第5話 魔蠅としての初狩り
優しい朝日が俺の新しい外骨格を輝かせる。
飛行テストは済ませたので、次は新たなに生成された「魔力器官」に意識を向ける。
喉の奥に「第二の臓器」のような感覚があり、そこに黒い魔力が渦巻いているのがはっきりと分かる。
(よし、慎重に魔力を少しだけ……放出!)
口器を地面へ向ける。意識を集中させると、漆黒の魔力が弾丸のように飛び出した。
ピシュッ!
(うお……高速弾!)
乾いた地面に黒い焦げ跡が残った。毒属性と腐敗属性が合わさっているのかはまだ分からないが、攻撃力があることは間違いない。
(これなら、小型の魔物くらいなら倒せるか?)
自信と同時に、試したい衝動が沸き上がった。
俺は、複眼を広範囲に動かしながら、小型魔物の影を探した。
***
ほどなくして、複眼の左下に動く影を捉えた。
(……いた)
岩の影をうろついている、茶色いネズミのような魔物。進化前なら確実に捕食されていた相手だろう。
(よし、こいつで試すか)
俺は風に乗り、背後に回り込む。ネズミ型魔物は鼻をひくつかせているが、
俺の気配にはまだ気づいていない。
(…………くらえ!)
黒い魔力を口器へ凝縮する。ピシュッ!
「ギィッ!?」
命中。ネズミ型魔物の動きが一瞬止まり、ふらつく。
(よし、効いてる!)
続けざまに接近し、今度は黒い液体を散布する。
「ガッ……ギギ……!」
ネズミ型魔物は痙攣し、そのまま倒れ込んだ。皮膚がみるみると壊死していき、強烈な匂いを発している。魔力弾には、毒属性だけでなく、腐敗属性も魔力に込められているようだ。
(……よし!)
【経験値+10】
ぺたっ。
【魔力吸収:成功】
【経験値+3】
(よしよし……これは楽勝だな)
進化前の俺では絶対勝てなかっただろう相手を、いとも簡単に倒せた。
(俺、やれるじゃん……!)
俺は小さくガッツポーズ(?)を決めた。
【現在の経験値:13】
【進化条件:経験値200の取得】
(やっぱり、次の進化条件は前よりも厳しいか……。けど、前よりも経験値は稼ぎやすい!)
俺はその後も、自然動物に似たような小型の魔物を何匹も仕留めていった。
ウサギ、トカゲ、バッタ、カエル、ヘビ、カマキリ…………などなど
どれも動きが速いが、魔蠅の速度と魔力弾なら十分対応できた。
(……この身体、マジで強い)
羽音ひとつで距離を詰められ、魔力袋から抽出した黒い魔力の弾を撃てる。
以前とは比べ物にならない力がある。
(これなら……俺、こっからもっと強くなれる、生き残れる……!)
初めて、確かな実感が湧いた。
朝焼けが夕焼けへと変わり始める。俺は魔蠅の身体でゆっくりと高度を上げ、
荒野の全景を複眼に映した。
(……まだまだ、しんどい世界だ)
だが、前の世界と違い、逃げるだけじゃない。戦える。選べる。生きられる。
(よし……次はもっと強い相手でもやってやる)
魔蠅の羽が、夜風を切って唸る。
ブゥゥン……!
俺はそのまま薄暗くなる荒野へと飛び立った。
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