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第52話 決断

 その後の1週間はまるで風のように過ぎていったわ。

 私たちは忙しく毎日を送っている。


 知事になったことで読める各種資料の読み込みや職員の人たちの打ち合わせ。それからたくさんの決裁書類。目が回るような忙しさ。


 それにもやっと慣れてきて、運命の日がやってくる。

 本当はアレン様たちとも打ち合わせをしたかったんだけど、彼は元老院議員としての仕事のために王都に出張中。


 だから、私はクリス男爵くらいしか味方がいなかった。彼が副知事になってくれてよかった。2人の副知事がどちらも空席だったらと考えるだけで恐ろしいわ。


 男爵が口を開く。私たちは知事室で彼が来るのを待っていた。

「ルーナ様。いよいよですね」


「ええ、今日が私たちの運命を決める日です」


「もし、ロヨラさんが副知事を受けなかったらどうするんですか?」


「その場合は実務に長けている総務部長経験者の中から私の考え方に共感してくれる人に打診します。すでに秘書課長にお願いして候補者をリストアップしていますから」


「水面下では我々に対する批判が出てきていますからね。もう一人の副知事を任命できないのは、ルーナ様が中央と仲が悪いせいで各所に圧力をかけられているからだとか噂されていますよ」


「皆さん、噂が好きで困ったものです」


「しかし、このまま噂が広がればあなたの指導力を問われかねない。できればここで決めておきたいものです」


「わかっています。だからこそ、ここで彼を口説き落します」


 知事室の扉が鳴る。来たわね。

 ロヨラさんがゆっくりと部屋に入ってくる。


「ようこそ、お越しくださいました、ロヨラ前知事」


「前回は私の家まで来ていただきましたからね。今回は私から来るのが筋というものです」


「ありがとうございます」


「この知事室にまさか1週間で戻ってくるとは思いませんでしたがね」


「お茶を出しますね」


「いや、結構です。時間が惜しいでしょうから単刀直入に言わせていただきます」


 その言葉を聞いただけで私は察してしまった。お茶が要らないということは、長話する必要がないということね。もしオファーを受けるならばこの部屋でいろいろな打ち合わせをする必要がある。長居するつもりがないということは、私の提案を拒絶するということ……


 悔しいわ。


「残念ですが、ルーナ知事。私はあなたの提案をお受けすることは――」


 拒絶の声を聴く前に、秘書課長が慌てて部屋に入ってきた。


「どうしたんですか、秘書課長。大事な打ち合わせ中ですよ」


「申し訳ございません。しかし、一大事ですのでご容赦ください!!」


 私たちは任期1週間で危機的な状況に直面した。


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