恋愛
中学生3年のとある授業。
科目は何か忘れたが、おそらく現国か倫理だったと思う。
唐突に生徒たちに向けて難題を出してきた。
「恋と愛の違いは何か?」
おおよそ、思春期の少年少女に投げかける領域ではない。
……今思うと。
前の座席から順番に、思いついた『答えっぽい何か』を発表していく。何しろテーマがテーマなもので、皆がモジモジしながら喋っていたことを覚えている。
そしてわたしの番が回ってきたが、少し時間が確保できたこともあってそれらしい発言ができた。
「恋は独りで、愛は2人です」
先生の表情が少し曇ったように見えた。
おそらくそのような回答を求めていなかったのだろう。
「でもお互いに恋をすることはあるし、複数にまたがる愛もあるわ」
明らかな敵意を含んだ指摘にカチンときたわたしは、すかさずこう返した。
「そういうことでしたら……。
恋は見返りを求めるもの、愛は見返りを求めません」
わたしの記憶はここまでで、このあと先生が何を言ったのか覚えていない。
しかしながら、14~15の少年がなんとませた事を言ったものだ。
……今思うと。
あれから20年以上が経ち、すっかりオトナになってしまったわたしは、少年時代の想いとは裏腹に『見返りを期待した愛』ばかり振り撒いている。
(実話シリーズ『恋愛』 おわり)