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第5話 近づいたらダメな時はある

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放課後,柴田は,図書室で読書をしていた.勉強をしてから帰ろうと思ったが,あっさり勉強が終わり,少し読書をして帰ろうと思ったが,結局かなりの時間本を読んでいた.

「ヤバいな……あっ」

外は暗くなっていた.


柴田がスマホを見ると

『お兄ちゃん,何かあったの?勉強を教えるって言ったよね.テスト勉強ぐらい教えてやるよ,任せろ妹って言ったよね.』

そんな妹からの通知があるのに気が付いて,一旦,スマホをポケットにしまった.


「ヤバいな.」


柴田は急いで荷物をまとめて,その後,もう一度,携帯を見てため息をついた.『ふざけんな,お兄ちゃん.』そんなメッセージが追加されていた.

「……甘いものでも,帰るか.」

妹の機嫌を取る為の方法を考えて,急いで図書室を後にした.


柴田が,昇降口にたどり着き,下駄場から靴を手にとした時に後輩と出会った.後輩は,部活終わりのジャージ姿であった.柴田がゆっくり本を読んでいる中で,後輩は本気で部活動をしていた.


後輩は何故か動揺していた.

「せ,先輩……何でいるんですか?」

目を見開きそして暴言を吐いた.普段なら誰とでも目を見て話す彼女であったが,今は,目は柴田から少し逸れていた.


「いや,え.」

柴田はシンプルに動揺し,混乱していた.


「先輩って部活動してないですよね.」


「うん,してないですけど.」

柴田は,全力で考えた.もしかしたらこの後輩が『顔が好き』と言ってきたのは,部活動内でのおふざけやお遊びの延長線上で行われた事だったら,部活動をしているタイミングで柴田がいるのが問題だったのかなんてことを,一瞬考えたが,流石に予想だけで決めつけるのは良くないと一回深呼吸した.


「じゃあ,何でいるんですか?先輩.」


「図書室で本を読だりしてたからですけど.」

柴田はとりあえず答えた.


「図書室ですか.そうですか.なるほど,では一旦,図書室に帰ってください.」

後輩は,そう言って柴田を手であっちに行けという動作をした.後輩のこの行動の意味が柴田には分らなかった..


「……なんでですか?」

(早くしないと,妹がブチギレる…)

柴田は焦っていた.


「あっ,えっと.あのー,可愛い後輩のお願いは無条件で聞いてください.」


「……無理」

柴田は,少しキレていた.柴田は,靴を履きずんずんと後輩が立っている方へ歩いて行った.


「待って,待って,待ってください.分かりました.私が下がるので近づかないでください.」

後輩は,焦りながら早口で,後方に下がって行った.


「えっと,何?何で離れるの?」

柴田は立ち止った.柴田は人並みの好奇心を持っていた.柴田は,後輩の謎の行動に好奇心が溢れて,その瞬間,怒りと今すぐ帰るべき理由を忘れた.


「……気遣いって知ってますか?先輩.」

後輩は,そう言って柴田を睨んだ.


「……知ってるけど」

柴田は気遣いを知っていた.しかし完璧な気遣いが出来るほど,完璧な人間では無かった.


「いえ,知りません,先輩は分かってません.可愛い後輩が教えてあげます,私は,さっきまで,本気で部活をしてました.」

後輩は,目の前の柴田が理解していないことを察してヒントを出した.


「うん,見たら分かりますよ.」

柴田は理解できなかった.


「……鈍いな.もう.嫌いになりそう.」

後輩は,溜息をついて柴田を睨んだ.


「……別に良いですけど.」

柴田は嫌われても特に問題が無かった.まだ,昨日知り合ったばかりの後輩とそこまで仲が良くなった.


「……嫌いにはなりません.でも,先輩を好きになる人が少ないのが分かったので良かったかも知れないです.」


「……唐突だし,日本語ちょっと変じゃない.モテないで伝わるよ.」

柴田は,自覚していた.


「今は,どうでもいいんです,先輩.分かりました.もっとヒントを出します.」


「……もう,答え言ってほしい.」


「……無理です.まず,私は先輩の事が好きです.」

後輩は,目線を合わせて真面目な表情でそう言った.彼女は,柴田が性格を重視すると言っていたことから,流れでもこう言うことを言うときは,なるべく真剣に言おうと決めたのだ.


「『顔が好き』って妄言でしょ.」


「妄言じゃないです.まあそこら辺は,今は良いですよ先輩.まず好きな人には,なるべく良い状態で会いたいんです.分かりますか?」


「性格は,そう簡単に簡単に変わらないと思うけど」

柴田は理解していなかった.


「先輩が性格重視でも,もしかしたら見た目で押し切れるかもですし,それにですよ.見た目でマイナスされないためには,ちゃんとする必要があります.」

後輩はそれなりの正論を言った.


「ああ,確かに.そうか.でも別にジャージでも問題ないと思うけど.制服とあんまり変わらないよ.」


「違いま,いや惜しいですけど,違います.そこじゃないです.私は,ジャージでも可愛い後輩です.」

後輩は別にジャージ姿に自信がないとかでは無かった.


柴田は停止した,完全に正解したと思っていたのだ.しかし,正確に言えば,後輩それなりの正論は理解して,柴田は全てを理解したつもりになっていた.柴田は,何の事か真剣に考えた.

「め,メイクですか?」

柴田は絞り出した.


「違いますし,そもそもメイクしてないです.運動してるんですよ.」


「……凄いね.天然の顔ですか.」

不正解だった.柴田は,素で驚いた.


「先輩,ナチュラルに養殖の顔がいるみたいな言い方をしないでくださいね.違います.ヒントです.私は運動しました.かなり頑張って運動したらどうなりますか?」

後輩はヒントを出した.なんか察してほしかったのだ.


「……疲れる?」

柴田は運動をあまりするタイプではなかった.だからそんな事しか考えつかなかった.


後輩は,ため息をついた.

「……あ,もう良いですよ,はい,言います.」

そう言うと硬派は深呼吸をして,それから,少し顔を赤くした.

「私,今,汗かいてる,だから先輩は半径3メートル以内に入って来ないで下さい.」

そう言って下を向いた.


数秒の沈黙が生まれた.

柴田は停止した.いろいろ恥じた.何も証拠がないのに後輩に濡れ衣を着せるような自分を恥じた.察しが悪い自分を恥じた.圧倒的な罪悪感に柴田は支配された.

「……ごめんなさい.」

柴田は深々と頭を下げた.


「あ,いえ,先輩,あっ,私下がるので通ってください.」

後輩も,何とも言えない表情になっていた.彼女は後悔していた.何も言わずにさっさと下がってどいていたら良かったと後悔した.


無言で距離を保ちつつ,場所を入れ替えた.

「……あっ,えっと,さようなら.」

柴田は,そう言ってもう一度,深々と頭を下げた.


「さようなら,先輩.」

二人は,何となく気まずかった.


柴田は,動揺したまま家に戻った.そのせいもあってか,妹の機嫌を取るための甘いものを買うことを完全に忘れていた.


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