第41話 復権を狙う王子
―元老院・保守党院内幹事室―
「クルム王子、院内幹事就任おめでとうございます」
「うん」
秘書は無邪気に就任を褒めたたえる。
たしかに保守党ナンバー4の院内幹事にこの若さで就任したんだ。異例の人事だろうな。
いくら宰相代理とは言え、閣僚ではない。よって政権内に発揮できる権力は高い役職だが、序列は低い。
院内幹事は序列は高いが雑務で政権内からは遠ざけられてしまうから事実の左遷だが……
まあ、いい。ここでしかできないことをすれば権力を強めることができるはずだ。暗躍させてもらう。
「クルム院内幹事! カインズ軍務省法務局長とリムル国務省情報局長がお越しですが?」
来たか。
「通してくれ」
アレンがいなくなった後、俺の側近はこのふたりしかいなくなった。
「殿下、弟がご迷惑をおかけしました」
カインズ=コルテスは第一声でそれを言う。
「ああ。だが、うまくいったのだろう? 情報局もご苦労だったね。すべてうまくいったよな」
リムルが震えながら話す。
「はい、殿下。情報局からすべてのメディアに圧力を回しました。警察も含めて今回のエル=コルテスはテロの被害者ということで結論を出しています。我々の陣営にも一定の同情が集まっているので被害は軽微かと」
くそ。この俺が同情されているだと。屈辱だ。だが、最低の被害に抑えるためにはこれしかなかった。
「子爵にも辛い役割を押し付けてしまったな。すまなかった」
俺は一応謝罪する。あくまで儀礼的な意味だ。
「いえ、こちらの不手際でした。殿下にご迷惑をおかけして申し訳ありません」
まさに鉄の男だな。自分の手で弟を殺しておいてここまで冷静とは……
「婚礼の方の準備は任せる。喪に服すために延長が必要だろうがな」
「御意」
こんな男が側近兼外戚となってくれるのは頼もしい。エル=コルテスの残した巨額の遺産と利権も同時に掌握できた。
ここに左遷された以外は順調だ。俺はこのポストで復讐のための準備をする。叔父上である宰相とアレンとルーナ。こいつらは絶対に許さない。
「リムル。協力してほしい」
「はっ! 次は何をすればよろしいでしょうか?」
「俺が保守党内で地盤を固めるための準備を手伝って欲しい」
「といいますと?」
「院内幹事は、保守党所属の議員が活動するために必要な補佐をする立場だ。だから、情報は集まりやすい。議員からの要望も集まりやすい。それを活かす。リムル、要望とはなんだ?」
賢い情報局員ならここまで言えばわかる。
「なるほど。借金の無心や女性トラブルなどやっかいなものを公表される前に潰して借りを作ったり脅したりして奴隷を増やすということですね」
「ああ。まずは派閥を作る。数は力だ」




