Episode.1 コーンたっぷり野菜コロッケ
10月16日、午後五時十八分。いつもと同じ商店街の前を通過。いつもと同じ時間。
「おばちゃんいつもの一つ!」
「あ、紫苑ちゃん!いつもお疲れ様!はい、いつものね!」
そう笑顔で渡された、一つ50円の破格コロッケ。サクサクの衣を手で割ると、中にはたくさんの旬の野菜。そして私の好物であるコーンが他のものより多く入っている。これは私が「毎日塾を頑張っているから」とおばちゃんが用意してくれる私専用スタミナコロッケ。中身は栄養も愛情もたっぷり練り込まれている。それを今日も大事に頬張りながら使い古されたリュックを背負い直す。私の通っている塾は、学校から近いという理由で中学一年生の春からお世話になっていて、さっきのコロッケ屋は通い始めた初日からずっと通っている。この時間は学校帰りの学生や仕事帰りのサラリーマンで賑わっており、ほとんど変わらない顔ぶれなので、顔見知りの大人たちに「今日も頑張ってね。」といった声をかけられ、私はお礼を言いながら笑顔で大きく手を振り返す。
商店街を抜けると現れる、橙の空と踏切横に生えているコスモスとススキが高校入試までの時間の短さをひしひしと感じさせる。ふと、数日前小説で読んだ「秋風の匂いはー。」という一文が頭によぎった。しかし困ったことにその後が思い出せない。踏切が開くのを待つ間思い出そうと考えたが答えは出なかった。しかしどうしても答えが出ないことにモヤモヤしてしまうので、私の感性で答えが出るかも分からないが、目を瞑り思いっきり空気を吸い込んでみた。やはり私が感じたのは商店街の飲食店から香る食べ物の匂いや、踏切の鉄の匂いだけだった。自惚れておかしな行動を取ったと自覚した途端急に恥ずかしさが込み上げ、思わず誰か今の行動を見たかもしれないと俯いた。
俯き気味に目の端で周りを見回してみたが、ちょうど踏切のバーが開いたようで、少し後ろの方にいた私の周りには誰もいなかった。
ようやく塾に着き、いつも通り出席カードを専用機械に通す。窓から外を見ると空はもう時期夜になろうと最後の太陽をゆっくりと飲み込んでいる最中。いつも通り授業を受けた。
午後九時。授業が終わる。机の上にちらばった消しカスを片付け、授業中にポイントや途中式をとるためのコピー用紙を集めながらカバンを開き、中のファイルを手に取った途端スマートフォンに手が当たり、ロック画面が映る。
「…誰から?」
見覚えのない番号からの不在着信の通知が見えた。
初めまして、さとのきの実です!この度は、私の初ストーリーをお読みいただきありがとうございます。私自身、小説をこのような形でアップさせていただくことが初めてで、この「小説家になろう」の操作も覚束無い様です(笑)分からないことだらけなので手探り状態ではありますが、多少のミスは大目に見ていただきながら今後ともご愛読していただければ光栄です。また私情ではございますが…主、友人にバレてしまわないかと大変ソワソワしている+バリバリの学生なので状況によってはアップ時期は不定とさせていただきます。