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第11話 魔人化

――深い闇の中。

意識だけが漂い続ける。しかし、前の進化のときとは違う。

身体が、蠅の構造そのものが、音を立てて組み変わっていった。

(……これは……完全に「造り変えてる」……!)


外骨格が砕け、溶け、新たな肉体が形作られる。六本脚が二本に統合される感覚。

複眼が収束し、しかし演算能力はそのまま残る複合魔眼へ。

そのとき、脳内に声が響いた。

【進化完了】

【新種族:漆蠅魔人ノワール・フライロード

(……漆蠅魔人……!)


それは「魔人」でありながら、「蠅の本質」を一切失わない、特殊な進化だった……。

次の瞬間――――――

ドンッ!!

繭が赤黒い衝撃と共に弾け飛ぶ。


***


冷たい空気が「頬」を撫でた。頬……つまり、「皮膚」だ。

俺はゆっくりと立ち上がり、水面に反映する容姿を凝視した。

(……魔人……本当に……人型だ……!)

だが、人間ではない。黒髪は根元が紫、毛先が漆黒。翅脈のような光沢が揺れる。瞳は人型の虹彩なのに、細密な微分割が走る複合魔眼。背中には、闇の膜のような魔影翅があり、黒い魔力で縁取られている。腕の肘や膝の関節には黒い節の名残が浮かぶ。


完全な人ではなく、完全な蠅でもない――

漆黒の蠅の魔人。そして、脳内に新たな能力の情報が映し出される。

【猛毒魔術:毒性属性魔術の使用が可能】

【腐蝕魔術:腐敗属性魔術・腐食属性魔術の使用が可能】

【陰影魔術:影属性魔術の使用が可能】

【複演視界:全方位把握と高速演算が可能】

【魔影翅飛行:羽ばたく必要はなく、魔力噴出で飛行が可能】

【蠅王威圧:魔力で相手を威圧できる能力】

(すげぇ……これが……進化して手に入れた力……!)


そして俺は、初めて「声」を出してみた。

「…………あ……あ…………こ……え…が、声が…出せる……!」

自分の声が、空気を震わせた。思わず、涙が出そうになる。


その時、深紅の光が咲いた。俺が繭を破ったすぐ隣で――

もう一つの変化が頂点に達していた。

ミニアは繭ではなく、まるで花のように深紅の光を咲かせて進化していた。

パァァァッ……!!

美しい紅の光が爆ぜる。

その中心から現れたのは――

もうかつての小さな蟻ではなかった……。


***


細い腰、しなやかな四肢。しかし、腕と脚の節にはわずかに蟻の面影が残る。

艶やかな深紅の髪は滑らかに背中まで流れ、ところどころに節のような紋様がきらめく。

瞳は金と赤の複合模様で、蟻の複眼の形質を残した複合魔瞳。背中には淡い緋色の魔紋翅が光る。

(……すげぇ……マジで綺麗だ……)


「ミニア……」


俺がミニアの容姿に見惚れていると、ミニアは驚きの「表情」で自分の手を見つめた。

そして……俺の方に気づいた。バッチリと目が合う。

ミニアの身体がビクッと震え、ゆっくりと俺へ歩み寄り、跪いた。


「あ……あ……ある……じ……さ……ま……?ほ、本当に……主……様……?」

震える声。だが、溢れんばかりの歓喜がにじむ震え。


「……よ、ようやく……お、お話ができます、主様……!……そのお姿、主様も……無事に進化なされたのですね……!」

(ん、主様……?)


そういえば、俺はミニアに一度も名乗ったことがなかった。俺はゆっくりと言葉を返した。

「……そうだ、ミニア。俺は――クロ。クロが俺の名前だ。」


ミニアの瞳が大きく開かれる。

そして、胸に手を当て、深く頭を下げた。


「……クロ様……その御名、心に刻みました……!」

(……いや、様って……)


ミニアの声は震えているのに、その言葉のひとつひとつに「絶対の忠誠」が宿っていた。


「クロ様のおかげで……私は小魔蟻から……紅蟻魔人ルージュ・アントロードへと進化を遂げることが……できました……。クロ様の配下として……一番の臣下として……必ず……必ずお支えいたします……!」


ミニアは涙をこぼしながら言った。俺は、思わずその頭に手を置いた。

(別に配下が欲しいわけではないんだけど……まぁ、ミニアがそれを望んでいるようだし……)


「頼りにしてるよ。ミニア。」

触れた瞬間、ミニアを包み込む魔力が震えた。


「……はいっ……!クロ様……っ!この命に代えても……!」


胸が熱くなる。ただの蠅であった俺に、こんなにも真っ直ぐな忠誠をくれるなんて。

(主人という柄ではないが、その忠誠を裏切らないようにしないとな……)


ミニアの背の赤い翅が輝き、俺の黒い翅が闇を揺らす。そのとき――

洞窟の奥から強大な気配が迫ってきた。


ミニアがスッと俺の横へ立つ。

「クロ様……ご命令を。」


俺は静かに微笑んだ。

「命令なんてしないよ。ともに行こう、ミニア。これが……魔人になった俺たちの最初の戦いだ。」

「……はい……クロ様……!」


黒い翅と紅い翅が同時に広がった……。

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