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第103話 英雄vs荒剣

 猛烈な攻撃が俺を襲う。少佐がなんとか王子を確保していた。これで戦略目標はクリアだ。あとは、ここから逃げ出せばいい。問題は、このヴォルフスブルクの荒剣をどうやって煙に巻くのか。


 さらに、クーデター後に備えてこいつを殺してはいけない。自分と設定して規制がかなり重くのしかかる。


 あまり持久戦をしてはいけない。一撃で決める。


 俺は、背中の魔力増強装置にを稼働した。

 この魔力アイテムのおかげで、ファントムは空中を自由に移動できる。魔力を増強し、放出することで空中移動が可能になっている。その場合は、魔力を地面に向かって放出しているんだ。


 ならば、地面に向かって平行に魔力を噴射すればどうなるか? 高速移動が可能となる。ただし、これはかなりリスクが大きい。体にかかる負担は、空中移動の比ではない。加減を間違えれば、障害物に激突すれば大きなダメージを負うことになる。


 できるのは一度きりだ。失敗は許されない。敵の全力攻撃を誘発させて、カウンター時に仕掛ける。


 そのために、俺はあえてスキを作った。達人は絶対にそれを見逃さない。


「もらったぞ! 不用意だったな」

 相手は、俺に向かって突進してくる。向こうは、俺の次の行動を左右どちらかに避けるか、後ろに引くかのどちらかしか選択肢として考えていないだろう。


 その意表を突く。


 戦場では、奇襲も有効な攻撃手段だ。だが、奇襲が成立するのは、相手に悟られていない時だけ。


 だからこそ、今までの立ち回りは正統派剣士としてのそれだった。

 すべては一撃で荒剣を倒すために。


 俺は、一気に加速した。

 まさか正面から高速で相手も突進するとは思っていなかった奴は、一瞬たじろいだが、すぐに持ち直す。


「おもしろい。それでこそ……」


 だが、俺の動きは相手の想像をはるかに超えるものだった。敵の攻撃は宙を斬り、俺の攻撃が敵の体を直撃する。全身全霊をこめて放たれた俺の一撃を食らい、荒剣は「ぐふっ」という短い声とともに膝から崩れ落ちた。


 平打ちだ。

 回復魔法を施されればすぐに回復するだろう。だが、それまでの間なら余裕で敵の戦闘力を奪う。


 これですべてが終わりだ。


「少佐、脱出するぞ! 殿下を頼む」

 本来は俺が背負って脱出するつもりだったが、戦闘のダメージが大きすぎる。


 先に少佐が外に飛び出た。

 俺も続く。


「見事だ。さすがは、イブールの英雄だな」

 後ろから苦しそうな荒剣の声が聞こえた。


 気づいているじゃねえかよ。こころのなかで、俺はそう言い残し迎賓館から飛び立つ。


 こうして、王子の救出は無事に成功した。


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