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災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第二章:蛇王の旅路

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・獣人観察日記 追記


 お嬢様が回復するまで獣人の集落に留まることになった。

 相変わらず俺とは会ってくれないため、詳しい状況はわからないが、イヴ曰く「お前は気にしなくても大丈夫」とのこと。

 こちらに対する気遣いなのだろうか。

 ただ、たまに聞こえる声を聴く限り、順調に回復しているようだ。

 とは言っても、まだまだ時間はかかりそうだが。


 というわけで、こうなった以上獣人の生態を見てみよう。

 基本的なことはユナと暮らしていた時に気付いたことと変わりはない。

 だが、こうやって集落に入らないと分からないこともある。


 例えば、獣人たちの宗教観。

 彼らは神でも自然でもなく、先祖を最も敬っている。

 これには驚いた。

 しかし考えてみれば合理的である。

 今俺が生きているのは父と母がいたから。

 父と母にはまたそれぞれの父母がおり、その上には……。

 とこの様に、俺には数えきれないほどの先祖がおり、誰か一人でも欠けていれば俺は存在しなかった。

 だから最も尊敬されるべきである。

 まあ理解はできる。


 だけど、どうも引っかかる。

 確かに先祖は大事だ。

 エルフの言うように自然も大事だ。

 でもそれはあくまで身体の話だ。

 そりゃあこの身体があるのは先祖のおかげだし、死んだら土に還ることも知ってる。

 俺が聞きたいのはこの魂がどこに行くのか。

 エルフも獣人もそこに一切触れていない。

 それで宗教と言ってよいのだろうか。



 次は身体的特徴についてだ。

 ここには毛深い者からそうでない者までいろいろといる。

 流石に長のようにほとんど獣の獣人は集落にいなかったけどね。

 でも共通点はある。

 皆スタイルがいいことだ。

 スタイルが良いといえばエルフもそうだったが、あっちはどちらかというとスレンダーより。

 こっちはみんな男ならムッキムキ、女ならボンキュッボン。

 しかも自分の武器をちゃんと理解しているし、見せつけてくる。

 まあ半裸だしね。


 だけど、性に対する考え方は厳しい。

 エルフと真反対と言ってもいいだろう。

 男女は同じ階級同士でペアを作るが、同じ階級である限り一切他の者に手を出さない。

 もし浮気しようものなら非難を浴びることになるし、何より相手が許さないだろう。

 ただ面白いのは、自分よりも下の階級の女に手を出すのは浮気に当たらないことだ。

 正妻と妾の関係と同じようなものか。

 人間には理解しがたいが、これも異文化ということで。


 ちなみに階級だが、男女ともに強さと美しさによって決まる。

 強く美しければよい相手とペアになれ、どちらもなければ子孫は残せない。

 完全な実力社会なのだ。



 それに関してだが、いいものを見ることができた。

 ある日ナドと木に登って果実を採集していたところ、岩場の陰にいたペアを発見した。

 ただ並んで座っていたのだが、ナドはひどく興奮しだした。


「ゼオ、よく見とくんだ」


 言われるままに見ていると、男の方が女に何かを渡した。


「あれは、動物の牙ですか?」

「そうだ」


 女はそれを受け取ると嬉しそうな顔をして男に抱き着いた。


「プレゼント、ですかね」

「ただのプレゼントじゃない。あれには「お前との子が欲しい」という意味が込められている」

「それって」

「平たく言えばプロポーズだね」


 あまり特別な感じはしない。

 高い宝石でもなければ、想いの詰まった物にも見えないが。


「ここからはよく見えないが、あの牙はよく研いである。つまり武器足りえるもの」

「武器……。武器を渡すとプロポーズになるってことですか」

「その通り。本当はもっと武器らしいものがいいが、あのカーストならあれで十分だ」


 まあ本人が嬉しそうだからいいか。

 それにしても男が女に武器を渡すことがプロポーズになるとは……。


 ん~?


「ほれほれ見てみろ!」


 冷や汗をかくこちらを無視し、ナドはまだ観察を続けている。

 今度はなんだ。

 ただいちゃついているようにしか見えんが。


「女が男の指を甘噛みしているのがわかるか?」

「ええ。見えてますよ」

「あれはセックスよりも上の愛情表現だ」


 あれが?

 これも特別な感じはしないけど。


「いくら獣人の女といえど、好みでない男に力でねじ伏せられ、性行為を迫られることもある。そして妊娠してしまうこともある。これも自然の摂理と言えるだろう。だが、決して相手に自分の口を好きにさせることはない。もし、相手の指なんかが入るとこがあれば――」


 ガキン。

 ナドは勢いよく噛むふりをした。


「わかるね。獣人の咬合力は半端なものじゃない。指を噛み千切るなんて朝飯前さ」

「怖いですね」

「つまり獣人の女にとって口とは最後の砦。だからあんな風に異性の身体の一部を口に入れることは最上級の奉仕であり愛情表現なのだよ」


 は、はあ。

 聞いてよかったのかな、この話。

 いや、聞いておくべきだったのだろう。

 大変勉強になった。

 誠に『無知は罪』だな。



 と、こんな感じでいい経験となった。

 エルフだけでなく獣人とも暮らすことができるなんて。

 幸運という他ないだろう。

 まあ、あまり相手にしてくれないけどね。



 *ちなみに

 上記の内容はあくまでもこの集落の中での話である。

 当然場所や環境が違えば文化も変わってくる。

 また今回は狼系の獣人の話であって、猫系や有角系となると全く異なる文化になっているそうだ。

 そこは理解しておこう。


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