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新たな仲間と


 新たに、竜族の下に向かって旅をする事になった。旅の仲間は、私とリズと村長さんに加えて、ルレイちゃんが加わる。

 ルレイちゃんは旅に出ると決まってから、とても嬉しそうにしていてそれが子供のようで可愛い。初対面でこそ私は彼女に対し、殺そうとしてしまったけどルレイちゃんも立派な女の子で、美人さんだ。そして露出が激しくて、ちょっとエロい。それでいて元気があって、魅力的な子だと思う。


 サリアさんから竜族の下へと行くように命じられてから、一日は猶予を貰った。普通ならその間に魔族達と交流を図って仲良くなる……と行きたいところなんだろうけど、特に何もなかった。話しかけないし、話しかけられない。むしろ私は避けられていた気がする。

 というのも、私が黒王族という存在だからだ。グラサイも黒王族と聞いてビビっていたけど、他の魔族達ももれなく私の種族を聞いてビビっている。

 だからリズや村長さんと何事もなく、平和におとなしく過ごして一日は終わった。


 そして次の日、私達の馬車に物資が運び込まれ、出立する準備が出来た。出会ったばかりの、同じガランド・ムーンに所属する仲間達とはしばしのお別れである。


「──こ、今回旅にお供させていただきます、ハルエッキ・シャージャールと申します……!」


 女の子だけの楽しい旅になるかと思いきや、そうは行かなかった。前日サリアさんが言っていた通り、私達の旅には魔族も同行する。

 その中の1人が、今私達に向かってペコリと頭を下げて来た男の子だ。名前はハルエッキと言うらしい。


 彼の容姿は、とても小さい。幼いではなく、小さい。背は私の胸下ほどまでしかなく、村長さんの腰ほどまでの身長しかない。柔らかそうなふわふわの髪の毛の彼は、目に自信のなさが表れていて気弱な青年のようだ。頭の上には、魔族の証拠であるヤギの角がはえている。けどその角は、身長に比例するかのようにとても小さい。服装は、つなぎのような服を着た上で背にリュックを背負っており、まるでどこかに探検にでも出かけるような恰好である。


「はいはーい!次、うちの名前はサンリエフ・フルフルックっす!サンちゃんって呼んでください!」


 次に自己紹介したのは、女の子だ。明るいオレンジ色の髪の毛を揺らし、跳ねながら元気よく挨拶をしてくれた。その際におっぱいが揺れて視線がそちらに行ってしまう。

 背は普通で、私と同じくらい。そして頭にはまっすぐ伸びた鹿のような角がある。加えてその目は人の物でなく、まるで猫のような目だ。


「……グヴェイル」


 最後に、静かに呟くようにして、一言だけ言い放った男がいる。

 背の大きな男だ。村長さんと同じくらいだと思う。口元をマフラーで覆い隠し、全身黒色の服で包み込んだその姿は忍者を彷彿とさせる。糸目で、目は開いているのか閉じているのかよく分からない。そして魔族だから当然角がある。2本、対になるように真っすぐ生えているけど、この角は……なんだろう。キリン?

 腰には2本の刀が差さっていて、私とちょっと被っている。けど彼の刀は私の物よりも短めだ。タイプは違うようなので、セーフ。


「ルレイに加えて、この三人をウプラ達に同伴させる。どう使うかはウプラに任せるわ。馬を操るのはハルエッキが得意やから、ハルエッキに任せるとええよ」

「ぜ、是非ともお任せください!」


 サリアさんの紹介を受けて、ハルエッキが気を付けをしながら天を仰ぎ、大きな声でそう言った。

 その姿は、まるで兵士か何かのようである。


「じゃあ御者は任せようかね。でもいいのかい?人間なんかと一緒に、しかも竜族の所に行くんだよ?後から不満をぶちまけられても嫌だから、不満がある奴は今のうちに名乗り出て残りな」

「……」


 村長さんがそう言うも、3人の中から名乗り出る者はいない。不満はないという事だ。


「なんかもっとこう……人間なんかの言う事は聞くつもりはないとか、ないのかい!」


 不満はないと示した3人に対し、村長さんが不満そうだ。反抗してほしいのかほしくないのか、どっちなんだろう。


「そんな、無茶苦茶なー……」


 サンちゃんが、脱力してそうツッコミをいれた。

 サンちゃんは最初から緊張している様子はなかったけど、他の男2人は分からない。もしかしたら村長さんなりの、相手の緊張をほぐすための冗談だったのかもしれない。


「この子らは差別とかせんよ。だから、魔族を知ってもらうには丁度ええと思う。ついでにエルフの事も知ってな。逆に、皆には人間の事を知ってもらういい機会やと思う」


 魔族とエルフを知ってもらう、か。確かにこれから仲間になるのなら、互いの事は知っておくべきだ。

 しかし人間である私や村長さんは、かなりの変わり者だと思う。魔族やエルフを知るのはいいけど、人間を知ってもらうにはちょっと配役がマズイ気がする。リズは可愛くて人格者だから大丈夫。

 いや、よく考えたら私は今人間じゃなくて、黒王族か。黒王族代表が私って、それって黒王族終わってないだろうか。


「ま、いいだろう。あんたの仲間、このウプラが預かるよ!」

「うん。任せるわ。皆も、ウプラの言う事をちゃんときくようにな」

「はい!」

「了解しました!」

「……」


 それぞれがそれぞれの返事をし、場は和やかだ。

 一方で、置いて行かれる予定のおじさんとウォーレンが、少し離れたところでグラサイと並んでこちらを見つめている。その目はとても寂しそうで、哀れな子羊のよう。


「……」


 ちょっとかわいそうだけど、仕事を覚えるためだ。仕方あるまい。

 私は心を鬼にして、2人に向かって小さく手を振る。2人は、男だけど男の中では悪い男ではなかったと思う。特におじさんとは道中色々とあったので、心の中で仲間と認めている自分がいる。

 だから、仲間に対して別れを惜しんで手を振るのは普通だ。


 すると、おじさんも私の方に向かって手を振ってくれた。とても嫌そうな顔はしているけど、別れはもうじき訪れてしまうので仕方なくといった様子だ。


「……旅立ちながら、よく見とき。今目の前にいるこの皆は、ガランド・ムーンに所属して災厄を倒すという同じ目標を目指す、仲間達や」


 私達の周囲には、大勢の魔族がいる。たくさんのテントが整然と並んでたてられ、炊き出しを行ったり荷物の整理をしたりと、それぞれの仕事をこなして忙しそうに動き回っている。この全てが、私達が得た仲間となる。リズが求めた、災厄を倒すための仲間が今目の前にたくさんいる。


「それじゃ、出発しようかね。もう行ってもいいんだろう?」

「うん。本当に、頼んだで」

「善処するよ。でもいざとなったら逃げるから。後始末はあんたに任せる」

「怖いなー。でもま、ええよ。本当にまずくなったら、全部うちにおっかぶせて適当に逃げればええ」

「……ふ。全員馬車に乗りな!出発するよ!」


 村長さんの合図で、私達は馬車に乗り込んだ。ここまで村長さんの村からラーデシュに来る間、ずっと乗っていたのでもう乗りなれている。

 後ろの出入り口付近の壁際の定位置で、リズと並んで座って外を眺める。サンちゃんと、無口の男も乗り込んで来た。サンちゃんは私達の正面に遠慮がちに座り、男は奥の方へ行って座り込んだ。もう一方の男は御者席だ。

 最後に村長さんが乗って、私達を見渡してくる。


「出発しな!」


 村長さんの合図で、馬車が動き出した。動き出した馬車に向かい、魔族達が手を振って来てくれる。それに対し、サンちゃんが身を乗り出して元気よく手を振る。

 今この馬車に向かって手を振ってくれる魔族が、全部私達の仲間だ。たった2人から始まった旅が、一気に大所帯になってしまった。リズの夢の実現に、一歩近づけた気がする。夢の実現を目指して、次は竜族を仲間にしなければいけない。

 この感じなら、もしかしたら案外簡単に災厄討伐まで辿り着けるのではないだろうか。そんな甘い考えが浮かんでしまう程、順調だ。


 リズの夢は、案外近い内に叶うのかもしれない。そんな予感を胸に、また新たな旅が始まった。


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