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混戦!乱戦!

「新平様、本懐を遂げられましたか・・・」

山名の旗艦備前の横腹に向けて加速していく岡山の姿を見やって大佐は少し悲そうにつぶやく

「ではっ」

そういうと、右手で赤いレバーを引いた。

横になって海中を逃げ回っていた砲弾がいきなり海中で停止して立ち上げる。

と同時に側板が開き腕のようなものが現れた。

腕を生やした砲弾はくるりと回転すると、その肩から何か飛び出していく。

ドン!ドン!ドン!ドン!

大きな衝撃音のほうを見やるに、二つ引両のコックピット部分に大きな鉤が突き刺さっていた。

一隻ではない。

挿絵(By みてみん)

SV-125を追い回していた四隻の二つ引両が瞬時に沈黙させられたのである。

四隻の二つ引両を一瞬にして葬った悪魔の姿を見て鴉は思わず噴き出した。

逆光を受けて黒い影となったその姿は案山子にしか見えなかったからである。

挿絵(By みてみん)

「ハハハ、スケアクロウ(案山子)大佐!やるじゃないか!じゃあ」

TT160は二つ引両の集団に向けて突っ込んでいく。

そしてその翼に両端につけられた鉤爪で2隻の二つ引両を引っ掛けて海中を引き吊り回した挙句に

燃え盛る炎の中に放り込んだ。

「大佐!これが本物のクロウアタックって奴だよ」

咄嗟にスケアクロウのクロウ(鴉)を自分の名前にかけて攻撃名にするあたり、鴉の地頭も悪くない。


一方、山名宗兵は燃え盛る備前の甲板にいた。

「宗兵様、お逃げください!」側近の一人が宗兵にすがりつく。

「馬鹿な、戦はこれからぞ!見よあれを」

山名の後衛の艦隊がこちらに艦尾を向けて向かってくる。さらにその後方には解放軍の艦影が!

「残った二隻を合流させて、解放軍に討ってでよ、どけ」宗兵は側近の手を払う

「宗兵様!どちらへ?」

「儂も平四ツ目結で出る、後は任せる、この船に残っている巡機装はm全部出せ!」

そう言い残して山名宗兵は赤く塗装された愛機に飛び乗った。


「ようやく到着ですか、こちらもあと一隻ぐらいは落としておかないと後が怖いです」

山名の後衛艦隊とそれを追う解放軍第一艦隊を見やると大佐はSV-125を再び巡航突撃形態に戻す。

TT160がSV-125近づき、有線通信アンカーを貼り付ける。

「お、大佐やるのかい!あたしも手伝うわ」

「いや、鴉さんにはアレをお願いします。あの赤い平四ツ目結を捕獲してください」

「あいよ」

「捕獲したらすぐに離脱をお願いします。」

そういって大佐のSV-125は敵中に突っ込んでいく。

「ふん、あれがこの騒ぎの元凶であるか!」混乱の中でめざとくSV-125を見つけた山名宗兵。

赤い四ツ目結を抜刀させる。

スッツ

SV-125と赤い四ツ目結の間に割り込んできた白鳥。

「お前の相手はこのあたしだよ」

TT160は一瞬にして赤い四ツ目結に肉薄して翼の鉤爪を引っ掛けようとする。

すばやく横にすべるようにして動き、迫りくる鉤爪をなんなく交わす

「小癪な!しかしこの動き、すでに絶えたはずの烏丸流暗殺術とみた」

「やるじゃないか、ジジイもまだ衰えてないね」

白鳥の皮を被った猛禽は獲物を求めてその周りをぐるぐると周り始める。


SV-125は、山名の前衛艦隊で二隻残ったうちの一隻に接近して再び人型強襲形態となる。

「人型にならないとこれを撃てないなんて本当に欠陥機ですね、これは」

両手で128ミリ近接臼砲を抱え、備中級母艦の艦尾に徹甲弾を撃ち込むSV-125。

その機体は反動によって大きく後ろに下がる。

猛烈な劫火をあげる山名の備中級母艦

「これでどっちも同じ艦数になりましたね。では逃げるとしましか。」

戦場に背を向けて遁走するSV-125。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

山名艦隊の後衛を指揮しているのは山名宗平の嫡男山名政ひで(やまなまさひで)である。

ひでの文字を将軍よしひでから拝領するほどの信任が厚かったが、武人としては凡庸であった

「よし父上の艦隊で残った一隻を加え二隻づつに分けて、それぞれを縦陣とせよ」

四隻の艦艇を結んだ線はほぼ正方形になる

「なにっ!何故に?」政ひでは思わず声を上げた、

山名な艦隊運動に呼応して解放軍も全く同じ陣形をとった。

「撃て!敵の左前衛の艦に砲撃を集中せよ」

右舷の二隻と左舷の前衛の艦が解放軍の左前衛の船に砲撃を集中する。

左舷の後衛は全くの遊兵となった。

解放軍も全く同じで陣形で山名艦隊の右弦の前衛に砲火を集中する。

それぞれの集中砲火を浴びた船が黒煙を噴き上げながら海中に沈んでいく。

「左舷の前衛の船を中央に向けて後退せよ!凸陣とするのだ」

すると解放軍も全く同じ陣形になる。

それぞれ中央の船に砲火を集中し、そして沈んでいく

「馬鹿な!これでは単に消耗戦ではないか!敵は用兵をしらず、なんと無能なことよ!」政ひでは自分の無能さを海中奥深くに沈めて敵の司令をなじる。

これは解放軍が山名艦隊の陣形を模倣したのものでも、わざと消耗戦を狙ってきたものでもない

解放軍の司令官もまた凡庸であったにすぎない。

双方の凡庸さからの思考が奇しく同じ陣形となり結果消耗戦を招いたのだ。

全くお互いの同じよう被弾し、弾薬を消耗していく双方の軍勢

「後退して距離を取り、巡機装を前に出せ」

またしても解放軍は全く同じ手をとる

そして双方の巡機装はお互いの敵に向けて前進しようとしたその瞬間である。


ドーン、ドーン

大量の砲弾が雨あられのように降り注いできた。

お互いが海上に展開した巡機装が次々と粉みじんになって吹き飛ぶ


「あ、あれはなんじゃ!」

左舷に突如現れたのは九曜紋を掲げた六隻の軍船。

すなわち細川克元率いる艦隊が山名、解放軍の双方が疲弊してきたところに見計らって奇襲をかけてきたのである。

弾薬も消費し尽くした山名と解放軍には抗すべき力は残っているべきもなく、彼らは海の藻屑となって消えていった。


その戦場から遥か離れた海上。

機体に無数の傷を受けた赤い四ツ目結。

その横に停泊する二機の巨大な機体。ひとつは純白で、も一つはいぶし銀に光る。

純白の機体のほうは少なからずの損傷を受けているようだ。

よく見ると赤い四ツ目結が乗った艀、いわゆる巡機装の巡航用フロートと呼ばれる上には3人の人影があった。

その一人、肥満ながらもがっしりとした身体付きの老人は手を後ろで縛られた状態であぐらを掻いていた。

「まったく世話のやけるじじいだぜ」乱れた髪を掻きむしるように片手でその老人のハゲ頭をポンポンと叩く鴉。

「ふん、何が目的じゃ、ただ殺すならこんな事はせんだろ」鋭い眼光を放つ山名宗兵

「宗兵どの艦隊は全滅しました。」

「さもありなん、あの愚息政ひではあればな」

「解放軍の第三艦隊もです、お互いが消耗戦で疲弊していたところ細川に奇襲されたのです!」

「なんと!そういう事か!克元め!やりおって!」宗兵の両目に怒気がやどる

「あたしらは、あんたの命を救ってやったんだぞ、少しは感謝してもらいたいもんだな」

「そりゃあどうも、烏丸の御嬢」

「黙れ!その名を口にするな」そう言って抜いた脇差を宗兵の首にあてる

「まあまあ、鴉さんも落ち着いてくださいよ。お客様の荷物を傷つけるのは物流会社社員として失格ですよ」

「はぁ、わしもお荷物扱いか、歳はとりたくないのう、さておきこのお荷物とやらは、どこには運ばれるのじゃ」

「失礼いたしました。御坊には叡山へご案内させて頂きます」

「叡山か、わしとは宗派が違うがな、まあ細川に嫌がらせできるのであればそれも悪くはない」

「では参りましょう。鴉さん、すいませんが私の機体を曳航して言ってください」

「ああいいよ、しかしこのじじいをあたしの機体に乗せるのはなあ」

「そうですか、では御坊は、私とともにこの機体で参りましょう。」

「承知。ん、何、操縦席に座れと言うのか?」大佐は山名宗兵を操縦席に座らせて、自分は後部の座席に座る。

「御坊が変な気を起こさぬように後ろで見張らせて頂くだけですよ。あ、それ違います、そっちです」

と大佐は丁寧にSV-125の操作を教える。

「ふん、なかなかいい機体ではないか」

「気に入って頂けましたか、では叡山につき次第、よろしければ、これを差し上げましょう」

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