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第46話 暴走する覇道(王子視点)

ークルム王子視点ー


 俺は部屋に帰ってくるとワインをグラスに注ぐ。そして、それを一気に飲み干した。


 アルコールによって胃に熱を感じる。高い酒のはずなのに、うまくない。ここのところ忙しくてまともな食事もしていなかったからかもしれない。


 ルーナたちのことを思い出すと、イライラがこみ上げてくる。


 どうしてあんな捨てた女のことに俺は執着しているだ。アレンもだ。俺は基本的に人を切り捨てても他人に切り捨てられたことはなかった。めかけのこどもとはいえ、才覚で周囲を黙らせてきたんだ。


 にもかかわらず、あいつらは俺との対立を避けない。いやもしろ避けようともしない。俺など通過点にすぎないようなことを言い放ちやがった。


 くそ、くそ、くそっ!


 人生でここまでバカにされたことはない。


 ※


「お言葉ですが、手足を切り捨てていけば頭もいつか死にますよ。あなたの考え方はいつか国を滅ぼします。臣下を守るためにあなた方は全力を尽くさなくてはいけないのです。それが逆転してしまえば、あなたたちに未来はない」


「そうですか。では、言わせていただきます。私たちはこの国に住むすべての人たちのために政治をさせていただきます。それ以上でも以下でもありません」


「私は一度死んだ身です。もう何も怖くありません。それに、殿下は私を何度も殺そうとしたのではないですか? でも、結果はどうですか? 私はこうして表舞台に戻ってきた。これだけでもはっきりします。いくら高位な身分を持っているあなたでも必ず思い通りになるとは限らない。あなたに私たちは殺せない」


 ※


 ルーナの言葉を思い出すと虫唾むしずが走る。あいつは俺にまるで勝ったかのような発言をしていた。あいつの生殺与奪の権利なんて俺が持っているのに……


 こうなったらわからせてやるしかないな。あいつらには絶対に後悔させてやる。


「ゴラン副騎士団長を呼べ」


 ゴランはアレンの後任だ。


「ここに」


 こいつはアレンほどの理想主義者ではない。

 むしろ現実主義者だ。


「グラン海賊団を動かす」


「標的はもちろん、バルセロクですね?」


「ああ、ルーナの権力基盤はまだ脆弱だ。ここで騒動を起こしてあいつを引きずり下ろす」


「……」


「反対はしないのか? てっきり、民の命を犠牲にするから考え直せくらいは言われると思ったが?」


「覇道の前にちっぽけなヒューマニズムなど意味がありません。わずかな犠牲を払い大義を追い求めるのが殿下の目指すべき道かと?」


 おもしろい。ならば、進むとしよう。


 俺の覇道を!


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