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第62話 救出

「ルーナ怪我はないか?」

 賊たちをなぎ倒したアレン様は私に駆け寄ってくれた。ほとんどの敵は魔力攻撃で倒れている。抵抗した海賊は斬られて倒れている。


「おのれ、許さんぞ。ルーナ=グレイシア!! せめてお前だけでも地獄に送ってやる!!」

 運良く攻撃を逃れた港湾部長は剣を握って私に突撃をしてきた。


 ファントムの兵士たちが魔力で射殺しようとするが……


「やめろ。やつは今回の事件の重要参考人だ。殺すな。俺が捕縛する」


 アレンが私を守るように立ちふさがり、男に向かって剣を抜いた。


「剣を抜く覚悟も決意も足りないな。まるでシロウトだ。死なない程度に教えてやるよ。私の婚約者をあやめようとしたむくいというものをな」


 アレンの剣は男の剣を簡単に叩き落とした。それでもなお抵抗する男を黙らせるために、一刀を振るう。


 男の右腕は斬撃ざんげきによって簡単に切断されてしまう。


「ぎゃあああ」

 男は苦しそうに悲鳴をあげて地面に転がった。それでも必死に剣を拾おうとする港湾部長に対してアレンは悲しそうに見つめていた。


「殺してやる。殺してやる。あの女の顔もボコボコに殴ってやる」

 そう言いながら剣を拾うとする男の顔面に向かってアレンは拳を振り下ろした。


「ひぃ。痛い。やめてくれ。降伏する。助けてくれ」

 男は口の中が切れたのか口から血を出していて痛々しいものになっていた。


「誰の顔をボコボコにするんだよ。重要参考人でなければ、ここで叩き切っていたところなんだがな。誰か止血してやれ。こいつが今回の反乱の首謀者のひとりだ」


「反乱なんてしてない」


「認識が甘すぎるぞ。海賊を引き連れて、地方庁のトップを暗殺しようとした。これを反乱と呼ばなくて何と言うのだ?」


「俺は海賊に脅されて」


「それは裁判所で言え。多分通用しないと思うがな。おい連れて行け」


「くそがァ」


 兵たちが港湾部長を連行していく。


「グラン海賊団船長は見つかったか?」

「いません。どうやら逃亡した模様です」


 兵士は倒れた海賊たちの検分をしていたが、グラン船長は見つからなかった。


「よし、ならば市中のどこかに逃げたな。引き続き市内で暴れている海賊たちの制圧をおこなうぞ」


「了解!」


「誰かルーナを中央病院に連れて行ってくれないか?」


「それは司令官しかできないでしょう。ふたりで楽しい空の旅を!! 我らは残党狩りに行ってきますから」


「あんまりからかうなよ。わかった。船長はできる限り生きたまま捕らえろ。だが、隊員の安全を第一だ。俺もルーナ知事を護送したらすぐに戻る!」



 私はアレンに抱き留められながら空を飛び病院を目指した。いわゆるお姫様抱っこみたいな形で抱きかかえられているから少し恥ずかしい。


「助けてくれてありがとう、アレン。私はいつもあなたに助けてもらってばかりね」

「それが私の願いだからな。間に合って本当に良かった」

「すごい装備ですね、背中のそれは……空中浮遊魔力なんてあまりにも魔力消費量が多くてこんなに長く飛べるはずがないのに……それにすごく速い。この装備は空を飛ぶのを助けてくれているんですね」


「ああ、そうだ。軍事機密の塊だから詳しくは言えないけど、少ない魔力消費で大きなエネルギーを作り出してくれるんだ」


「宰相閣下には最初からスカウトされていたんですね? クルム王子の陣営を抜けた後ですか?」


「ああ、表向きは軍を辞めるからちょうどいいらしい。私は、秘密部隊の航空魔道騎士団"亡霊ファントム"の司令官だ。軍事機密だから今まで内緒にして申し訳ない」


「そうですよね。アレンほどの優秀な軍人を元老院議員だけにしておくのはもったいない。宰相閣下は自分の直属部隊を任せることであなたを味方に引き込んだんですね。だから、私たちの後ろ盾になってくれた?」


「ああそうだよ。何事も貸し借りだからね。かなり魅力的な提案だった。クルム陣営を抜け出して、キミを守る力だって手に入ったんだからね」


「だから、たまに王都に出張に行っていたんですね?」


「うん」


「よかった」


「えっ?」


「実は、もしかしたら私に魅力がなくなっちゃったんじゃないかななんて……少しだけ心配していたんですよ? だって、私……一度、婚約者に捨てられていますから……」


「不安にさせてしまったね」


「大丈夫ですよ。不安はちょっとだけですから。アレンは、絶対に私を裏切らないと信じているんです」


「ありがとう」


 そう言うと私たちは口づけをする。空には私たち以外、誰もいない。

 だから、誰にも邪魔されることなく私たちは愛を確かめ合う。


 これで好きになるなと言うのが無理よね。何度も私の命を救ってくれた最強の騎士に恋をしない女の子なんていない。


「アレン?」


「何だい?」


「私、たぶんあなたが思っている以上にあなたのことが好きみたいですよ」


「ずいぶんと嬉しいことを言ってくれるな」


「だから、ずっと一緒にいてくださいね。アレンだけが肉親をすべて失った私に残された最後の希望なんですから?」


「ああ、剣に誓うよ。俺はキミのことを永遠に守る」


 そして、私たちは二度目のキスをする。

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