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災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第一章:落ちてきた星
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007 オストロルよ、さようなら


 どうも。

 とても元気なゼオライトです。


 まさか昨夜あんなことになるとは思ってもいませんでした。

 後悔は、してるといえばしている。

 ただ、童貞は守らなくては。


 え?

 なぜかって?

 だって童貞じゃないと強い魔術師になれないじゃないか。


「主様。もう行くの?」

「うん」


 今日は少し早めに行こう。

 図書館で勉強だ。


 俺は今やる気で溢れているんだ


「ちょっと待って」


 家を出ようとしたら、ユナに止められた。

 そしてそのままガッチリと顔をつかまれた。


 顔が近づいて来る。


 まさか……


「ちゅっ」

「んんんんんん!!」

「レロ…」


 チューされた

 しかも舌入れてくるやつ


「ちゅっ、ん、ちゅむちゅむ、んあ…」

「んはぁ!」


 変な声でた。


「ユナ、ええと」

「いってらっしゃい、主様」


 いってらっしゃい、って


 ユナは微笑んでいた。

 多分俺は気持ち悪いような、変な顔をしているのだろう。


 なんでこいつ朝からべろちゅーしておいて平気な顔をしていられるんだ。

 これが年上のヨユウって奴なのか?

 あるいは獣人では普通のことなのかもしれない。


「う、うん。じゅあ……」

「あ。あと」


 俺を呼び止めると、ユナは少し顔を赤らめながらこう言った。


「早く、帰って来てね」



 魔術師になる上での一番の障害はユナかもしれんなぁ。



-----



 学校の正門前に着くと、人だかりができていた。

 黄色い声も聞こえる。

 見るとマサキが女子生徒に囲まれていた。


 モテモテだな。


 まあモテるのもわかるぜ。

 俺から見てもいい顔立ちしてるし、あんだけ凄いことができればね。


 っておいおい。

 デレデレしすぎだろあいつ。

 せっかくのハンサム顔が台無しですよ。


「主様ー!」


 うぇ!?


 後ろから聞いてことのある…というかユナの声がした。


「どうしたんだ?」

「主様。忘れ物」


 ユナが渡してくれたのは小さな袋。

 俺の宝物入れだ。


 宝物といっても、珍しい形の石とか古い金貨が入ってるだけだけど。


「ああ。ありがとう」

「うん」


 今日は持ってくるつもりは無かったが、それを言うのは野暮というものだろう。


 ん?


 急に背後から視線を感じた。

 振り返るとマサキと女子生徒たちがこちらを見ている。


「おお。これが獣人……」


 どうやらマサキは獣人を見るのが初めてらしい。

 ジロジロ見るのはいいけど、ちょっと目線がいやらしいなぁおい!


 まあ半裸状態で飛び出してきたユナも悪いので、鑑賞料金は取らないでおいてやる。


 なんて思っていると、マサキがユナに近づいていった。


「君もここの生徒かな?僕と一緒に登校しないかい?」


 そう言いつつ、ユナの手を取ろうとしたが、パシッと払われる。

 ユナは俺の後ろに隠れた。


「マサキ様! おやめください」

「あの獣人は奴隷です。汚らわしいですわ!」


 女子生徒がマサキに呼びかける。

 しかしマサキはそれを振り払ってさらに近づく。


「そんな、奴隷だなんて可哀想に。僕がそこにいる主から解放してあげようか?」


 何言ってんだこいつ。

 ユナは俺のこと多分絶対好きだぞ。

 可哀想とはなんだ。


「そんな服を着て、恥ずかしいだろう?」


 これはユナの好みです。

 僕が着せてるわけじゃありません。


「きゃー! 奴隷にも優しくするなんて素敵ー!!」

「非道な飼い主から助けてあげて~!」


 お前らさっきと言っていること違うじゃねえか!

 自分の意見通せよ!


「僕が非道な飼い主を殺して、君を自由にしてあげるよ!」


 こいつ~!


「はあ。ユナ、なんとかいってやってくれ」


 こいつは何か勘違いしているらしい。

 ユナが一言、「大丈夫です」って言ってくれれば解決するだろう。


「……」

「ユ、ユナ?」


 振り返ると、ユナが鬼の形相をしていた。


「主様を、殺す?」


 やべえ!

 変なスイッチ入っちゃった!


 ガコンッと、鈍い音がする。

 ユナがマサキを蹴ったのだ。


「ぶふっ、ゲホゲホ!」

「キャー! 誰かお医者様を!」


 マサキの口から血が吹き出す。

 相当強く蹴ったのだろう。


「だ、大丈夫ですか?」


 ユナに「待った!」をして、マサキに近づく。


「すみません! うちの使用人が――」

「……てめえ!」


 マサキがこちらを睨む。


 いつの間にか出血が止まっていた。


「この野郎! よくも俺の顔を!」


 マサキが両手を上に上げた。

 そして膨大な量の魔力を使い、一軒家ほどの大きさの火の玉を作った。


 一瞬にして悟った。

 俺を殺す気だ。


「主様!」

「ダメだ!ユナは離れてろ!」


 怒りは俺に向けられている。

 ユナを巻き込まないためにも、俺が正面で迎え撃つ!


「スーパー…!」    /「我が肉は地より産まれ骨は地を食らう…」

「ファイヤー…!」   /「母を崇め乳を吸い岡は山となり…」

「メテオォォォ!!!」 /「君は塔に砦となるかぁ!!!」


 目の前に岩盤が現れた。

 そして凄まじい轟音とともに火の玉が衝突した。


 間に合った!

 しかし…


「ぐおおおっ…」


 凄まじい衝撃が壁の向こうから伝わってくる。

 岩盤も端から徐々に崩れていっている。


 どんな威力だよ。


 このままでは岩盤がもたない。

 岩盤の破片を手に取り、急いで魔法陣を描く。

 「ゼナ式三重魔法防護」。

 これが描ければなんとかなるはずだ。


 間に合え!俺の腕!


 ドンッと下から衝撃を感じた。

 同時に自分の身体が浮くような感覚もする。

 岩盤がじりじりとこちらにずれてくる。


「こ、これは!」


 火が地面を削っているだと!

 いや、ダメだ

 これはまずい!



 次の瞬間、俺の身体は砕けた岩盤の破片に打ち付けられながら、

 宙に浮かんだ。

 そしてそのまま大空へと飛び出した。


「ヴぁかなぁぁぁぁぁ!!!」


 オストロルの街が一瞬にして見えなくなり、辺りが暗くなる。


 星が近い。



 ダメだ。

 これは死んだわ。


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