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第70話 子爵の暗躍

「何を言っているの……」

 このタイミングで自分の利権をすべて手放す?

 ありえないわ。


 まだ、クルム王子と自分の娘が結婚もしていないタイミングで……そんなことをすれば私と同じで婚約破棄される可能性の方が高いわ。弟や腹心の部下たちを切り捨ててまで守ろうとした利権をこんなにあっさり手放すわけがないわ。


 この人の娘は相当傲慢だった。思い出すだけでも嫌な気持ちになる。


 ※


「ええ、そうですわぁ。今日は前任者の方がこちらに来ると聞いていましたのでごあいさつに来たんです。今後も仲良くしてもらえると嬉しいですぅ」


「まさか。私から教えることなんてありません。だって、そうでしょう。私のことを見習ったらあなたは殿下に捨てられますわよ?」


「ふふ、さすがは天下の森の聖女様ですねぇ。ユーモアのセンスもあるんですかぁ?  おもしろいなぁ。でも、伯爵令嬢の身分を奪われて平民として追放されたあなたが言うととても心に響きますねぇ。それに聖女様なんて言っても、本当は傾国の美女じゃないんですかぁ? 私のフィアンセの側近中の側近を篭絡ろうらくしちゃうんだから~本当に悪い女ですよねぇ、ルーナ閣下ぁ?」


 ※


 そんな暴言をはじめて会った私に投げつけるくらいの性格なのだから、婚約破棄なんてされたら自分から死を選ぶかもしれない。


「なに、私は投資家ですよ。損が出た時は、きっちりあきらめた方が最終的な損害は少なくなります。それが投資の基本です。あきらめずに撤退できないことが一番愚かなことです。それに会社の経営に深く関与しているわけではないですからね。私が捕まることはありえない。あなたたちも私を捕まえることはできないでしょう?」


「……」

 たしかに捜査はこれ以上の進展は望めないわ。


「ならば、ここで手打ちにするのがお互いのためですよ。あなたたちも無駄な労力をかなくてすむでしょう?」


 怪しすぎる。今まで自分のために利用していた利権をこんなに簡単に手放したら宮廷政治で勝てるわけがない。


 つまり、この港湾利権を手放しても問題ないくらいの新しい利権を手に入れたということか。


 まさか……


 私が一つの結論に達した時、彼から連絡がきたわ。


『ルーナ知事。会談中に失礼します。アレン様から魔力通信が来ていますが』

 秘書課長が私にそう伝える。


「わかりました。子爵、急ぎの連絡ですので少し席を外しますね」


「ええ、どうぞ」


 ※


 私は通信室でアレンと話す。


「ルーナです。アレン、グラン海賊団の本拠地の様子はどうですか」


「ああ、今強襲したが、本拠地にいたはずの海賊団の残党は何者かによってみんな殺されていたよ。保管されていたはずの財宝もほとんど持ち去られていた」


「わかりました。今、こちらにカインズ子爵が来ているので詳細は帰ってきてからで」


「なるほど」


 これではっきりしたわ。カインズ子爵が捜査に対して何の妨害もしてこなかった理由がね……


 あの人は口封じで海賊の本拠地を襲い、小国の国家予算に匹敵するであろう海賊の財宝を奪い去ったということか……


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