表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第一章:落ちてきた星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/90

・とある獣人の少女のお話


 あるところに、獣人の少女がいた。

 少女は家族や仲間と仲良く暮らしていた。

 しかし7歳のころ、住処の森を人間に焼かれ、一人となった。


 彼女は様々なところを転々とし、獣を狩り、食物を盗み、生活をしていた。

 彼女に勝てる人間はほとんどいないが、弱っているところを襲われたりして、

 奴隷に売り飛ばされたことも何度かあった。

 そして飯を貰い、体力が戻ったところで脱走する。

 それの繰り返しだった。


 彼女を買った人間も酷いものだった。

 肉体関係を迫ってくる者。

 魔獣と闘わせて賭博をする者。

 兵士の訓練相手にしようとした者。


 そして彼らは決まって彼女に名前を付けるのだ。

 「雌犬」「狂犬」「カカシ」「猛獣」「(ミート)」・・・

 酷い名前だった。



 ある時、彼女に新たな主人が現れた。

 何十人目かの主人だ。


 しかし、その主人はいつもとは違った。


 まず、一人だった。

 いつもなら大掛かりで、まさしく猛獣を運ぶほどの人数でくるのだが、一人で、その上自分よりも小さい奴だった。

 大した胆の座った奴だった。

 いや、今思えば逃がす気だったのかもしれない。


 そして、自分に名前を付けてくれた。

 今までのような酷い名前ではなく、素敵な名前。

 主人の考えはわからないが、きっと神話の女神の名前からとったのだろう。

 いい名前だ。


 最後に、本気で自分のことを心配してくれた。

 秘密で冒険者ギルドで金稼ぎをしていたこと、そして魔獣との戦いで顔に傷が付いたことを知ったとき、主人は泣いたのだ。



 本当のことを言えば、彼女は主人の元から逃げる気だった。

 冒険者ギルドで金を稼ぎ、十分に貯まったら家から出ようと思っていた。

 この『首輪』があれば怪しまれることはないだろうし、主人は家を空けることが多いのでチャンスはいくらでもあった。


「どうせいつか本性をみせるはずだ」


 彼女はそう思っていた。


 でも、ミスをした。

 大型の魔獣との戦いに手こずり、帰るのが遅くなった。

 隠せない場所に傷が付いた。

 そしてバレた。


 主人は泣いた。

 「彼女は自分ために命をかけていた」と勘違いをして。


 彼女も勘違いをしていた。

 「主人は自分のことを大事に思ってない」と。


 彼女は主人との生活を振り返った。

 主人は自分のために動いていたし、自分を喜ばそうと色んなことを試していた。

 頻繫に性的な目で見てきたし、自分を材料に発情していたのも知っていたが、絶対に手は出して来なかった。

 そして自分はそれに気づいているつもりだった。


 しかし、彼女は自分が「幸せ」であることに気づいていなかった。


 『自分のことを大事に思っている人がいつも傍にいる』

 これを「幸せ」といわずに何と言おうか?


 彼女は主人に伝えた。

 初めて自分の名前を口にし、伝えた。

 自分が幸せである、と。



 その後、なんと主人は剣をくれた。

 しかも、自分のために使ってくれと言った。

 断れなかった。

 いや、断りたいと思えなかった。


 彼女はこの瞬間、身も心も主人に仕えようと決心したのだ。

 そしてその夜、彼女は主人を襲った。


 しかし、別れは突然に来る。

 主人が目の前で消えたのだ。


 彼女は決意した。

 必ず主人を見つける、と。


 主人は強い人だ。

 必ず生きているはずだ。


 死んでてもいい。

 その時は墓を建てて、自分が死ぬまで守り続ける。


 ちょうどいいことに、昨晩に主人の匂いはたっぷり嗅いだし、味わいもした。

 自分の嗅覚も頼りになるだろう。



 彼女は主人を探す旅に出たのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ