第47話 初登庁
そして、私たちはバルセロク地方に帰ってきた翌日に地方庁に登庁した。
職員の人たちが総出で出迎えてくれる。
「おめでとうございます。ルーナ知事!」
代表の方に花束をもらう私。
「ありがとうございます」
私は笑顔で返す。一応、みんな形だけは祝福してくれているわね。
「あれがクルム第一王子の元婚約者様か……」
「綺麗な人だな」
「でも、あの人が知事になると俺たち大丈夫かな?」
「今はあの人平民だもんな。中央政府とか保守党ににらまれた予算減るだろ、絶対……」
「そうよね。それもあの人は少数政党だからな」
そんなうわさ話が聞こえてくるわ。これが職員の人たちの本音よね。
前途多難。でも、実績を作って信用を勝ち取っていくしかないわ。
「それでは、知事。職員に挨拶をお願いします」
私はうながされて演台にのぼる。
「えー、新しくバルセロク地方知事に就任しましたルーナ=グレイシアです。正直に言いますと、私は今までの知事と比べて地盤も財力もなにもありません。ですが、知事になったことで私は大きな財産を得ることができました。みなさんと出会えたことです。ここにいらっしゃるのはバルセロク地方のなかでも指折りの専門家たちだと聞いております」
信頼を勝ち取るためには誠実さが大事。
私は言葉を続ける。
「そのような優秀なあなた方と一緒に仕事ができるというのはとても光栄なことです。今後は一緒にバルセロクのために奮闘していくために、私たちはお互いを良く知る必要があります。信頼関係がなければこの先の難題解決も望めません。身分や役職を問わず気軽に知事室に来てください。私はあなた方に助けていただかなければ何もできないのです。できることを誠実に実行していく。私はその責任を取るためにここに存在します。なにかあればすぐに話し合いをしましょう。以上です」
私が頭を下げると拍手が起きた。よかった、ちゃんと伝わったみたいね。
スピーチが終わった後、40歳くらいの男性が私のもとにやってきた。
「すばらしいスピーチでした。それでは知事。知事室に案内します。申し遅れましたが私は秘書課長を務めるグラントと申します」
秘書課長。それは役所の中でも将来の最高幹部候補が就任する重要ポストね。どの役所でもエース級の職員が選ばれる。温和そうなひとだけど、相当なキレモノということね。
「よろしくお願いします。グラント課長。最初は何を処理した方がいいでしょうか?」
「知事、まずは副知事を2名選任しましょう。候補となる有力者のかたはリストアップしておりますが……」
「副知事は……」
私は意中の相手の名前を口に出す。




