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卵かけご飯

作者: 宮田カヨ

 昼飯は卵かけご飯が食べたい。

「一回ガキの頃さ、めっちゃ美味い卵かけご飯食ったんだよ」

 今日は久しぶりの休日、一体いつぶりだ。起きたのは十一時手前、雅仁にとっては朝昼兼用の食事だが、雄一郎にとっては昼食だ。

 普段、料理以外の家のことは雄一郎が行い、料理は雅仁が行っている。株の在宅ディーラーで家にいることが多い雄一郎と、ホテル清掃の責任者としての仕事を任され家にいない時間の方が多い雅仁の二人が住むにあたって、そうなるのは必然だった。

「卵そのままでめっちゃうまかったんだよ」

「どこで食ったんだよ」

「忘れちまった、でもサービスエリアだった気がする」

 雄一郎曰く、その卵かけご飯を食べ家に帰り卵かけご飯を家で再現しようとしたところ、食えたものではなかったらしく、今まで食べようと思えなかったらしい。

「でもさ、お前が美味そうに食ってたの見てたら食いたくなって、食べて思い出した」

 料理人が動画サイトにアップロードしているレシピで卵かけご飯を作った。雄一郎はそれを気に入り、強請ってくる。ふーん、と雅仁は寝ぼけ頭で受け答えした。

 卵ねえ、と百貨店の食品売り場から出る。卵かけご飯用の卵とタレを買ってみた。

「雄一郎、晩飯も卵かけご飯な」

 帰ったのは十六時半手前。起きるのも、家を出るのも遅かった。高い卵を買うために百貨店まで出向いた、帰りが遅くなるのは必然だ。

「まじ?」

「嫌か?」

「いんや、全然」

 同封された紙に書かれた通り、卵白と卵黄を分け、まず卵白をかき混ぜて白飯の上にかける。普段であれば、ここにオリーブオイルを入れる。だが、この卵には不要だろう。形や色を見ればわかる。スーパーで安く売られている卵と違い、表面の感触や光が当たった卵の殻して、全てが違う。タレ以外の下手な調味料はいらないだろう。

 豆腐とわかめの味噌汁、ピーマンの肉詰め、青野菜と根菜の白和、そして、卵かけご飯。それが今日の夕食だ。

「でも、急になんで卵買ったんだよ?」

 皿をテーブルに運びながら、雄一郎が聞いた。

「いや、ずっと忙しくてやばかったし、休みの日どっか行こうとか言ったけど、できなかったじゃん。だから、お詫び的な」

 ホテル清掃は人手不足かつ、アルバイトなどの募集をかけても、時給や固定給を上げても人が来ない業種。今いる人間が仕事に駆り出されるのは当然だった。いつ休みがあるかわからなかった時、雄一郎は本社に怒鳴り込むように電話をした。いつ休めるかどうかわからないなんておかしいだろ、と。

「……別に、そういうのいいのに。照れるっつーの。いくらだった? 払うわ、金」

「いいって、食っとけよ」

 繁忙期も過ぎれば、週に二日休めるはず。その時は雄一郎の言っていたサービスエリアを調べ、連れて行ってやるのもいいかもしれない。

「うんめ、この卵めちゃやばだぞ!」

 卵そのものの味がある、タレとかいらねえかも、と雄一郎は嬉しそうだ。

「まじ? 他は?」

「ピーマンめちゃやば!」

「白和無視するなよ」

「……ほうれん草苦い」

「子供じゃねえんだから」

 半分は食えよ、と言えば、照れて笑う雄一郎。

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