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災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第二章:蛇王の旅路

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042 語らい


 まずは~誰から――

 え、俺からぁ?

 

 まあ言い出したのは俺だからな。

 いいだろう。


 俺はアトルカ大陸のシージって街の生まれで、親父が武器屋だったんだ。

 街の中でもまあまあ有名な店でな、まあ金に困ったことはなかったよ。

 俺には兄弟がいなかったから、親父は俺が跡を継ぐと思っていたんだ。


 でも考えて見てくれよ。

 武器屋には毎日客がくる。

 客ってのは大体が戦士だ。

 時には名のある軍人も来たりする。

 そんな日常を過ごしていたライサンド少年の気持ちになってくれ。

 憧れるのは親父じゃなくて、戦士だ。


 正直親父の仕事を誇りに思ったことはない。

 ただ武器を売ってるだけだったからな。

 職人は別にいたし、楽な仕事だよ。

 それよりも、己を鍛え、挑戦していく人の方が憧れるなんてあたりまえだろ。


 だから、いつか出ていこうかなって思ってはいたんだ。

 でも13の時、事件が起きた。


 俺には小さい頃から好きな人がいたんだ。

 5歳年上の流水派の剣士でな、まあ綺麗な人だったよ。

 俺のことを弟のように思っていてくれてたみたいで、よく店に来ていたよ。

 ついでに剣の稽古を付けてくれたり、ちょっと遊んでくれたりした。


 3回フラれたね。

 1回目は7歳の時。

 2回目は10歳で祭りがあった日だったかな。

 3回目は12歳の誕生日。


 で、4回目にやっと想いを受け取って貰った。

 正直それまでは男だと思っていなかったらしい。

 でも13にもなれば筋肉質になってくるし、彼女に何度かは勝てるようになってくるからな。

 やっと男として見てもらえたよ。


 その夜は彼女の泊まってる宿屋に招いて貰ったんだ。

 汚ねえ部屋だったよ。

 ギルドの寮みたいなもんさ。

 彼女もそれが嫌だったみたいでな、「俺がここから出してやる!」って言ったら喜んでたぜ。


 そっからそっと手に触れてな、そしたら向こうから握り返してきたんだ。

 そん時は俺もまだ初心だったから心臓バクバクだったよ。

 なんとか彼女の目を見て、唇を――


 え、そっからは話さなくていいって?

 

 …確かにな。

 こっからは男だけの時に話すとしよう。


 でまあ、もう言ってしまうと彼女は死んだんだ。

 半年も経たないぐらいに魔物に襲われたんだ。

 ま、うちの街ではよくある話だよ。

 戦士ってのは年に何百人も死ぬ。

 彼女はその中の1人になったってだけさ。


 俺は彼女になにもしてやれなかった。

 唯一やったことといえば、武器を割引したことぐらいだ。

 そう考えると、なんか情けなくてな。


 だから俺は旅に出ることにした。

 俺はまだ世界の広さも怖さも知らない。

 なんにも知らないまま小っせえ街で一生を過ごすのは嫌だったんだよ。

 せめて彼女がどんな世界を見てきたのか知りたかったんだ。


 俺は確かに危険なことや強い奴と闘うのが好きだ。

 でもそれはただスリルや名声を手にしたいだけじゃない。

 その先の景色が見たいからなのさ。

 彼女が見たもの、見れなかったもの。

 それを見てやることが彼女に対する弔いだと思ったんだよ。


 親父には反対されたよ。

 そりゃそうだ。

 俺なんて当時は第五星になれるかなれないか。

 魔物と闘ったことすらない。

 そんな奴、無駄死にするだけだよなぁ?


 だけど、理屈じゃないんだ。

 お前らもわかるだろ?

 正論じゃ俺を止めることは出来なかったんだ。

 それで話が嚙み合うはずもなく、親父とは絶縁したよ。


 でもさぁ、俺が出ていくって言ってた時、親父、笑ってた気がするんだよなぁ。

 単なる見間違いかもしれないけど、本当は嬉しかったんじゃないかな。


 それで俺はギルドで金を稼ぎながら、セイエナ大陸に渡って来たんだ。

 本当はトーラバルトに行きたかったんだけど、まああそこは無理だったよ。

 でも色んな経験を積んでいくうちに強くなっていってな。

 なんとか風神流上位まで行けたというわけさ。


 まあ俺の話はこんなもんでいいだろ?

 なんでこの任務に参加したのか、今更説明しなくてもわかるよな。


 じゃあ次は…イヴちゃん、どうぞ。



-----



 あたしかあ…。

 

 あたしは重い話とかはないぞ。

 ただ強くなりたいから故郷を離れたんだ。


 知っての通りあたしはドワーフだ。

 天と同じぐらい戦神を信仰し、強くなることを好む。

 だけどそれは男に限った話だ。


 ドワーフってのは男女の役割がきっちりと分けられている。

 人間よりもな。

 女は絶対に鉱山に入っちゃいけないし、鍛冶道具に触ることさえ許されていない。

 逆も然りだ。

 「男が料理?そんなことしてる暇があったら家族の為に働け!」ってな。

 そしてそれは戦にも当てはまる。

 戦いってのは男がやるもんだ。


 疑問に思う奴?

 いなかったね。

 もう文化なんだよ、あれは。

 ドワーフが戦神を祀る限り続いていくだろうね。


 あたしも普通に生きていればずっと村の中で過ごしていたはずだった。

 でもある2つのものがあたしを変えた。


 1つは祖父の存在。

 祖父は人間でな、一年に数回ほどドリオ高原に来てくれてたんだ。

 そん時にこっそり戦い方を教えてもらった。

 結構ハードだったんだけど、楽しかったよ。


 そしてもう一つ。

 あたしは英雄に会ったんだ。

 誰かわかるか?

 まあ、英雄と言ったら、あのお方しかいないよな。


 そうだ。

 『神封じの英雄ストロマイト』。

 彼に出会ったんだ。


 噓じゃないよ、マジだって。


 あれは12ぐらいだったかな。

 祖父に連れられて北オステルの密林に行ったんだ。

 オオマリノヒヒって知ってるか?

 でっかい猿みたいな魔物なんだけど、そいつが暴れてて、なんとかするために祖父がやって来たんだ。


 あたしたちが現場に着いた時には大変なことになっていた。

 オステルの兵士たちも、ティロニアンに騎士たちも全滅していた。


 だけど、まだ1人ヒヒと闘っている奴がいたんだ。

 いや、闘っているというか、遊んでいたんだ。


 オオマリノヒヒはでかい図体に割に動きがすばしっこく、その上拳法擬きを使ってくるんだ。

 武術の上位者であっても一方的にボコられる。

 だけどそいつはヒヒに攻撃を紙一重でかわし続けていたんだ。

 見事なものだったよ。

 まるでヒヒがわざと攻撃を外しているように見えるほど、動きが洗練されていたんだ。


 しばらく祖父とその様子を見ていたら、流石に気づいたらしい。

 一瞬こちらに向いた後、ヒヒの顔面に一発ぶち込んだんだ。

 ヒヒはその一発で倒れた。

 流石、魔神を一撃で葬ると噂されているだけのことはあるよ。


 で、残念だがここまでなんだ。

 こっから先は覚えていない。

 気づいたらベッドの上にいたんだ。

 そんでその時に初めて彼がストロマイトだと祖父から教えてもらったんだ。

 

 本当なんだよ~。

 ヒヒが倒れた後、彼と目が合った気がしたんだが、そっからは記憶がないんだ。

 悪いな。


 顔?

 いや見てないなぁ。

 鎧着てたから。


 まあ、ストロマイトの話はもういいだろ。

 とにかくあたしはそれにアテられちゃったんだ。

 これほど強く、美しい戦い様があるのかってな。


 そんで家出した。

 黙って出てったよ。

 絶対反対されるからな。


 そっからは散々だったよ。

 奴隷商人に売り飛ばされそうになったし、ブ男に初めてを奪われるし、魔物に襲われて死にかけるし…。

 正直何度も帰りたいと思ったね。

 でもあきらめなかった。


 あたしが強い?

 まあそうかもしれん。

 でも、うーん、どうだろうな。

 なんていうか、振り切れてたよ、そん時は。


 ま、そういうわけさ。

 とにかく強くなりたいから旅に出る。

 簡単な理由だろ。


 ほれ、あたしの話はこれで終わりだ。

 次はお前だぞ。



-----



 ああ、僕の番だな。

 僕も過去の話からするとしよう。


 僕の両親は、僕が物心つく前に亡くなったんだ。

 悲しいと思ったことはない。

 そういうものだと思っていたし、僕にはばあちゃんがいたから。


 でも10歳の時にばあちゃんに聞いたんだ。

 「なんで僕にはお母さんがいないの?」って。


 ばあちゃんは泣き崩れた。

 今までばあちゃんが泣いたところを見たことがなかったから衝撃的だったよ。

 そして一頻り泣いた後、話し始めたんだ。

 僕のばあちゃんは昔、人に恨まれることばっかやってきたらしい。

 それで今でもばあちゃんに仕返しをしてやろうって思っている人がいるんだ。


 あいつらもそうだった。

 たまたまばあちゃんが遠出していた夜。

 賊どもが家に押しかけてきた。

 父と母はその時に殺されたんだと。

 そして翌日、床下にうずくまっていた僕をばあちゃんが見つけたんだ。


 復讐とかは考えたことがない。

 もっと年齢がいってたら考えたんだと思うけど。

 まあ、あまりにも幼かったね。


 で、実はその話にはたいして衝撃を受けなかった。

 それよりもばあちゃんが僕に「守れなくてすまん」って謝ったことの方が驚きだったよ。

 大人が子どもに謝ることがあるんだなって。

 そん時に初めてばあちゃんがかっこよく見えたな。


 だから尊敬する人をあげろって言われたら、ばあちゃんって答えるかな。

 まあ他にも色々いるんだけど。


 でもばあちゃんとは何度も反発したよ。

 何というか、性格の相性が最悪だったんだと思う。

 ばあちゃんは脳筋で、俺は読書家だったからな。

 魔術を使おうと思ったのも、最初はばあちゃんに対する反抗心があったからだろう。


 で、この任務に参加した理由だが、ばあちゃんと会うためだ。

 もう3年もあってない。

 心配なんだ。


 ……。


 え、ああ。

 話はこれで終わりです。


 なぜクリストロフに?

 その話は、長くなりますよ。


 いや~、ホントに長いですよ。

 うん、やめておいたほうが――

 

 ってイヴ!

 それは他の人に言わない約束でしょう。


 えやあ?

 違いますよ。

 隠してることなんか――


 ああもう!

 わかりました話します。


 はあ、まったく…。


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