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第56話 海賊団

「知事、前線から報告です。海賊船が見えました。数は4隻です」

 地下の会議室に緊張感が走る。まだ、避難はすべて終わっていなかった。やはり大都市の住民を2時間で全員避難させるのは現実的に無理か。


「やはりグラン海賊団なの?」


「はい、海賊旗から判断しますとその可能性が高いようです。シッド准将からは射程に入った場合は先制攻撃の許可を求めております」


「向こうから何か要求とかはないの?」


「特には……相手は犯罪者です。こちらが要求にこたえるわけにもいかないでしょう」


「そうね。少しでも時間を稼げたらと思ったんだけど……致し方ないわ」


 私は政治家として最も重要な選択肢を迫られた。


 選択肢は二つ。


・できる限り攻撃を遅らせて戦闘を避ける。そして、住民が避難する時間を稼ぐ。


・こちらから先制攻撃をして敵船にダメージを与えて市街地に対するダメージを可能な限り低くする。


 この2つ。防御陣地にある大砲とあの海賊船に搭載されている大砲の射程はほぼ同等だと准将は言っていたわ。しかし、こちらの方が大砲の玉の準備は多いはず。こちらは一応正規軍だからね。また、波などもあって攻撃の精度はこちらが勝る。だから、海賊船はできる限り海岸線に近づいて射撃したいはず。


 准将の部隊が先に攻撃した方がはるかに有利なのはわかっている。


 でも、こちらが先に攻撃してしまえば海賊船も死に物狂いになって撃ってくるはずよ。でも、相手の射撃精度は低い。つまり、敵の大砲がどこに飛んでいくのかはわからないわ。それが避難民に直撃する可能性だって低くはない。


 でも、様子を見るデメリットももちろんあるわ。

 それだけ海賊船が近づけば賊がバルセロク市に上陸してしまう可能性が出てくる。


 その場合は市街地で略奪が発生し地獄絵図が生まれるだろう。


 つまり、どちらにしたって被害は免れない。


 ならば、私は少しでも被害が減らせる可能性がある方を取るべきね。


 責任者は私だ。ここではすべての責任が私に降りかかってくる。だから逃げるわけにはいかない。


 私は准将たちを信じている。准将はここで開戦すべきだと判断した。彼は優秀な将軍。私も偶発的な流れ弾よりも海岸線に近づかれて賊に暴れられることのほうが恐ろしいとよくわかっている。


 目を閉じて深呼吸した。


「准将に連絡を。攻撃を許可します。賊を排除してください」


 会議室は私の言葉に息をのんだ。

 ロヨラ前知事が頷いている。


「さすがの判断です、知事。私はあなたの決断を支持いたします」


 そして、攻撃は始まった。


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