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第69話 子爵

 港湾公社の強制査察は大成功に終わったわ。コルテス家の息がかかった港湾公社の幹部は軒並み不正に関与した疑いで逮捕できた。コルテス家の関連企業にも今回入手した不正の証拠をもとに一斉捜査をかけた。


 すでに関連会社にも大量の逮捕者を出している。

 後は本丸を落とすだけ。


 だけど、コルテス家もバカじゃないわ。あの関連企業にはコルテス家本家の人材は弟のエル=コルテス以外派遣されていなかった。そして、私と知事選を戦った弟は変死を遂げている。港湾公社から見つかった書類のほとんどもすでにこの世にはいないエル=コルテスがすべての首謀者にされていた。


 ロヨラ副知事は天をあおぐ。

「やはり、巧みな保身術ですね。カインズ=コルテスは……」


「そうですね。どんなことがあっても追及は、この世にいない弟までで止まるようになっている」


「いざとなれば弟を暗殺して追及を逃れるように準備していたと考えた方がいいのでしょう」


「なるほど、つまりこの状況はすべてあの人の想定内ということですね」


「しかし、この財源を失うには痛すぎるはずですよ。クルム王子の婚約者の父親と言う立場もあります。絶対に何かあるはず……」


 しかし、そのなにかは見つけることができなかったわ。何を考えているの?


『知事、大変です。急な面会の依頼が……』

 秘書課長がドア越しで大きな声をあげた。

 アポなしの面会は基本的に受けないはずなのに……わざわざ秘書課長がこちらに来て私を呼び出すということは、相手は相当、大物だ。


「誰が来ているの?」


『それが……』


「大物ね? このタイミングなら、きっとあの人か……」


『はい。カインズ=コルテス軍務省法務局長です。たったひとりでこちらに乗り込んできました』


 やはりそうか。敵側の大将が直接乗り込んできた。


「応接間にお通しして。私とロヨラ副知事でお相手するわ」


『わかりました』


 私たちは目配せして立ち上がった。

 

 ※


「これはこれは知事と副知事両名がいらしてくれるとは……ご無礼を詫びねばなりませんかね?」


 カインズ子爵は柔和な笑顔で握手を求めてきた。これが私利私欲でこの地方を大混乱に陥れた大悪魔なんて思わないくらいの素敵な笑顔だったわ。


 私は握手を拒否して話を続ける。


「我々に遠慮は不要でしょう? 単刀直入に聞きます。何が目的?」


「取引をしようかなと思いまして。いや、取引ともいえないな。これはキミたちに一方的な利益になるんだからね」


「どういうこと?」


「私はすべての港湾利権を手放す。会社もすべて解散させる。キミたちの勝利だ」


 男は不敵に笑った。

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