表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/135

第44話 就任式

「宰相閣下。私は、ずっと……」


「わかっている。アレンはよくやってくれた。キミのご両親の名誉回復についても私が全力を尽くそう。さあ、今日はキミの晴れ舞台だ」


 そして、就任式が始まったわ。私と同一日に選挙があった他の地方の知事も参加している。


 宰相様が主催する式だから国王陛下は不在だけど、その他の政府の要人たちは勢ぞろいしている。


 バルセロク地方の序列は地方の中でも2番目だから一番最初に名前を呼ばれたわ。


 私は国王陛下の代理である宰相様に一礼する。


「ルーナ=グレイシア。なんじをバルセロク地方知事に任命する」

 宰相様は厳粛に式を進める。


 さきほどの言葉にはとても勇気づけられたわ。中央にも私を気遣ってくれる人はいる。だから、バルセロク地方をもっと発展させていかなければならないわ。


 私は緊張しつつも任命書を受け取った。


 ここにバルセロク地方知事として私が正式に就任したわ。

 さあ、ここからが本当の戦争ね。


 ※


 そして、式が終わり立食パーティーの時間になった。

 私も参加者の形ばかりの祝言を聞き流していた。こういう場所で私に近づこうとする人たちなんてなにかしらの利益を求めている人ばかりだもの。海運の要衝のバルセロナ市で事業をしたいから便宜を図って欲しいとかがほとんど。


 お酒も入っているから適当に流すわ。


 だまそうとしている人ばかりだもの。そんなの婚約者時代から変わっていないわ。


「ちょっと、通してください」


 人の波の後ろで男の人の声が聞こえた。


 その声に観衆たちが悲鳴のような声を上げ始めた。


「なんであのお方がここにいるんだ!?」

「まさか、元婚約者に会いに来たのかしら?」

「すごい。まるで演劇みたいね」


 ああ、ここで来るのね。いつかは接触してくると思っていたわ。でも、まさかこんなに早く会いに来るなんてね。


「これは、クルム殿下。ご無沙汰しております」


 元婚約者が笑顔で立っていた。今までずっと代理戦争をしてきた王子がついに私と直接対決ね。


「ああ、今回はバルセロク地方知事就任おめでとう、ルーナ? キミが生きていてくれて本当に嬉しいよ。今日はそれを言うためにここまで来たんだ」


 会場の人たちにとっては感動の再会のはずね。でも、まさかこの腹黒王子が自分の失敗を全部私たちになすりつけて追放した上に秘密裏に暗殺しようとしていたなんて思わないでしょうね。


 それなのにあたかも私を心配していた優しい婚約者に変身して感動の主人公になろうとしている。選挙のときだって私のライバル候補を応援して、あわよくば私を亡き者にしようと暗躍していた男が……


 今はこうして私の前で友好的に笑っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ