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9. 聖都アーク=エデリア、語られる都市

 


 ――聖都アーク=エデリア。


 この世界最大の宗教都市は、白銀の塔と金色の神殿で彩られた“神の都”である。

 かつてこの地に“創造神の声”が降りたとされ、信仰と秩序の象徴として存在していた。


 


 だが今、その聖都に、黒き噂が届いていた。


 


「……“語っただけで奇跡が起きる”存在が現れたらしい」

「影に従う異端教団。“福音”を名乗る、謎の集団……」

「“影を名乗る者”が、神に近づこうとしている……?」


 


 人々のざわめきはやがて、警戒を、そして恐れを帯びていく。


 



 


 一方、クロウは――


 


「ふぅ……今日の神託相談会も無事終了か……」


 


 図書館の裏庭で、紅茶をすする。

 目の前では、デルフィアが「今日の神託記録」を美しい筆跡でまとめていた。


 


「クロウ様、本日の神託は、“闇夜に吠える猫を無視せよ”と、“影の風は東から吹く”の2件でした」


「うん……どっちもほぼアドリブだったね……」


 


(“吠える猫”はただの野良猫の苦情だったし、“影の風”は寝ぼけて出たセリフだし)


 


 だがデルフィアは真剣だ。


 


「これらは、次の“神話章”への布石として十分な示唆となるでしょう」


「どの神話!?どの章!? 書いた覚えないよ俺!?」


 


 ゼクスが静かに報告に来る。


「クロウ様。“巡礼団”が、まもなく聖都に到達するとの連絡が」


 


 クロウは茶を吹きかけた。


「えっ!? もう到着したの!? いや早くない!? 何この機動力!?!?」


 


 デルフィアが頷く。


「途中、語り部様の御名を出しただけで関所が全解放されたそうです」


「それはそれでどうなの!?!?!?」


 



 


 その頃、聖都では。


 黒ローブの一団シャドウ・ワンダラーズが、街を練り歩いていた。

 彼らは静かに“語り”を唱え、誰に押しつけるでもなく、ただ存在を“示して”いた。


 


「この地にも、“語りの力”が届いてほしい」


「語られぬ者こそ、真に強いのです……」


 


 噂を聞いた市民たちは、不思議と彼らに敵意を向けなかった。

 むしろ、一部の若者は黒ローブに興味を持ち、「語りって……なんか、かっこいい」とまで言い出す始末。


 


 そして、その報告が、大神殿にも届く。


 


「……民が、影に惹かれているだと?」


 光の神殿“七耀導師”の一人、ルキウス・エイゼルが立ち上がった。


 


「放置すれば、“言葉の神”などという虚構が民を惑わすことになる。

 これは、我々の信仰への侵攻と見て間違いあるまい」


 


「命じよ。《聖騎士団》を。“影”を断罪するために」


 



 


 次回――


 聖都に、光と影の対峙が訪れる。

 クロウ様の知らぬところで、世界が一歩ずつ、“語りの神話”へと飲み込まれていく。


 


 だが本人はまだ、図書館で寝落ち中である。

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