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第111話 解放

 クリスタル川付近で発生した戦闘で、アレンがオリバー公爵を討った。その一報が地方庁に届くと私達は張り詰めていた緊張感を解くことができた。


 クーデター軍は、トップを失い壊滅。クーデター軍のナンバー2であるリバーサイド伯爵が指揮を引き継いだが、挟撃される形で降伏した。


 ファントム隊の戦闘力は本当に高い!

 今回の戦争では大活躍してくれた。クーデター軍の敗北で、雪崩を打ったように、ほかの地方も私たちへの支持を表明してくれている。王都のクーデター軍残党も降伏の意思を示している。完全に勝利ね。


 降伏交渉がこのままうまくいけば、王都の無血開城も可能。政府首脳と元老院議員のほとんどは無事を確認されている。フリオ閣下も大丈夫らしい。


 でもね……

 クーデター発生時に抵抗した軍人や議員に犠牲者はでているそうよ。まだ、被害の詳細はわかっていないけど……


「殿下、ルーナ様。王都に残るクーデター軍ナンバー3のグラント大佐から魔力通信が入っています」

 グラント大佐は、比較的に理性的な軍人と知られているわ。オリバー公爵の側近中の側近だからクーデターに追随せざるを得なかったと分析されている。彼が王都の責任者として指揮を執っていることは、こちらとしても安心感がある材料だった。


「つなげて」


 知事室のモニターには、グラント大佐が映し出された。


「こちらは、イブール王国王都総督グラントです」

 彼は一応、王都の総督になっていたようね。すでに自称イブール王国国王は敗死し、参謀総長であるリバーサイド伯爵は捕虜となった。つまり、彼がクーデター軍の暫定的な代表。


 私が、彼と交渉をする。最後の交渉になるかもしれないわ。


「大佐。これ以上の抵抗は無理です。すでに、そちらの大部分は壊滅しておりますし、他の地方庁と各軍団は我々臨時政府を支持しております。これ以上、同じ国民同士で血を流すわけにはいきません。速やかな武装解除と人質の解放を……」


 大佐は、その言葉を聞いて頷いた。


「ええ、そうですね、ルーナ知事。あなたの言うとおりだ。我々は完敗しました。無益な戦闘はこれ以上望まない」


「では……」


「現時刻をもって、人質を解放します。すでに我々の指揮下の兵は武装解除を進めております」

 よかった。これで無意味な内戦は終わる。


「ありがとうございます。あなた方の身の安全の保障はこちらで責任をもって……」


「私のそれは必要ない。部下たちのことを頼みます」


「まさか……」


「ルーナ知事。私個人としては、あなたのことを高く評価しています。今回はお互いに不幸なめぐりあわせで敵になってしまった。それが残念でならない。あなたは、クーデター後の王国でより重責を担うことになるでしょう。我々の思いを受け継いでほしい。我々は国を良くするために、立ったのです。オリバー様の思いだけは本物でした。手段が悪すぎましたがね……止めることができなかった私たちの側近の責任でもある。部下たちは、私の指示に従ったにすぎません。よって、これ以上の責任追及はなさりませぬように、お願い申し上げたい」

 声だけで彼の気持ちは伝わった。


「早まってはいけません、大佐!」

 でも、物理的に離れたこの状況では何もすることはできない。


「王国、そして、革命万歳!」

 そう短く言い残し、魔力の発動音が響く。彼の体はゆっくりと床に崩れ落ちていった。


 こうして、王都防衛師団の反乱は終わりを告げた。

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