第3話
【トリス視点】
「ついてくるのじゃ。」
返事をしなかったことで気まずい空気になったのを振り払いたくて、少し大きな声になってしまった…。
「うん、ついて行くよ。」
ユウトは遠慮がちに言うと我の後ろ3mくらいを歩いている。もう少し近くてもいいのじゃ。いっそ隣でもいいのじゃ…。
それからはお互い無言のままで我が家に到着してしまった。
「ここが我の家なのじゃ。遠慮せず入るといいのじゃ。」
ついに男を家に招き入れてしまった。決してハレンチは目的ではないのじゃ…。
「お邪魔します。あの、お世話になるので、ご両親に挨拶をしておきたいのだけど。」
やはり、子供だと思われてそうなのじゃ…。
「父様や母様とは、もう顔を合わせることができないのじゃ…。」
我とて家族を恋しく思うが、今さら帰れないのじゃ。
「ごめん、無神経なこと言っちゃって…。」
「気にするほどのことではないのじゃ。それより座って楽にするのじゃ。」
リビングの椅子を勧め、我も革鎧を脱ぎ捨てて椅子に腰掛けた。
「えっと、トリスは働いているの?」
なんか可哀想な者を見るような目で見られておる…。
「働かねば生きていけないのじゃ。今日もワイルドボアを討伐して報酬を得たのじゃ。」
少し自慢したように聞こえてしまったかもしれない。記憶がなくてユウトも不安であろう。もっと優しくせねば。
「そっか。じゃあ僕も働くよ。トリスに養ってもらうだけじゃ申し訳ないし。」
共働きの共同生活宣言!?ドキドキしてきた。いかん、冷静になるのじゃ…。
「働くといっても何ができるのじゃ?どれ、ステータスを見せてみるのじゃ。」
ユウトは少し困った顔をしているのじゃ。
「えっと、どうやって見せればいいか記憶がなくて…。」
そんな初歩的なことも忘れてしまっておるとは…。これは我が手取り足取り教えてやらねば。
「ステータス・オープンと唱えるのじゃ。」
「ありがとう、やってみるよ。ステータス・オープン!」
ユウトの前にステータスが表示される。どれ、職業が記憶を取り戻すための何かのヒントになるかもしれぬ。
「ふむ、無職じゃな…。ステータスはINTが高めと。スキルは…!【空間収納(小)】【鑑定(食材)】じゃと!!」
小とはいえ空間収納は神スキルなのじゃ。食材限定でも鑑定は食いっぱぐれのない人生を約束されたスキルなのじゃ…。
【ユウト視点】
「ついてくるのじゃ。」
怒っているのか、声が大きい…。それでも案内してくれるみたいだし今は従うしかないよな。
「うん、ついて行くよ。」
とりあえず返事はしたけど、あんまり気安く声をかけないほうがいいのかな。
少し距離をとってついて行きながら、トリスの後ろ姿を観察してみる。
革鎧に鉄のハンマー。子供が持ち歩く物じゃないよなぁ。まぁ異世界だし、今までの常識は捨てないとか。
お互い無言のまま、トリスの住む家に到着してしまった。
「ここが我の家なのじゃ。遠慮せず入るといいのじゃ。」
トリスの声は緊張しているようだった。知らない男を家に入れるのだから、それも仕方ないと思う。
「お邪魔します。あの、お世話になるので、ご両親に挨拶をしておきたいのだけど。」
僕の言葉にトリスは悲しそうな顔をした。
「父様や母様とは、もう顔を合わせることができないのじゃ…。」
あ、聞いちゃいけないやつだった…。
「ごめん、無神経なこと言っちゃって…。」
慌てて謝罪したけど、今のは気まずいな。もう他界されていたとは…。
「気にするほどのことではないのじゃ。それより座って楽にするのじゃ。」
そんな無神経な僕に、トリスは優しく声をかけてくれた。ほんと、いい子だな。
「えっと、トリスは働いているの?」
親がいないということは、子供なのに戦ったりして生活費を稼いでいるのかな…。
「働かねば生きていけないのじゃ。今日もワイルドボアを討伐して報酬を得たのじゃ。」
少し誇らしそうに言ってはいるけど、子供が命を危険に晒して報酬を得ている事実に胸が苦しくなる。
「そっか。じゃあ僕も働くよ。トリスに養ってもらうだけじゃ申し訳ないし。」
今度はノンビリ生きたいという気持ちは変わらないけど、僕もお金を稼いでトリスを助けてあげたい。
「働くといっても何ができるのじゃ?どれ、ステータスを見せてみるのじゃ。」
いきなりゲーム用語みたいな言葉が飛び出して動揺してしまった。見られるなら僕だって自分のステータスを確認しておきたい。
「えっと、どうやって見せればいいか記憶がなくて…。」
わからないことは聞くしかない。なんだかんだ、トリスは優しいから教えてくれるはず。
「ステータス・オープンと唱えるのじゃ。」
それだけでいいんだ…。なんか昔読んだ漫画そのままだな。
「ありがとう、やってみるよ。ステータス・オープン!」
目の前に透明な液晶画面みたいなものが現れ、ステータスが表示される。これって定番だとチートスキルみたいなのがあったりする場面だけど、世の中そんなに甘くないよね。
「ふむ、無職じゃな…。ステータスはINTが高めと。スキルは…!【空間収納(小)】【鑑定(食材)】じゃと!!」
トリスの驚愕の叫びに、驚いて背筋が伸びたよ…。なんか異世界転生では定番の空間収納と鑑定があるみたいだけど、小とか食材だけとか微妙そうだなぁ。




