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災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第二章:蛇王の旅路

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054 宝探し


「よ~し! これ終わったら女の子とイチャイチャできる店に行こう!」

「行くわけないでしょう」

「……こうでもしないとモチベーションがさ」


 気持ちは分からなくない。

 ガールフレンドから貰ったものを盗られたのだから、落ち込むに決まっている。

 俺もこのネックレスを盗られていたら相当萎えていただろう。


「それにお前は大丈夫かもしれないけど、俺は相当溜まってるわけよ。だって考えてみろよ。シーリンはスタイルいいし、お嬢様は言うことのない美人。イヴちゃんだって顔はあれだが、なかなかドスケベな体つきをしている。この状況で我慢出来てる俺、すごくない?」

「その話は前も聞いた」

「じゃあお前はどうなんだよ。あいつらといて平気なのか?」

「……平気なわけねえだろ」

「だろー?」


 あれで余裕で平常心を保てる人がいるのなら見てみたい。

 男なら少なからずそういう気も起きるもの。

 それをなんとか耐えているのだ。

 ユナ!

 姉さん!

 力を貸してくれー!


「そういえばゼオちゃんはどういう女性がタイプなの?」

「タイプですか」

「そう。例えばあの3人だと誰が一番好み?」


 うーん。

 そういう話は少し気が引けるが、まあどうせ今は男だけだし、こういうのもある意味健全な話題と言えるだろう。


「お嬢様、ですかね」

「ほう。まあ想像通りだな。お前ああいう清楚そうな人好きそうだもんな」


 女性関係はいろいろとあったが、元来の俺の好みのタイプとなるとお嬢様が一番近いか。

 気品があり美しく、しっかりとした芯を持っている。

 それでいてどこかミステリアスな雰囲気がある。

 そういう人が好きだ。


「俺はシーリンかなぁ。年上がタイプなんだよね。ああいや、お姉さん系とでもいうのかな……」


 なら、ユナはどうだっただろうか。

 付き合いは短かったが、今でも心は惹かれている。

 理由はわからない。

 強いて言語化するなら、彼女の涙と後ろめたさ、かな。


 姉さんは、そうだなあ。

 気品はないし、ミステリアスでもなんでもない。

 美しいというよりも可愛いの方だし。

 彼女はただただいい子だった。

 純粋だった。

 それを守ってあげたかったのかもしれない。


 そして――。


「おい」

「どうしました?」

「お前、昔の女のこと考えてただろ。俺の話聞いていなかったな?」

「さあ……」


 お姉さんがどうとか言ってたか?

 全然聞いてなかった。


「ま、いいや。じゃあ髪の長さはどう?」

「長い方がいいですね」

「同じだ。じゃあ胸派? 尻派?」

「悩みますが尻かなぁ」

「ええ~。胸の方がいいだろ」


 なんてくだらないことを喋っていると、目的の場所についた。


「ここであってるのか?」

「とにかく来てはみたが、なんのこっちゃだな」


 まず俺たちは宝を探すことにした。

 人探しの方は別に何もしなくてもいいし、ショットガンは襲ってきた盗賊たちにぶっ放してやろうと思っているからだ。


 それに宝探しについてはヒントがあった。

 「塔から蛇の向く方に3歩、杖のある方に5歩」。

 これは一昨日受付嬢がとある筋から手に入れたニムロデの暗号だという。

 この『塔』というのは、今目の前にあるとんがった岩のことらしい。

 地元でもそう呼ばれているので間違いないとのこと。

 普通は単に『塔』と聞くと別のものを想像するのだが、まあいいか。


「蛇、蛇なあ。それっぽいものは見当たらないぜ」

「杖もよくわかりませんね。よしんばわかったとしても、8歩歩けば何かがあるようには見えませんね」


 周りはちょっと草が生えているぐらいであとは何もない。

 ということは……。


「埋まってるかもな」

「かもしれませんね」


 じゃあやることは一つだな。

 俺は杖を地面に突き立てた。


「ライサンド、砂を吸い込まないように」

「え?」

「我は低き者、気を寄せ、弾く、渦のよう」

「ちょいちょい、待てって!」


 風が辺りに吹き始める。

 とても強い風だ。

 やがてそれは自分を中心とした渦となり、砂を舞い上がらせた。

 普段ならまあまあ魔力を使う魔術だが、杖のおかげもあってか楽にできた。

 いいね、これ。


 風を止めて、周囲を見渡す。

 すると一か所だけ妙なところがあった。

 明らかに砂の色が違う。

 ライサンドがそこを掘り起こすと、石板が出てきた。


「正解は、西に3歩、南西に5歩だったか」


 謎解きはできなかったが、良しとしよう。

 こっちは遊んでいるわけではないのだから。


「なあゼオ。西ってなにがあったけ」

「ここからだとラマーナが近いですね。あとは特にないと」

「そうか……。そのラマーナってなんて呼ばれているか知ってるか」

「『ユーバーの心臓』でしたかね」

「だよな。……いや、ある伝説を思い出してな。なんでもない」


 ライサンドはそういうと石板に付いた砂を払いのけた。


「それでこれが宝なのか?」

「いえ、そうではないようです」


 石板に触れると地図が浮かび上がってきた。

 魔術の暗号を仕込んでいたようだが、これぐらいならわけない。


「なるほど、ということは……」

「あるのでしょう、ここに宝が」



-----



 その場所はさほど遠くなかった。

 岩山に挟まれた道を辿っていった先に奴らのアジトがあった。


「おい、あれって!」


 ライサンドが指をさす。

 そこにはラードラゴンに乗っていた老人がいた。

 金貨を数えてニマニマしている。


「あいつ~、今返してもらうからなぁ!」


 他の荷物もここにあると考えていいだろう。


「どうします? 夜を待って侵入します?」

「いや、もうやっちゃってもいいだろう」


 確かに拠点自体は小さい。

 人数も20人ほどか。

 特段強そうな人はいないし、なにより俺たちをここまで近づけていることでこの拠点の程度がわかる。

 だが、堂々と行ってもいいものか。


「あそこに石板があったってことは、ここに宝があることをニムロデはまだ知らないはずだ。そして奴らはもうじき宝を取りに来る。チャンスは今しかない」

「確かに、そうかも」

「じゃ、援護よろしくな」


 そういうと勝手に飛び出し、大きく腕を広げた。


「おらぁ! 俺のペンダントを返してもらうぞー!!」


 盗賊たちは一瞬戸惑った後、すぐさま弓や銃を手に取り、ライサンドに向かって撃ち始めた。

 しかしそれらはライサンドに届くことはなかった。


「へへ。信じてたぜ」

「いきなり出るなぁ! あとちょっと遅かったらお前死んでたぞ」

「うるせえなぁ。前もって張ってたくせに」


 バレてたか。

 だからってそんな無茶はやめてほしい。


 盗賊たちは突然の来客にまだ戸惑っていたが、すでに戦闘態勢に入っているようだ。

 剣持ちが8人、ナイフが3人、銃が6人と弓が2人。

 そして伏兵も数人いるな。

 まあなんとかなるだろう。


「ゼオちゃん、なるべく殺すなよ」

「わかりました」

「よし。じゃあ戦闘開始」


 ライサンドが突っ込み、拠点の真ん中で暴れ始める。

 皆の意識がそちらに向かう。

 俺はその気に乗じて魔術を撃つだけ。

 簡単な仕事だ。

 もちろん、俺に向けた攻撃を避けることも忘れずに。


 戦況はあっという間にこちらに傾いた。

 もう相手は皆フラフラだ。


「ま、待ってくれ! 降参だ!」


 盗賊の1人がそう言った。


「この前はすまなかった。荷物は全部返すよ」

「おお。そりゃ良かった」


 リーダーらしき男が指示をすると、俺たちの荷物はきれいな状態で返ってきた。

 ライサンドが中身を確認する。

 どうやら全部あったようだ。


「まったく手を付けていなかったのか?」

「いやまあ、ちゃんと管理しないと怒られてしまうんで」

「そうか。『親』は怖いもんな」

「へへ……。その通りです。で、これで許してもらえますかね?」


 ライサンドは首を振った。


「わざわざここまで取り返しに来て、これだけっていうのはなぁ~。お前もそう思うだろ?」

「対価が見合ってないな」

「じゃあ、金ならいくらでも出しますんで――」

「いや、そうじゃなくて、他のモノが欲しいな」


 そう言った瞬間盗賊たちの目の色が変わった。

 空気が変わった。

 ライサンドもそれに気づいたようだ。


「他、とは?」

「その~、噂で聞いた、たから――」


 盗賊に1人が襲い掛かる。

 いや2人、じゃなくで全員。

 消えたはずの闘気がよみがえった。


「いきなりなんなんだよ!」


 とはいえ実力は変わらず。

 先ほどのようにこちらの方が有利に戦闘が行われている。

 だが、一点だけ違うことがあった。

 それはしぶとさだ。


 何度ライサンドに峰打ちされようと、何度俺の魔術を食らおうと立ち上がる。

 骨折している人も足を引きずりながら向かってくる。

 これはちょっとヤバいか。


「ダメだ! やらなきゃ殺られる!」


 ライサンドも手加減が出来なくなったようだ。

 辺りに血しぶきが飛び始めた。

 俺も本気を出さなければ。


 ライサンドに防護膜を被せ、爆撃魔術を発動させた。

 死なない程度にはやったつもりだが、ちょっとやり過ぎたか。


「おおう、びっくりしたぁ」


 砂煙の中からライサンドが出てくる。

 怪我は、していないようだ。


「これは流石にあきらめ――」


 いや、まだだ。

 彼らはまだ立ち上がろうとしていた。

 その顔は殺意と、そして恐怖で満ちていた。


「まじかよ……。ゼオ、ここは一端引くか?」

「いや、その必要はない」


 男が1人剣を持ち、襲い掛かってきた。

 しかし数歩歩いたところで見えない壁にぶつかった。


「“魔力隔壁(ドーム)”を張った。あいつらはここから出られないよ」

「じゃあもう敵は無力化したんだな」

「そうでもなさそうだ」


 拠点の奥の方を指さす。

 そこには小さな穴があった。


「まだ誰かいる。敵意は無いようだけれど」

「……行ってみるか」


 ライサンドが剣を構え、穴に向かう。

 俺もついて行こうとした。

 しかし、足が止まった。

 妙な感覚がした。

 どうも静かすぎる。


 振り返ると、賊たちは全員倒れていた。


「え……」


 恐る恐る近づく。

 皆口から血を噴き出して倒れている。

 そしてこの肉片は、まさか……。


 ありえない。

 全員がそうしたのか?

 宝を盗られるぐらいなら、こうなってもいいと?

 だいたいこれじゃあすぐ()()ことはできないはずだ。

 とんでもない苦痛を受けた上で……。

 それも覚悟の上だということなのか。


 こいつらの『宝』とは、いったい……。


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