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11. 語られた都、語る者たち

 ――聖都アーク=エデリア。かつて神の声が響いたとされる都市。

 そこに今、もう一つの“声”が届いた。


 


 それは、クロウの語り。

 かつて妄想と呼ばれた物語が、都市の空気すら変えてゆく。


 


 彼が一言語るたび、周囲の影が揺れ、

 彼が歩くだけで、民たちがひれ伏し、跪く。


 


 ――まるで最初から、この地の“神話”だったかのように。


 



 


 「“虚構”が世界を動かす……馬鹿げている。だが……抗いきれるか?」


 そう呟くのは、光の神殿・七耀導師の一人【ルキウス・エイゼル】。


 


 彼は大神殿の高座から広場を見下ろしていた。

 その目には、苛立ちと、微かな――恐れ。


 


「このままでは、“語り”が真理として民を侵す。

 神の名を騙る偽者に、我らの座は――」


 


「否。座などどうでもいい」


 


 不意に現れたのは、七耀導師の最年長【セレナ・ヴァイル】。

 銀髪の女性導師は、静かに言い放った。


 


「問題は、“あれ”が本当に“語っている”のか、それとも――“語らされている”のかだ」


 


「……どういう意味だ?」


「見極めよう。これは神の試練か、それとも……神の代替か」


 



 


 一方その頃――クロウは。


 


「えっ、俺、王宮に招かれたの?」


「はい。“聖都評議会”より、“語りの主”として正式に謁見の要請です」


「マジかよ……ついに公的に認知されてしまった……!」


 


 デルフィアは神妙な表情で言う。


 


「ですが、気をつけてください。“歓迎”とは限りません。

 クロウ様を“取り込む”か“断罪”するか、それを定めに来る者たちです」


「それめっちゃ怖い会議だね!? 俺なんもしてないのに!?」


 


 ゼクスが剣を携え、静かに問う。


 


「もし、彼らがクロウ様を“敵”と断じたら――討ちますか?」


 


 クロウはしばらく黙り、ため息をついた。


 


「……言葉は剣だ。でも、それは“誰かを傷つけるため”じゃない。

 “誰かを守るため”に使いたいんだ、俺の“語り”は」


 


 デルフィアが微笑む。


 


「それが、“福音”の根本です。

 クロウ様の物語こそ、我々の世界を形づくる真理」


 


 ――こうして、クロウは聖都評議会との“語りの交渉”に挑む。


 だが、その裏で、光の神殿もまた動き出していた。


 



 


 神殿地下。

 閉ざされた聖域に、数人の聖職者たちが集っていた。


 


「……計画を開始する。“影”の語りを封じる禁言術式、《静寂の環》を発動する」


 


「異端の語り部、クロウ。

 彼の口を封じ、全てを“沈黙”に包み込むのだ――」

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