084 夢追い人
ドリオ高原のドーリス火山とは、煮え立ち続ける情熱であり、大地のエネルギーの象徴である。
しかし現在はただ燻っているだけである。
これでもまだマシになった方らしいが。
山頂に近づくにつれて何かが腐ったような臭いが立ち込める。
かなりくさい。
なんとか目と鼻を覆いながら進む。
これもジェネスによる襲撃の痕だという。
ガス地帯を抜ければ、まもなく山頂。
その少し手前に小屋があるのだが、そこで誰かが待っていた。
ああ、そうだ。
俺たちを待っていたんだ。
「よく来てくださいました」
北オステルで俺たちを試した男。
なんとなくもう一度会う気がしていたよ。
「貴方、なんですね」
「さあもうそろそろ種明かしをしてもいいんじゃないか?」
「まあまあ。いきなり本題から入らなくてもいいではないですか。まずはちょっとした昔話でもさせてください」
初対面ならそれでいいけどよ、俺たちはもう随分とじらされているんだ。
といったこちらの要望は無視され、男は語り始めた。
かつてここ、オステルの地は戦火に包まれました。
皆さんご存じの通り、セイエナ大戦です。
ですが我々はこう呼んでいます。
あれは『フィナの大戦』だと。
フィナとはこちらの言葉で「終わり」を意味します。
つまり、我々が終わらせた戦いである、と。
疑問に思ったことはありませんか?
なぜセイエナ大陸で始まった戦いがオステルで終わったのか。
世の学者は言うでしょう。
魔族がセイエナに攻めて来なくなったからと、オステルにしか攻めて来なくなったからだと。
しかしそれはまやかしです。
魔族も人間も始めからこの土地を欲しがっていたのです。
この神秘に満ちた土地をね。
「じゃあなんで最初にセイエナ攻めたんだよ」
「あれは別の話です」
「はぁ?」
「分けるべきだったのです。セイエナで起きた大戦とオステルで起きた大戦は全く違うものだと」
話が見えて来ねえ。
「じゃあ別のものだとしようか。一旦ね。俺が聞きたいのは俺たちを呼んだ理由だ」
男は微笑んだ後、南の方に目を向けた。
「まもなく始まるのです。二回目のフィナの大戦が」
俺たちは耳を疑った。
かつて人類の数を二分の一にしたというあの大戦が。
ありとあらゆる都市が破壊され、1000年間文明の進歩が止まったあの大戦が。
今なお多くの傷痕を残しているあの大戦がもう一度起こるというのか。
「冗談がきついな」
「冗談ではない。現にサンドリスが動き出し、誰もいないはずの旧都ロニアに結界が張られている。異常事態だ」
ジェネスが現れ、三大悪神が動き出し、ムーガンは外部との干渉を拒んだ。
ラマーナは燃え、かの大戦で最も悲惨な戦場となったロニアにも動きが現れた。
もうそういう流れが来ているのだろう。
災厄の時代がやってくるのだろう。
「私たちは何としても二度目の大戦が起こるのを防ぎたいのです」
「んで、俺たちの助けが必要だと」
「その通りです。ですから――」
「お断りするよ」
そう発言したのはハイダだった。
「我々はお前のようなよくわからん男の言うことを聞くつもりはない。第一、あんたの言うことが真実なら、オステルは既に動いているはずだ」
ハイダの眼光は鋭かった。
男を警戒しているのがわかる。
いやはや危ない。
実を言うとちょっと浮かれていた。
だってこれだけの実力者を集めて?
大戦を未然に防ぐ?
かっこいいじゃないの。
でも確かに話がうますぎる。
ホイホイと乗ってしまうところだった。
こういう時にハイダのような歴戦の戦士がいると頼もしいな。
「おや、てっきりあなた方のような戦士であればすぐに食いついてくると思っていましたが、残念です。それほどまでに信用されていないようですね私は」
肩をすくめる男。
そういうところが怪しいんだよ。
「正体を明かしてしまいたいところですが、今は時期尚早です。まだその時ではない。ですが私はあなた方と同じ、純粋に夢を追う者なんです。3000年前の人々も同じです。彼らは黄金郷ロニアに夢を見たのです。そして戦った」
急にロマンを語り始める。
まるで詩人のように。
そしてふと腕をあげる。
ぱちんと指を鳴らした。
「是非、あなた方も夢のために戦ってほしい」
しまった。
そう思った時には既に遅かった。
誰よりもいち早く動き出したが、それを止めるには至らなかった。
「では、オリスランドで会いましょう」
次の瞬間、俺たちは砂漠のど真ん中いた。
一瞬の出来事だった。
「今のは?」
「転移魔術だ」
警戒しておくべきだった。
あの男が召喚魔術が使える時点で、転移魔術も扱い得るということを。
にしても高度過ぎる。
この人数をいっぺんに転移させるとは。
並みの魔術師ではないと思っていたが、ここまでとは。
「ところでここは?」
ビルがコンパスを取り出す。
ふうとため息をつくと指をさした。
「あっちが北だ」
その方向には火の星があった。
つまりここは南の半球。
「魔界……ですか?」
えらいところに飛ばされたな、これは。
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ゼオライト 19歳
ギルドランク:第六星
多種多様な魔術を扱う術師。
ティロニアンから指名手配されており、北オステルではゼーラを名乗っていた。
実力者ではあるが、戦い方が少々古臭い。
またなんらかの方法で相手の魔術を奪うことが出来る模様。
要注意人物。
ユナ 21歳
ギルドランク:第八星
大剣を巧みに操る獣人の戦士。
たった三年余りで無名から第八星に上り詰めた実力者。
おそらく全ての武術をある程度まで習得している。
基本的にゼオライトの指示しか聞かないので、単体ではそこまで危険視しなくても良い。
アントン・バアル 25歳
ゲリュオン教会に所属する宣教師。
過去に狩りを行っていたため、銃の扱いには自信があると申告している。
おそらく偽名。
教会の特殊部隊でシバナーシュ出身のアスファンド・レオラだと思われる。
要注意人物。
カリム 24歳
ゲリュオン教会に所属する侍祭。
ラマーナで7年間修業を積んだ経歴あり。
魔術も多少は使える模様。
ハイダ・ラー 52歳
レイブン騎士団の団長。
なおこの騎士団はどの国、貴族にも属していない。
トーラバルトで修業を積んでおり、ティロニアンで分隊長を務めていた過去あり。
闘技大会5回連続ベスト8という輝かしい功績を持つ。
ビル・ライマン 29歳
レイブン騎士団の団員。
現在は脱退しているが元第七星の実力者。
口数は少ないが頭の切れる男。
魔神を一人で打倒した経歴を持つ。
レイド・ラー 15歳
レイブン騎士団の団員。
ハイダの遠い親戚。
双剣の使い手であるが、実力はそこまで高くない。




