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第1話

【トリス視点】


我はピチピチのドワーフ女子、19歳じゃ。


色恋沙汰の適齢期を少し過ぎたとはいえ、まだまだ結婚の申し込みが絶えなくてもおかしくないのじゃ。


まぁ、自分で言うのもなんじゃが、我はドワーフ女子としては見目がよいほうなのじゃ。


身長はドワーフ男子が好むと言われる140cm、肌はツルツルで、髪もミルクティー色でサラサラだし、目鼻立ちも整っていると評判じゃった。


そんな我がしがない冒険者として、一人寂しく家路についているのには訳があるのじゃ。


我がドワーフの結婚適齢期である16歳の誕生日を迎えたとき、父様がプレゼントの代わりに持ってきたのは、結婚相手候補の姿絵だったのじゃ。


同じ集落で暮らしてきたドワーフの青年で姿絵など必要なかったが、その姿絵を見て我は口に含んでいた火酒を吹き出してしまったのじゃ。


髭が盛られすぎじゃ…。


両方のモミアゲと顎から伸びる髭を三つ編みにし、リボンで飾られ地面に到達しているという、髭モリモリの姿絵に、これでもかというくらいドン引きしたのじゃ。


それというのも、我は幼い頃に月に一度くる人間の行商人に一目惚れし、それ以来、理想の結婚相手は高身長で肌はツルツル、髪はサラサラとなっていたのじゃ。


ドワーフ男性の誇りである長い剛毛の髭など、とても受け入れられないのじゃ。


頑固な父様は人間との結婚など絶対に認めないし、このままではドワーフ男性に強制的に嫁入りさせられてしまうと悟った我は、断腸の思いで家出を敢行したのじゃ。


見目麗しい我ならば、人間の集落に行けば理想の男性から結婚を申し込まれると、当時は本気で考えていたのが今となっては恥ずかしいのじゃ。


予定が狂った最大の理由は、どうも人間の男性から我は12歳くらいの子供に見えるらしいのじゃ。


そんなわけで、人間の男性に声を掛けられたと思えば、「お嬢ちゃん、お母さんとはぐれちゃったの?」とか「子供が夜に一人で出歩いちゃ危ないよ。」など、まるで大人の女性として扱われないのじゃ。


希望は完全に打ち砕かれ、故郷に帰ることもできず、我は生活費を稼ぐために冒険者になったのじゃ。


その選択自体は悪くなかったようで、我は戦士としてメキメキと腕をあげ、今ではギルドでも重宝される存在となったのじゃ。


今は町の郊外に小さな一軒家を借りて定住しておるが、正直なところ寂しいのじゃ。


家出から3年。日々幸せな結婚の現実味が遠のいていき、不安から夜は自宅で一人酒。


このまま異邦の地で一人寂しく年老いていくと思うと、酒の肴もないというのに呑みすぎて、リビングのテーブルに突っ伏して眠るのが常態化しているのじゃ。



そんな寂しさと虚しさに押しつぶされそうになりながら日々を過ごしていた我に、転機は突然訪れたのじゃ。


【ユウト視点】


終電を降りてトボトボと家路につく。郊外の夜は暗く、人通りもない。


慢性的な疲れから欠伸が止まらず、目もショボショボする。


こんなはずじゃなかったんだよなぁ。


大学を卒業して2年。希望にもえて就職したものの、ブラック企業のSEは想像を超えた過酷さだった。


終電帰宅は当たり前で、睡眠時間は4時間で定着してしまった。休日出勤も多いのに適正な残業代も払われない。


過労死という言葉が度々脳裏に浮かぶのを必死に思考から追い出す。


そんな僕にも楽しみはある。たまの休みには趣味として様々な料理に挑戦し、それを肴に缶のハイボールを飲むのが癒やしの時間となっているのだ。


まぁ料理といっても素人なので、たいしたものは作れないのだけど。



やっとアパートに帰りつき、自室のある2階へと外階段を上っていたとき、突然の目眩に襲われた。


僕はバランスを失い後方に倒れて階段を転げ落ちていく。


断続的な痛みの中、明日は仕事を休めるかもなんて思ったのは、もう末期症状だったんだろうなぁ。


最後はどうなったか、意識を失ってしまった僕にはわからなかった。


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