第10話 洞窟の攻略
荒野を横切る風の中に、「何かの気配」が漂っていた。
俺と一段階進化を果たしたミニアは、その気配の根源を探していた。
(ここだ……この穴)
険しい山をくり抜いたのような、巨大な洞窟。悪臭を伴う気味悪い空気が漂い、奥からは獣の呻き声が響いてくる。
「キィ……」
ミニアが不安そうに、俺の脚の横へ寄る。
(怖いよな。でも、ここにいる魔物をすべて倒せば、俺たちの拠点にできる!)
俺とミニアの拠点、いや「巣」というべきか。二人の巣を持てば、安全も確保できる。
それに、魔物の気配がプンプンする。この洞窟を攻略すれば、進化できるかもしれない……!
だから――行くしかない。
「ブブ、ブブブ、ブブブ!」
(よし、行くぞ、ミニア!)
「キッ!」
ミニアが力強く顎を鳴らした。
***
当然だが、奥に行くにつれ、どんどん暗くなる。
しかし、魔蠅の複眼は闇でも視界を失わない。ミニアも、ある程度は見えてるようだ。
洞窟は迷路のように枝分かれしている。
(……何か、痛いぐらい魔力が濃いな。)
壁には粘液。天井からは蜘蛛の糸のような粘着質の滴。足音が響く前に、最初の敵が現れた。
ぬるりと、スライムが滑り落ちてくる。
(くらぇ!)
ピシュッ!
俺は渾身の魔力弾を撃つ。
ガチン!
俺の毒&腐敗液でスライムが怯んだ隙に、ミニアがすかさず頭部へ噛みついた。
そして、スライムは霧のように消失した。
【経験値+4】
(よし、いい感じだ)
洞窟の奥へ行くほど、魔物は増えていった。
鋭い牙を剥くトカゲ型魔物、短剣を持ったコボルト、跳ね回るウサギ型魔物、鎧を纏ったゴブリン……
「ブブブブブブブ!」
(連携していくぞ!)
「キィ!」
俺が浮遊して、四方八方から魔力弾で攻撃。ミニアがトドメの一撃を食らわせる。
毒や腐敗で弱らせ、確実に仕留める。やがて足元は、魔物の死体で埋まった。
けれど、死体の魔力を吸収しながら、死肉を貪りながら、俺たちは進撃を続けた。
***
洞窟の奥の奥までに進むと、空気が一変した。
(……ヤバいのがいるな)
強烈な魔力。重たい殺気。
天井から、巨大な影が落ちてくる。
「ギィィィィッ!!」
ずっしりとした歩脚。太い毒牙。
背中に青紫に輝く宝石 ――「魔石」だろうか―― を宿した巨大なクモ型の魔物。
これまで出会った魔物の中で、一番大きい魔物である。
(……この「魔石」、よく分からないけど、「自然物」じゃないような気がするな…………)
ミニアが震える。しかし一歩前に出て、その顎を構えた。
(おっ、ミニア……やる気か?)
「キィッ!!」
俺の胸(虫だから胸っぽい部分だが)に熱いものが走った。
(もちろん、俺もやるぞ……!)
クモ型魔物が素早く糸を吐き出した。
シュバッ!
(危なっ!)
俺は空中で旋回して回避。ミニアは地面を這って避ける。
「ブブブ、ブブブブブブブ!」
(ミニア、左から回れ!)
「キィ!」
ちゃんとした言語を介しているわけではないが、ミニアとは十分意思疎通が取れている。
グモの脚が振り下ろされ――
ドガァッ!
地面が砕ける。
(こいつ、パワーも速さもある……!)
だが弱点も分かる。
(背中の青紫色の魔石……おそらく、それが核だな)
そこを壊せば、きっと倒せるはずだ。
「ギィアアア!!」
クモ型魔物が天井に逃げ、そのまま落下攻撃を仕掛けてきた。
「ブブブ、ブブブ!!」
(ミニア、今だ!)
俺は高速の魔力弾を何発も脚に撃ち、グモの落下姿勢を崩す。
ミニアはその隙に駆け上がり、背中の魔石へ渾身の一撃を噛みついた。
ガチンッッ!!
「ギィアアアアアア!!」
クモ型魔物が痙攣し、地面へ崩れ落ちる。
(トドメだ~!)
俺は魔力袋を全開にして、黒い魔力を球形弾として魔石に撃ち込んだ。
――ドンッ!
こうして、クモ型魔物はピクリとも動かなくなり、そのまま息絶えた。
【経験値+40】
「ブブブ、ブブブ!」
(ミニア、ナイス!)
「キィ!」
ミニアは誇らしげに顎を鳴らした。
***
クモ型魔物の背中の魔石は砕けていたが、それでも青く脈動していた。
(これ……相当の魔力量だ……)
魔石独特の雰囲気が、俺たちを二人の身体を引き寄せる。
「……ブブブ、ブブブ?」
(……食うか、ミニア?)
「キィ……」
ミニアは怖がりながらも、俺の横へ並んだ。
「ブブ……、ブブブブブブ。」
(よし……、一緒に食らおうか。)
「キィッ!」
俺は魔石にぺたっと口器を当て、ミニアは魔石を小さく噛み砕いた。
【魔力吸収:成功】
【経験値+10】
【魔石吸収:成功】
【魔石吸収により、「特殊」進化条件を達成しました。これから進化準備に移行します。】
(特殊?うっ……!?)
全身の魔力袋が膨張し、筋繊維が震え、複眼が光り始める。
【特殊進化開始。一定時間、行動不能になります。】
俺たち二人は同時に、その場に倒れ込んだ。
黒い薄膜が俺の身体を包み込み、やがて固まり、繭が形成される。
しかし、その繭は赤黒く輝き、禍々しい雰囲気を醸し出している。以前の繭とは、似ても似つかない形状や佇まいだ。
ミニアの方をチラッと見ると、深紅に輝く美しい光に包み込まれていた。
前回は淡い乳白色の光だったため、ミニアも特殊(?)進化するのだろうか。
「ブブブ……ブブブ……ブブブブブブブ」
(ミニア……一緒に……進化するんだな)
「キィ……ィ……」
僅かに聞こえたミニアの声。それが最後だった。俺の意識は闇に沈んだ。
そして、俺とミニアの身体は、次の姿へと作り変えられていった……。
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