第12話 魔人の力
洞窟の奥にいた大きなクモ型魔物を倒し、俺とミニアは魔人へと進化した。
魔人化したことで、大気中にある魔力の存在や流れを感じ取れるようにもなった。
依然として洞窟の空気は重く、湿った魔力の霧がゆらゆらと揺れていた。
魔人化した俺とミニアの存在は、その霧を押し返すようにして洞窟全体へ満ちていく。
だが――――
「クロ様……さらに奥に……とても強い魔力反応があります……」
ミニアが紅い複合魔瞳で暗闇を見据える。
(……あのクモ型魔物がボスじゃないのか……)
「ミニア、行けるか?」
「はい……クロ様となら……!」
背中の緋色の翅が、微かに震えていた。しかし、その震えは恐怖ではなく高揚のようだ
(……ミニア、お前、本当に強くなったんだな)
俺は魔影翅飛行の魔力噴射でゆらりと浮き、歩くように滑らかに前へ進む。
もはや、羽ばたく必要はない。魔人化した今、移動は「影の滑空」と化していた。
洞窟の最奥へ――――
今、俺たちは足を踏み入れた。
***
ぽっかりと空いた空間の中央に、岩の塊のような巨大な魔物がいた。
地面が震え、天井の石片が落ちる。
「グオォォ……」
その姿を見た瞬間――
ミニアが叫んだ。
「クロ様……!あれは、アース・トロールです……!!」
(やっぱり、魔物にも名前あるんだな。また、あとでミニアに色々と教えてもらおう)
「……すまん、ミニア。俺はあまり魔物に詳しくなくて。コイツは、どういう魔物なんだ?」
「えっ、そうなのですか!?アース・トロールは、洞窟にある魔物の巣を乗っ取り、その中や周囲の魔物を全て食い尽くす『巣喰らいの魔巨獣』とも呼ばれている危険な魔物です……!」
(おぉ、それはかなりヤバいやつだな…………進化前ならだけど)
巨魔が俺たちに視線を向け、地鳴りのような唸りをあげる。
「グオオオオオ!!」
岩盤が砕けるほどの腕が振り下ろされた。
だが――
(見える……!)
複合魔眼が、巨魔の動きを“赤い予兆線”として示す。巨魔の一撃を紙一重でかわし、俺は影の魔力を集めた。
「はああッ……!!影穿!」
俺の足元から黒い影が伸び、槍のように鋭利な闇の刃を形成。それが巨魔の脚を下から貫いた。
「グ、オッ!?」
影の槍は脚を貫通した後も地面に固定され、巨魔の重い身体を一瞬で拘束する。
(これ……すごいな……!陰影魔術、めっちゃ便利!!)
拘束の隙を――ミニアは逃さなかった。
「クロ様、私もいきます……!!」
ミニアの顎の周辺に紅い魔力が収束し――
「紅刃連舞!!」
高速の赤い魔刃が、目では追えない速度で巨魔の腕へ叩き込まれた。
「グオオオオッ!?」
切断面から黒い血が噴き出す。また、魔刃は非常に高い熱を帯びているようで、切断面から巨魔の肉がすぐに溶け始めた。
(ミニアも魔人になって、一気に強くなったな……)
紅い魔刃はまさに蟻の顎の進化形。ミニアは蟻としての硬物破砕の本能を魔術化しているようだ。
「クロ様、今です!!」
「おう!!」
俺は全身をめぐる魔力の一部を右手に集め、漆黒の球体として凝縮した。
(トドメは、腐蝕魔術だ……!)
黒い球体の内部で腐蝕の魔力が螺旋のような渦を巻く。
「喰らえッ!!黒蝕腐弾!!」
黒い爆裂弾が巨魔の胸へ叩き込まれる。
腐蝕魔力が体内へ侵入し、一瞬で心臓周辺から全身までを腐らせた。
「グ、オ……」
巨体が崩れるように静かに倒れた。
【経験値+50】
【進化条件:経験値30,000,000の取得】
(魔人になってもまだ進化できるんだな……。けど、かなり厳しいか……。)
【魔力吸収:可能】
俺は魔力を吸収しようと巨魔の死体に近づいた。すると、勝手に魔力が右手に流れ込んできた。
(おぉ、手をかざすだけで魔力吸収ができるようになったのか……!)
俺が魔人化による魔力吸収の効率化に感動していると、ミニアも静かに手をかざした。
「あれ?ミニアも、手をかざすだけで吸収できるのか?」
「はい、クロ様と同じです!」
ミニアが嬉しそうに微笑む。その可憐な表情に思わず、ドキッとなってしまった。
「……そ、そういえば、ミニアはどんな能力や魔術が使えるようになったんだ?」
「はい、クロ様。私の力のすべてをお伝えします……!」
ミニアは胸に手を当て、丁寧に説明を始めた。
もちろんその後、俺もミニアに獲得した能力について話した。
<紅蟻魔人ミニアの能力について>
【紅蓮魔術:炎熱属性魔術の使用が可能】
【顎刃魔術:纏っている魔力を魔刃に変換が可能(顎から魔刃を射出できる)】
※先程の紅刃連舞は、紅蓮魔術と顎刃魔術の組み合わせのようだ
【共鳴嗅覚:魔力の流れや敵意から索敵が可能】
【魔紋翅飛行:魔力噴出で飛行が可能】
【蟻妃指揮:魔力で自分またはクロの配下を統率できる力(ただし、自分より強い魔物には無効)】
【巣域構築:地形改造・経路構築・罠設置・居住区作りなどの巣づくりに特化した能力】
***
巨魔が消えた最奥は、とてつもなく住みやすい魔力濃度を帯びていた。
「よしミニア、この場所を二人の拠点、巣にしよう!」
「はいっ!!クロ様!!」
ミニアは俺の言葉を聞くや否や、即座に洞窟の壁を叩き、通路の強度を確かめた。
そして、広い洞窟の中を素早く何度も往復し、ブツブツと一人言を言っている。
「この岩石を基盤に……ここを迎撃拠点にして……ここには罠を設置して……ここは寝室で……………、クロ様、このような設計でいかがでしょうか!?」
(いや、めちゃくちゃ頼もしいな……!)
キラキラと目を輝かせながら巣作りを行うミニアに、俺は笑顔で頷いた。そして……
「じゃあ、早速2人の拠点を作ろうか!」
「はい、クロ様!!一緒に最高の巣、いや城を作りましょう!」
黒い魔影翅と紅い魔紋翅が、暗い洞窟に重なって輝いた。
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