学年で一番のモテ男が抱える問題
春過ぎて高校一年の夏も過ぎ、秋も過ぎそうな今日この頃。
今や学年で一番のモテ男となった日村大樹にはある問題があった。
それは同じクラスに居る雨宮鈴という底辺女子に関わる噂だ。
何でもこれまた同じクラスの陰気底辺男子、影嶋冴功と仲良くし出したのをきっかけについ先日、彼の家にまで行って、風邪だか怪我をした彼のお世話をしていたというのだ。
それ以上の事を聞きたくなくて大樹は耳を塞ぎ、心を閉ざしてしまったが、今はそれを大変後悔している。
「なあ、知ってるか?」
「何をだ?」
太々しく、大樹はクラスの男友達の一人である南雲哉人を見ることもせず、座っている机に顔を伏せた。
「疲れてんのか? 今日、部活なくて良かったな」
「ああ……」
急な今日はサッカー部はありません情報に戸惑いつつ、たまには……と教室に残って何もせずにいたのだが、もう帰りたい。
何で運動部なのか……それはカッコイイ自分を見せたかったからだ。
でもその見せるべき相手はもう放課後でこの教室には居ない。
彼女は帰宅部。
ちゃんと真っ直ぐ家に帰るのだろうか……。
「なぁ、どうした? 今日は御機嫌斜めだな」
「そうだな……」
「珍しく認めたな、いつもはそうじゃないって言うかと思った」
「ああ……! 俺、帰る!」
何だ? 急に……そんな戸惑いを見せる哉人を置いてけぼりにして、雨が降りそうな中、大樹は一目散に自宅を目指した。
最初からそうすれば良かった。
きっと自分の母親は雨宮鈴の連絡先を知っている。
訳を話すことはできないが、教えてもらおう!
彼女は俺をまだ『日村君』と呼ぶ。
だから、こちらもそんな彼女を『雨宮』と呼ぶ。
そういう関係。
それでも、彼女は歴とした生まれた時からの幼馴染だ。