのイヌ型魔物。

牙も鋭いし、スピードもまぁまぁある。

「ガウッ!」


ミニアは反射的に俺の後ろへ隠れた。

俺はミニアを背に乗せたまま、すぐに高度を上げてイヌ型魔物の上を取った。

(落ち着け。いつも通りだ)


黒い魔力を集中させ——

今度は口器を回転させながら、マシンガンのように弾丸を打ち込んでいく。

ピシュッ!ピシュッ!ピシュッ!ピシュッ!ピシュッ!ピシュッ!ピシュッ!


「ギャッ!?」

イヌ型魔物の全身に魔力弾が付着し、転倒したその瞬間、ミニアが俺の背から飛び出し、突っ込んだ。

ガチン!


自由落下の影響もあるのか、先程よりも前よりも強い噛みつきだった。イヌ型魔物の首に食い込み、そのまま奥深くまで牙が食い込んだ。そうして、イヌ型魔物は絶命した。

【経験値+5】


(よし、上手く連携が取れたな!)


俺はイヌ型魔物から魔力吸収をしようと、地面に降りた。すると……

ブルブルブルブル……


ミニアが急に苦しそうに震え出したのだ。

(ミニア!?)


俺がすぐに駆け寄ると、ミニアの小さな身体が淡く光り始めた。

(……もしかして、進化!?ついに、来たのか!?)


優しい光がミニアの身体を包み込み、その輪郭がゆっくりと大きくなる。

小さかった胸部が少し膨らみ、脚が太くなり、顎部分の金属光沢が増していく。

(すげぇ……!)


光が収まると、そこには二回りも大きくなったミニアがしっかり立っていた。

先ほどまでの弱々しい、小さい蟻ではない。

「ブブブブブブ、ブブブ!」

(やったな、ミニア!)


俺は歓喜のあまり、思わず大きな声を出してしまった。

すると、ミニアは誇らしげに顎を鳴らし――――

「キィッ!!」

と叫んだ。


(……えっ、今、ミニアが話したのか!?)


「ブブブ、ブブブブブブブブブブ?」

(ミニア、喋れるようになったのか?)」

「キィィッ!!」


正直、何を言っているのかは理解できない。

けれど、頷くことしかできなかったミニアが声を出して、意思疎通できるようになったのだ。能力がどう向上したのかはまだ分からないが、それでもこれは大きな進化と言えよう。


「ブブブブブブブブブブ!」

(ミニアの声が聞けて嬉しいよ!)

「キィッ、キィィッ!!」


ミニアもすごく嬉しいようだ。表情なんてないはずだが、それでも俺にはミニアが泣いて喜びを爆発させているように感じる。俺も、一滴たりとも複眼から落ちないが、ずっと涙が止まらない、そんな状態だ……。


***


進化直後のミニアは、さっそく能力差を見せつけてくれた。

敵は小型のイタチ型魔物。進化前なら、ミニア1人では到底勝てない相手だ。

しかし——

「キィアッ!」


ミニアが高速で懐まで飛び込み、顎でイタチ型魔物の首元を捕える。

(速ぇ……!)


そのまま、首を根元から食いちぎり、イタチ型魔物を瞬時に撃破した。


「ブブブブブブ!!」

(ミニアすごいぞ!!)

「キィッ!」

ミニアは嬉しそうに顎を鳴らし、俺の傍にピタッとくっついた。


その後も、二人で魔物を狩り続けた。


トゲが生えたネズミ型魔物、牙をもつカエル型魔物、強力な蹴りを繰り出すダチョウ型魔物……


多種多様な魔物が襲いかかってきたが、俺とミニアの連携は驚くほど速く洗練されていった。

(……こりゃ、最高のパートナーだな)


俺が空を、ミニアが地上を。

俺が魔力弾で牽制し、ミニアが弱点を狙う。

二人組の戦いとは思えないほど、効率的な狩りだった。


「ブブブ、ブブブブブブブブブブ!!」

(ミニア……俺たちはもっと強くなるぞ!!)

「キィッ!!」


ミニアは誇らしげに胸を張るようにして言った。


***


周辺の魔物を狩り尽くし、俺たちはあてのない道をただ歩いていた。

(そろそろ、拠点を見つけないと……)


俺は狩りをしながら、良さそうな洞窟などを探していたが、なかなか見つからなかった。

(まぁ、今日はミニアが進化して、効率よく経験値を稼げるようになったんだ。上々だろう。)


この調子なら、俺も近いうち、もう一段階いけるだろう。


次の進化の前兆というのだろうか……

実は、夕暮れから魔力器官の脈動が、体の内側で強まっているのを感じる。

(次は……何になるんだろうな……。人型だったら最高だけど……)


荒野を照らす夕焼けが、新たな進化を予言するかのように赤く輝いていた。

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