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第16話 シルヴァウルフの来訪

リザードロードやその配下たち(主に爬虫類系)を従えた翌日だった。

荒野の空気はひどく落ち着きがなく、まるで風そのものがざわついているようだった。

ミニアが巣の外で膝をつき、地面の匂い層を読む。

「クロ様……。今日は、昨日よりも匂いが強く、騒がしいです……。まるで、何者かが私たちに迫ってくるような……」

「……また、王位種か?」

「はい……少なくとも、弱い魔物の気配ではありません。この震えるような匂い……巨大な群れのリーダーのようです……!」

ミニアの複合魔瞳が鋭く細められた。その瞬間――――

ズォォォオオオオッ!!

巣外の砂地を巨大な風圧が薙ぎ払い、低く響く、腹の底に響くような咆哮が荒野に轟いた。

「こいつは……!」

ミニアが息を呑む間もなく、岩山の影から、銀色の狼が姿を現した。

これまで出会ったオオカミ型の魔物とは比べものにならない

――まさに「狼」と呼ぶに相応しい佇まいとオーラ


全身の毛皮がまるで鋼糸のように逆立ち、四肢の筋肉は大地を抉るほど発達している。

背丈はオオカミ型の二倍。猛者の風格と黄金の瞳が見る者を圧倒する。

「クロ様!あれは……ハイウルフ族を束ねる森狼王シルヴァウルフです!!」

(……ほんと、次から次へと王位種がやってくる……)


銀狼シルヴァウルフはゆっくりと近づき、巣の前で立ち止まる。その背後に、群れの狼たちが数百匹、整列するように並んだ。その姿は、まるで強大な軍団のようだった。

「…………貴殿が噂に聞く、荒野の南部を統一した者か……」


シルヴァウルフの声は低く、重く、大地そのものが喉を鳴らしているかのようだった。

俺は静かに答える。

「まぁそうだ。俺に何か用か?」


銀狼の目が細められる。

「……人型……虫……蠅……我が知るどの魔物にも該当しないな。だが、そんなことはどうでもよい。」

大きな足で一歩、前に出る。

「我らは、魔物の王たる貴殿に従うのみ。」

「…………は?」


呆然とする俺を見て、ミニアが慌てて横に寄ってきた。

「クロ様、ハイウルフ族は強者がもつ魔力の質、いわゆる『匂い』で上下関係を判断します!クロ様の『王の匂い』は、ハイウルフ族までも従えてしまうほどなんですよ……!」

「えっ、俺の匂い……?」

ミニアは真面目な顔でうなずく。

「はい!クロ様は……とても……強くて、素敵な匂いがします!」

(素敵な匂いって……なに?)


そして──

シルヴァウルフは、クロの目の前でゆっくりと伏せた。巨大な狼が腹を晒し、喉を見せる行為。それは絶対服従を意味する仕草だ。すぐに配下のハイウルフも、一斉に服従ポーズをとる。

「……我が群れは、貴殿に従う。黒き魔物の王よ。我らを導いてくれ。」

「え、いや……戦わないのか?」


シルヴァウルフは鼻で笑った。

「この圧倒的な強者の匂いを放つ貴殿に戦いを挑むはずがなかろう。どこぞのアホブタやバカトカゲと我を一緒にしていないでいただきたい。」

「………そ、そうか。なら……俺についてこい、シルヴァウルフ。」

「はっ、どこまででも、我が主。」

銀狼は深く、恭しく頭を垂れた。そして、恍惚とした表情のミニアが俺の耳元でささやく。

「プライドが高く、上下関係も厳しいあのハイウルフ族が匂いだけで服従したのです……!それだけ、クロ様が主に、いや王に相応しいということです!」

(……なんか褒められてるのは嬉しいけど、王様って器じゃないし……)


すると、

「「「「「ウォォォォォン……!!」」」」」

一斉に群れの狼たちの低い遠吠えが響いた。

(……えぇ、俺なんかがこんな大勢の魔物を従えていいのか……?)


ミニアが胸に手を当て、嬉しそうに微笑んだ。

「これで、獣骸荒野の北部がすべてクロ様のものです!すごいスピードで『統一』が進んでますね!」「お、おう…………」

荒野の風は、ひっそりと「黒き王」の誕生を告げていた。

こうして、荒野北部の支配者シルヴァウルフ及びその配下は、クロの忠実な臣下に加わったのだった。

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