表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第二章:蛇王の旅路

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/90

061 生まれ持った使命


 目が覚めるとそこは白い空間だった。

 辺りには薄い霧が……。


「ちょ、ちょっと待て!」


 急いで起き上がり、後ろから迫ってきた何者かを止める。

 そこにいたのは、もう説明するまでもなく『あの女』だった。


「あら、今回は何もしないわ」


 これで三度目。

 いや、なんかもうちょっと会っていたような気もする。

 だけどそんなことはどうでもいい。


「あんたは、一体誰なんだ?」


 1回目は奴に吹き飛ばされた時。

 2回目は飛竜の時だったか。

 そして今回、また彼女が現れた。

 状況からしてお迎えに来た天使かと思っていたが、そうでもないようだし。


「それにここはどこなんだ?」

「まあ落ち着いて、ちゃんと全部答えてあげますから、ね」


 そういうと彼女はニコリと笑った。

 優しい笑顔だった。

 ドロップキックやアッパーカットをしてきた人物とは思えない。


「えーと、そうねえ。まず私が誰なのかを伝えた方がいいかな」


 口元に指をあてる。

 見た目はかなり大人っぽいが、ふるまいはちょっと幼稚さがある。


「じゃあ今から発表するわよ。準備はいい?」

「は、はあ」

「私の正体はなんと、もう一人のあなたでした~! パチパチパチ~!」

「……は?」


 もう一人の、俺?

 この女性が?


「つまりあなたは僕と同一人物ということ、でいいんですか?」

「うん、その通りよ。流石ゼオちゃん、理解が早いわ~」

「でも納得はしていませんよ」


 なんで俺がもう一人いるんだよ。

 姿も全然違うし、性格もこんなんじゃないだろ。

 もしかして多重人格というやつか?

 でも今までそんな症状が出たことはないし……。


「そんな難しい顔をしないで。同一人物と言っても、貴方は理性、私は本能だから」

「え、理性?」

「もっと簡単にいうと、私は貴方の身体なの」


 俺は頭を抱えた。

 ごめん。

 もっとわからなくなった。


「えっとねぇ、ほら心臓ってあるでしょ。それって貴方が意識して動かしてる?」

「いや、勝手に動いてますね」

「逆に心臓を止めることはできる?」

「直接は無理ですね」

「でしょ。その貴方が意識しても動かせない心臓を動かしてるのが私なの」


 なるほど。

 確かに自分の身体でありながら、鼓動、消化活動、発汗などは自分で調整できない。

 となれば、一体誰が指令して動かしているのだろう。

 実はもう一人自分がいて、それが私なのだ、と言いたいのか。


「いやぁでも、こんな天使の格好をした人が?」

「へー。貴方には天使に見えているのね」


 ん、どういうことだ。


「とにかく、もうあまり無茶はしないでね。今回は本当に大変だったんだから!」

「ああ、そうですね。えっと、いつもありがとうございます?」

「そうそう。ちゃんと私に感謝してよね。ゼオちゃんが健康でいられるのは私のおかげなんだから」


 自分の身体にお礼を言う日が来るとはな。

 まあ彼女が生きているおかげで今の俺がいるのだから、ないがしろにするわけにはいかない。


「ん? じゃあ今あなたが生きているということは、僕は死んでないんですか?」

「流石ゼオちゃん、察しがいいわね。でも今回はちょっとそういうわけにはいかないの」


 そういうと彼女は指さした。

 そっちを向くと、白い扉があった。

 前の時はなかったよな。


「今、あなたは辛うじて一命をとりとめている。丸二日意識を失っていて、十分な栄養も取れていない。正直、いつ死んでもおかしくないわ」

「今までとは違うと」

「そう。これまでもかなり危ない状況になったことはあったけど、私の力や誰かの治療によってなんとか命は守られていた。でも、今回ばかりはどうしようもなかった。心臓、肺、肝臓などに加えて、ご丁寧なことに胸部大動脈、腹部大動脈、腸骨動脈まで……。一体誰と闘ったの?」


 剣聖様だよ。

 よくもまあそんなピンポイントを突けるね。


「まあ、ゼオちゃんのことだから無理なことしたんだとは思うんだけど」

「それで、何が起きたんだ?」

「何って?」

「それでもギリギリ生きてるんだろ。あの傷じゃどんな治療しても意味がない。ということは、何かが起きたに違いないんだ」


 彼女は肩をすくめた。


「さあ、具体的には分からない。けど確かなのは、何者かが私に対して途轍もない力をくれたということ。そのおかげで何とかここまでこれたの」

「あなたにも分からないのか」

「それは、あなたが目を覚ませばわかるかもしれないわよ」


 すると彼女はくるりと回った。

 白いドレスがひらりと揺れ、小さな風が起こる。

 その風は辺りの霧を晴らした。


「え?」


 俺は白い板の上に乗っていた。

 彼女もだ。

 板の下を覗いてみるも、ただ黒い空間が広がっているだけだ。

 さっきからずっとこうだったのか?


「飛び降りたら、あなたは目覚めるわ」

「ここから? 本当に?」

「ふふっ。今までもそうして来たじゃない」


 ……なるほど。


「じゃあ、こっちは?」


 後ろの扉を見る。

 扉は板の先端に付いており、その先はないように見える。


「そっちに行くとね、私が消えるわ」

「……消えるって、どういう」

「あなたはどうなるか分からないけど、私は確実にこの世から消えることになるわ」

「それって、死ぬってことですか」

「端的に言えばそうね。そして今回は、それをあなたが決めなくてはならないの」


 そうか。

 あの扉を超えれば、少なくとも身体は死ぬと。


 それなら、まだこっちはいいかな。


「じゃあもう行かないと」


 板の端に立つ。

 恐怖心はあるが、まだ生きられるのだからどうってことない。


「ああ。でも最後に一つだけ」

「何かしら」


 次にいつ会えるか分からないし、今のうちにちょっと気になったことを聞いてみる。


「あなたは僕の命令関係なしに動くし、あるいは僕の命令に背くこともある」

「そうよ」

「それは、あなたの意志なんですか?」

「いえ、私に意志なんてないわ」


 意外な答えに思わず彼女の方を向く。

 彼女は一瞬真顔だったが、すぐに微笑んだ。


「だって、私はあなたの身体よ。今は何故かお喋り出来ているけど、いつもはただ淡々と仕事をしてるだけなんだから」

「じゃあその仕事って、誰からか命令されたんですか?」

「誰からも何も、産まれた時から決められていた仕事だったのよ」

「いやでもそれじゃあ……」

「あなたにもあるでしょう。自分の意志とは関係なく課せられた使命が」


 俺の……使命。


「しかもその使命は逃れられない。だって、使命を果たさずにすぐ死ぬ私に価値なんてないでしょう」

「……」


 鳥肌がたつ。

 よくわからないがこれ以上この話をしてはいけないと思った。

 もう、目覚めよう。


「行ってきます」

「またしばらく会えなくなるのかしら。でもね……」


 彼女は笑みをこぼした。

 だけど、とても不気味に思えた。


「私はいつもあなたのことを見ているから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ