第8話
【ユウト視点】
リビングでトリスの着替えを待ちながら、町で紹介される場面を想像してみた。
まず、このスーツ姿が場違いなんだろうな…。この世界の一般的な服を買いたいけどお金がないんだよね…。
このスーツを下取りにだして古着を購入できるだろうか?
結婚初日から全てトリスにお金をだしてもらうのは情けないもんなぁ。
あとは、トリスが僕と結婚したとみんなに紹介するとして、子供と結婚した僕は犯罪者扱いされないのか?
トリスも気にしてないみたいだし、この世界では問題ないのかもしれないけど…。
不安を抱えつつ待っていると、寝室からトリスが恥ずかしそうに出てきた。
「どうじゃ?久しぶりに着てみたが似合っておるだろうか?」
白いワンピ-スに腰と首の青いリボンが差し色となって、とても可愛らしい。
革鎧とハンマーより、こういう服でお洒落しているほうがトリスの魅力が際立つ。
「うん。すごく似合っているし、かわいいよ。」
照れて顔を赤くしているのも可愛らしい。
「そ、それなら問題ないのじゃ。では、いくのじゃ。」
外に出ると、トリスが右手を僕のほうに差し出して顔を背けた。
えっと、これはどういうことかな?
「恋人繋ぎをするのじゃ。」
トリスは恥ずかしそうにしているけど、僕も顔が熱くなった。
恋人繋ぎとかしたことないし…。
でも全然嫌じゃないので、恐る恐る指を絡めてみた。
「これでいいかな?」
「ずっと、こうしてみたかったのじゃ。」
ニカっと笑顔を僕に向けて、そんなことを言ってくる。
ヤバイって、可愛すぎるだろう…。
トリスはご機嫌な様子で、繋いだ手をブンブン振りながら町に向かって歩いて行くのだけど、僕のほうが顔の熱が引いてくれない。
町に着くと、トリスは有名人のようで次々と話しかけられる。
食堂のおばちゃん、露天商のおじさん、広場で遊んでいた子供達まで、気さくに声を掛けてきて、当然手を繋いでいる僕のことを尋ねてくる。
その度に、トリスは満面の笑みで「我の旦那様なのじゃ。」と紹介する。
それはいいんだけど、大人の方々は僕に鋭い視線を向けてくる…。
やっぱり倫理的に問題あるのでは…。
そもそも、完全に余所者だし、この服装も怪しくないか?
武器屋の強面なお爺さんからは、「嬢ちゃんを泣かせたら、俺が黙ってねぇからな!」と怒鳴られたけど、おかげで結婚自体は問題ないことがわかって逆に安心したよ。
途中にあった洋品店では、スーツを買い取ってもらえるか訊いてみると、目が飛び出るのではないかってくらい生地を凝視されて怖かった…。
最近買った既製品のスーツだけど、この世界では凄い縫製技術に見えるんだろうなぁ。
結局金貨5枚で買い取ってもらえたけど、貨幣価値がわからないからなぁ…。
トリスは何度も本当に売っていいのか確認してきたけど問題はない。
むしろ悪目立ちするから手放したいくらいだし。
店を出て歩きながら金貨5枚の価値を訊いたら、トリスの2ヶ月分くらいの稼ぎだと聞いて驚いたけどね。
それからトリスが所属している冒険者ギルドにも挨拶に行った。
トリスはギルドに入ると自慢げに宣言した。
「我の旦那様となったユウトじゃ。みな、よろしく頼むのじゃ!」
その紹介の仕方は恥ずかしいな。
みんなの視線が僕に集中しているし…。
「まさか、トリスに先を越されるなんて…。」
受付嬢の子が悔しそうに声を漏らした。
兎耳の獣人なのかな?この世界って獣人もいるのか…。
「幼児体型のクセにどうやって落としたのよ!」
「リップルよ、そういうのは見苦しいのじゃ。」
だいぶ優越感に浸っているな…。
「もうベッドを共にしたの?」
えっ、そんなこと訊いちゃうの?
「昨日は一緒に寝たのじゃ…。」
トリスは一瞬言葉を詰まらせたけど、顔を赤らめながら正直に言ってしまった…。
そこは、ぼかしておこうよ…。
なんか『トリスが女になったぞー!』とか、ギルド内が盛り上がっているし。
「ふん、どうせ顔だけで甲斐性もない男なんじゃないの?」
この受付嬢、口が悪いな…。それが結婚できない理由では…。
「ユウトは凄いのじゃ!鑑定のスキル持ちなのじゃ。」
トリスは胸を反らして、これでもかってくらい自信満々だけど、食材限定って知ったら馬鹿にされたりしないだろうか…。
一瞬ギルド内が静寂に包まれたあと、「えー!!!」という叫びがギルド内に飛び交った。
軽い気持ちで始めて8話まで書いてきましたが、2人がイチャイチャする展開が延々と続く未来を想像し、面白くならないのでは…と不安になってしまいました。読者の皆様には本当に申し訳ないのですが、8話で連載は中止させていただきます。




