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第40話 アレンから見たルーナ

―アレン視点―


 僕の婚約者は美味しそうにケーキを食べている。

 彼女とこうして美味しいレストランでディナーができるなんて思わなかった。


 僕の恋心は叶うはずがないものだった。

 近衛騎士団の副団長といえば聞こえはいいが、実際の爵位は田舎貴族の末子ということで騎士ナイトという低いものだ。それに対してルーナは伯爵令嬢。地方長官や大臣すら輩出可能な名門の次期当主に対して、俺はあくまで護衛のひとり。


 さらに主人であったクルム王子の婚約者。恋することすらおこがましい身分差の恋が叶ってしまった。届かないはずの恋心が届いてしまった。


 そんな奇跡が起きたんだな。


 だからこんなに不思議な気持ちなんだ。嬉しくて……でも、彼女の身に起きた不幸に憤って……だから喜びたいのに喜べない。


 これが現実だと分かっていても信じきることができない。


 まさかこの歳になって思春期みたいな気持ちになるなんてな。


 英雄と呼ばれたアレン=グレイシアはここにはいない。

 ただ、恋人への距離感に悩む情けない男だ。


「このケーキとても美味しいですね!」


 悩みも吹っ飛ぶほどのルーナの幸せな笑顔を見ることができる幸せだけが唯一の救いだ。


 この笑顔をもう奪わせない。

 たとえ恩義があるクルム王子ですらこの笑顔には代えることはできなかった。


 たとえ世界がすべて敵になろうともルーナのことだけは守る。

 クルム王子がルーナにしたことは絶対に許さない。


 あの賢く冷静なルーナが馬車で「誰か助けて」と泣き叫んだ。その叫びに対して、「わかりました」と即座に応じることができたことが僕の人生の最大の功績だと思う。


 たとえすべての地位を失うことになったとしてもあの瞬間の決断は間違っていなかった。


 この瞬間に自分を導いたのだから……


 ※


「やれるものならやってみなさい。その程度の魔力で私たちの理想は崩せないわ!」


「言っただろ。姫を救わない騎士なんていないってさ」


「愛する人を目の前で奪われては、カステローネの英雄の名が泣くさ」


 ※


 あの時のようにルーナは今後危険な目に合うかもしれない。だが――


 彼女に指一本で触れさせない。どんなことがあろうとも俺が彼女を守る。あの瞬間から俺はずっとそう誓っている。


 この幸せな瞬間を全力で守る。そして、彼女と共にこの国を……世界を変えてやる。


 仕えるべき聡明な主君を見つけることができた俺はすべてをかけると固く決意をしながら幸せそうにデザートを食べる彼女を見つめていた。


 今日はお姫様を連れ出して本当に良かった。


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