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第50話 罷免

「何を言っているんですか?」

 港湾部長は顔に青筋を立てて私をにらみつけた。


「あなたを罷免すると言ったのです」


「何をバカなことを言っているんですか? 私を罷免することの意味が分かっているんですか。あなたにはそのような権限はない!!」


「イブール王国地方自治法にはこうあります。第68条、知事は地方庁の人事を司る。また、知事は課長級以上の幹部を任意に罷免することができる」


 私はずっと勉強していた法律の知識を叩きつけた。


「そんな机上の議論はいいのです。私はいわばコルテス家の名代みょうだい。そんな私をクビにするということは、地方庁とコルテス家――ひいてはクルム第一王子陣営との開戦の火ぶたを切るのですぞ。ただの地方庁が中央の王族に勝てるわけがない。あなたのクビだって飛びます。意味が分かっているのですか?」


「あなたが仕えるべきは、地方庁ひいてはこの地方の住民であり、王族や一貴族家ではありません。勘違いはなはだしいのはドン・キホーテ港湾部長、あなたです。私は有権者の支持によってのみここにいます。よって、あなたが越権行為をすることを見逃すことはできない。私は自分の責任のためにもあなたの言動を見逃すことはできません」


「そんな青臭いことのために私のクビを――」


「あなたが青臭いと言っていることが政治の基本なんですよ。その基本が守れない人がどうやって民を守れましょうか?」


「おぼえていろよぉ。ルーナ=グレイシア。その決断の代償は、お前の血で償わせてやるからな」


「あなたのその勘違いした全能感が道を踏み外させたんですよ。どうしてそれがわらないんですか?」


「くそがああぁぁぁぁあああああ」


 そう言い残してドン・キホーテは会議室を出ていった。


 もうあの陣営には宣戦布告をしているからあまり変わりはないんだけどね。


「お騒がせしました。それではみなさん会議を再開しましょう」

 私は目を閉じて何事もなかったかのように幹部会議を再開した。


 ※


「すげえな、あの知事。まさか最初の会議で港湾部長のクビを切ったぞ」


「さすがは追放されてから1年で知事にまで返り咲いた手腕と度胸だな。ロヨラ知事すらできなかったあの聖域にメスを入れやがった」


「あの美貌びぼうでかわいいだけじゃないんだな。さすがは傑物と呼ばれるクルム第一王子の元婚約者だ。政治手腕は王子に匹敵するんじゃないか」


「いやわからないぞ。このあとの中央の妨害にどうやって対抗するか見てみないと……」


「だが、あの度胸だけは本物だ。森の聖女なんて軽々しく呼べないな。あれは鉄の聖女だ」


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