第97話 2年後
私が庶民学校を作ってから2年が経過したわ。
知事になってから3年目。
改革は順調に進んでいる。
私は、地方庁の会議室でクリス副知事がまとめてくれた報告書を確認する。
すでに、バルセロク地方のかなりの場所に学校を建設できている。今年からスタートする学校を含めれば、地域の6割の子供たちに無条件で教育を受けさせることができる体制が完成したわ。
「計画は順調です。このままいけば、予定よりも早く我々の目標を完了できると思われます」
「ありがとう。クリス副知事が頑張ってくれたおかげね。保守党も、教育改革の結果を見てからは、これを批判できなくなっているわ。仮に次の知事選挙で私が負けても、これで教育改革は継続しなくてはいけなくなる。港湾改革も完了した今、私たちの勝利は確実」
教育改革には副次的なメリットがあったわ。いままで隠遁生活をおくっていた知識人が、教師として世に出るようになったことで地域が活性化したこと。そして、学校や教材を整備するために、地方庁も支出を増やしている。さらに、海賊騒動の件で中央からも復興支援金がバルセロク地方にやってきたため、この地方は好景気にわいているわ。
どうしても、お金をたくさん使わないといけない状況になったせいね。お金は使えば使うほど、市場に出回り、みんなが豊かになるわ。
さらに、港湾改革で、港湾市場が拡大化された影響で好景気を加速させてくれた。
バルセロク地方の税収は、右肩上がりで上がり続けている。
ロヨラ副知事も満足そうだ。
「去年の地方議会選の結果を見て、現職知事が負ける要素がないじゃろ。教育改革と港湾改革で地域は活性化し、過去最高の好景気にわいている。ルーナ知事の尽力で、復興も順調に進んでいる。唯一の問題点でもあった支出の多さも、好景気による税収拡大で、むしろ黒字を拡大させている。誰も文句を言えないほどの結果を残しておるからの。保守党も真っ青になっているじゃろう?」
おかげで去年の地方議会選挙では、自由党は保守党を圧倒した。自由党は地方議会第一党の地位を確保したわ。
「ええ、これで2期目には、教育改革を完成させてみます。あとは拡大した税収を使って、貧困をなくすために動きたいと思います。教育改革と絡めて、職業教育の充実を図っていければいいですね」
貧困をなくし、多くの人が仕事に就くことができればさらに景気は良くなるわ。食料供給も安定している現在ならどんどん攻めていける。
最高の仲間たちと最高の仕事を作り続けている。
幸せの絶頂にいるのかもしれない。
でも、時代の流れは私の考えを大きく上回っていた。
会議室に息を荒げたアレンがやってきたのだ。
そして、彼は言う。
「ルーナ、大変だ。王都で大変なことが起きた!!」




