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僕は貴女に私はあいつに~料理に必要なのは腕と愛情と食材~

作者: 龍急

言の葉シャッフル

「はぁ~、どうしたらいいのかしら」


とある屋敷の中で明善棗めいぜんなつめはため息をつきながら悩んでいた。

彼女には好きな人がいる、しかも少々複雑な関係であるからしてロクに相談も出来ず

仲は進展しない一方だ


『コンコン』


彼女の部屋にノックの音が響く、彼女は一呼吸間を開けて「どうぞ」と声をかける


「失礼します、花瓶の水を変えにきました。」


彼女の部屋に入ってきたのは鏡家修一という燕尾服を着た少年。

そう、彼こそが棗の思い人であり、棗と修一はお嬢様と執事の関係なのだ。

幼い頃からこの二人は仲がよかったが鏡家の子供は十二歳以上になると立派な執事・メイド

になるべく修行をしなくてはならないらしく、そのせいで棗と修一の間には超えては

ならないと思わせるような壁がある。


「それではお嬢様、失礼します。」


そう言って花瓶の水を変えた修一は棗の部屋から出て行った


「あの修一バカ、また私のことをお嬢様って………」


棗は修一にお嬢様と呼ばれることを嫌っている、

理由は単純、主従以上の関係になりたいからだ。


「でも、私ってお嬢様としか思われてないのかな?」


ため息交じりの小言を呟き、気分を紛らわすためにテレビをつける


『後一歩まで来ているのに自分の気持ちに気がついてくれない鈍感男を落とせ!!

       恋と愛の私の気持ち受け取ってよスペシャルー!!』


まさに自分の事だ!!っと思った棗はテレビでやっていた特番を突き刺すように見る。

そして、その番組独自捜査行った『鈍感男を落とせた理由』の中でダントツの一位

は『手料理』だった、

しかし、料理など簡単な物しか作ったこの無い棗は心の中で葛藤していた


(私が手料理!?無理無理無理、私、簡単な物しか作ったことないし……)


『今まで簡単な物しか作ったことが無いけど、彼がおいしいって笑顔になった顔が忘れられません』


棗の心の声にこたえるようにアンケート結果の理由が番組内で流れる


(で、でも、まずい料理を作ったら、余計に嫌われちゃうかも)


『嫌われるのを恐れないで勇気を出してみたらうまくいきました』


(で、でも………)


『迷っていたら好きな人が獲られちゃうかもしれないし、マイナスになることは無いので挑戦してみよう』


司会者が結論を言うと、夏目はちょっと考えた後にゆっくりと立ち上がり

「よし」っと呟いて修一を呼び出す、

そして明日二人でピクニックへ出かけることになった。



そしてその翌日の朝、棗は材料がある程度冷蔵庫にあるので、昨日の夜に自分が作れてなおかつ

喜ばれそうな食べ物ということで和風ハンバーグを作ることにした。


「えーと、まずは……」


棗は玉ねぎは耐熱容器に入れてから、バターをのせてラップをせずに電子レンジで1分加熱する。

パン粉は牛乳に浸して生しいたけは軸を切り、縦半分に切る。

その後ボウルに合いびき肉と塩とこしょうを合わせ、粘りがでるまでよく混ぜた後溶いた卵とレンジでチンした玉ねぎと牛乳に浸したパン粉も一緒に加え、よく混ぜ合わせて

それを2等分して丸め、両手でキャッチボールの要領で空気を抜き、円形にまとめる。

フライパンを熱してサラダ油をひいて、強めの中火で焼く。焼き色がついたら裏返しをして、

その後弱火にしてふたをする。4分くらい蒸し焼きにしてふたを取り、

中火にして焼き色がつくまでさらに焼き、いい具合に焦げ目がついて大根おろしと醤油をかけたら完成

ハンバーグのほかには、切干大根を水に浸してやわらかくし水気を絞って食べやすい長さに切る

その後パプリカ、きゅうりを千切りにしてよく混ぜたら切干大根のサラダが完成、

溶いた卵の中に砂糖と塩を入れてフライパンに油をしき卵を巻きながら焼くと玉子焼きの完成

これを弁当箱に盛り付けて白飯を入れたら和風ハンバーグ弁当が完成した


「うん、これならきっと修一も……」


棗は自分の弁当の出来に満足して、弁当箱を包みその場を後にした

………しばらく時間がたった後に修一がやってきた


「あれ? 破棄するはずの食料が全部消えてる

………うわっ! これ塩じゃなくて砂糖じゃないですか!? 間違って入れられたみたいですね」


修一は塩と砂糖の中身を変えて、破棄しようとしていた食料を探すがやはり見つからない


「誰かが処分してくれたのかな? 間違って食べたら色々とまずいほど古かったり痛んだりしてますからね……」


修一はそんな言葉を残してその場を後にした


昼、棗と修一はピクニックに出かけていた


「ねぇ修一、お腹空いてない?」

「いえ、空いてませんけど……」

「そうよね、やっぱりお昼だし空いているわよね」

「お嬢様、会話が成立していませんよ」


棗は修一の言葉を軽く無視しつつバックから弁当箱を取り出す


「べ、別に、あなたのために作ったわけじゃないからね!!」


棗のツンデレのセリフに修一は……


「はあ、やっぱりそうですよね……」


ちょっと落ち込みながら素直に受け取ってしまう

 

「あ……や、やっぱり、わ、わわ、私って今お腹空いていないから、食べていいわよ!!」


多少言葉が震えながら修一にお弁当を渡す


「え? でもこれってお嬢様のお弁当じゃなのでは……」

「いいから食べなさい!!!」

「は、はい!!」


修一は多少脅されながらもちょっとうれしそうに弁当箱を開ける


「和風ハンバーグ弁当ですか、おいしそうですね」

「い、いいから、早く食べなさい!」


修一の何気ない言葉に棗は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに答える


「では、いただきます」


修一は箸でちょっと大きめの一口サイズにハンバーグを切って食べる


「ど、どう?」


「…………オイシイデスヨ」


修一は固まった後、汗を大量に流しながら棗に答える

料理に必要なのは腕と愛情と食材、腕はそこそこ愛情はたっぷりだが食材が悪いせいで

味はとてもまずく、しかも体に悪いような味がする、


(しかし、これは棗が作ってくれた弁当だ、きっと残したら傷つく)


「そ、そう? それならもっと食べていいわよ」


棗はちょっと顔を赤らめながら笑顔で弁当をすすめてくる


「ハイ、アリガトウゴザイマス」


ちょっと言葉が片言になっているが棗は気にしていない、恋は色々な部分で盲目なのだ


(………よし)


修一は覚悟を決めて弁当箱を口元まで持ってきて一気に食べる、幸いにもご飯はまともなので

なんとか食べきれた


「オイシカッタデス、ゴチソウサマ」


その後、棗は顔を赤くして幸せそうに帰ってきて

修一は顔を青くして帰ってきたのと同時にベットに寝込んでしまった………

言の葉シャッフル

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