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災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第一章:落ちてきた星

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023 予兆


 ビジョーから数十日たった。

 俺は破竹の勢いで成長していた。


 日を追うごとに使える魔術の種類が増え、武術の方も連続91回まで到達した。

 100を超えるのも時間の問題だ。

 師匠も「数日のうちにこの稽古は終わるだろう」と言っていた。

 

「アッチの方も成長したもんね~」


 横から美少女エルフが意味不明なことを言ってくるが無視。


「ええ!ほんとだよ!最初はヘタクソだったのに、今じゃもう……」


 うるさいなこいつ。

 殴るよ。


「ひどいな~」


 とはいえ、この美少女のお陰で張りのある生活が出来ている。

 朝早くにランニングし、午前中は魔術の勉強、午後は鍛錬し、夜はこの美少女とイチャイチャしてから就寝。

 幸せで充実した毎日である。



 そんな折、人間の商人がやって来た。

 師匠が「丁度良い」と商人との会談に俺を呼んだ。

 何故か姉さんもついて来た。


「どうもお弟子さん」

「初めまして、ゼオライトと申します」

「これはご丁寧に。私はパーキングと申します」


 少しふくよかな男性。

 歳は30後半ぐらいだろうか。


「久しぶりじゃのう。もう6年になるか?」

「いえ、3年ですね」

「そうじゃったか」


 師匠とは面識があったのか。


「レティシアちゃんも久しぶりだねぇ」

「おじさんも元気でよかった!」


 姉さんも知り合いなのか。


「師匠とはどういった仲なのですか?」

「ああ、実はね…私は年に2回ほどここに来ていたんですよ」

「そうだったんですか」

「うん。でも色々あってね、ここ3年はこっちまで行く余裕がなかったんです」


 行商人か。

 セイエナの森特有の産物とかを買ってるのかな。


「色々って、クリストロフの方で商売が上手くいったのかい?」

「いえ、厄介なことが起きましてね…」

「厄介?」

「ええ。王都ティロニアンがクリストロフに宣戦布告したんです」


 なんと。

 それは確かに厄介だ。


「前々から仲は悪かったが、ついに戦争をするというのか」

「そのようです」

「ティロニアンの軍隊は世界最強と言われている。しかしクリストロフはそう簡単に落とせる相手ではないぞ」

「それがですね…」


 パーキングさんは額の汗をハンカチで拭ってから話を続けた。


「ティロニアンは大賢者ジェネスというお方を味方につけ、遠距離魔術攻撃を行い、既にクリストロフのいくつかの領地を制圧したそうです」

「大賢者ジェネス?」

「ええ。なんでもオストロル出身のとんでもない魔術師だそうで……」


 師匠がチラッとこっちを見た。

 俺は小さく頷く。

 ジェネスとはおそらくマサキのことだ。


「また聞くところによると王都では『ヒール』という魔術が流行っており、それを生み出したのも彼だそうです」

「ヒールだと?」

「唱えるだけで傷がふさがったり、骨折が治るそうです。どうやらジェネス本人と彼から寵愛を受けた女性しか使えないようですが、恐ろしい魔術に違いはありません」


 『寵愛』、ねえ……

 絶対ろくでもないことしてるよ。


「それは、もはや魔術ではないな」

「そうなんでしょうか?私にはわかりませんが…」


 確かに人体の欠損を直すというのは魔術の範疇を超えている気がする。

 そんなことは自然に起きないからな。


 ていうか、あの時…

 ユナがあいつの顔面を蹴り飛ばした時に、間違いなく出血していた。

 でも次の瞬間には血は出ていなかった。

 あれはヒールという魔術によるものだったのか。


「あと、魔神の動きも活発になっています。実際私も襲われかけました。他にも噂ではありますが、竜王様の手の位置が変わったとか、アンタレスが寝返りをうったとか……。一番怖いのはサンドリスの封印の一つが壊れたことでしょうか」


 うわあ。

 不審な動きしてるのがよりにもよってその三人かよ。


「ま、大変だったじゃろう。それでいつまでここにいるんだ?」

「10日間ほどいさせてもらおうかと」

「………わかった。ゆっくり休んでいけ」


 パーキングさんは「ありがとうございます」と言うと部屋から出ていった。

 それを見届けると師匠はこう言った。


「ゼオ君。あと10日でなんとかするぞ」

「え?」


 姉さんは今の言葉の意味がわかっていないようだ。

 でも俺にはわかる。

 「あと10日で儂を倒せ」ってことだ。



-----



「ねえゼオ君。ティロニアンってどこ?あとサンドリア?って誰?」


 家に帰ろうと木の橋を渡っていたところ、姉さんに質問された。


「それ、さっきの会話なんにもわかってないってことじゃないですか……」

「あはは、ごめん」


 まあ半年に一回しか人間が来ないところなんだ。

 世界情勢にも疎いか。

 それでもエルフとしてサンドリスぐらいは知っておいて欲しいものだ。


「まずここが何大陸かはわかりますよね?」

「セイエナ大陸!」

「そうですね。それで……」


 その後、俺は姉さんに丁寧に説明した。



 今のいるのはセイエナ大陸だ。

 そこから南に向かうとアトルカ大陸。

 さらに南に行くと極寒の地ツレバス大陸。

 ここから東に行くと大海の向こうに最大の大陸、ユーバーランド。

 ちなみに西に向かってもユーバーランドだ。でかい。

 そしてクリストロフ王国はセイエナ大陸の北東。

 王都ティロニアンはユーバーランドの西側にある。


 歴史を話せば長くなるしややこしいので割愛するが、この二つの国は非常に仲が悪い。

 1000年前にあった戦争を未だに引きずっている。

 セイエナ大陸に侵攻したティロニアンが悪いのか、それに対して過剰にやり返したクリストロフが悪いのか、俺にもわからん。

 貿易は一応行われていたが、話を聞く限り船の往来は厳しくなるだろう。


 そうなると俺も困る。

 というのもオストロルはティロニアンの南東、つまりティロニアンを超えた先にあるのだ。

 もし船が止まったら、オストロルに帰るのは難しくなる。


 一応別ルートはある。

 アトルカ大陸に行ってからユーバーランドに行く方法。

 西に向かって行き、ダネル海峡を超えてユーバーランドに入る方法。

 しかしどちらも大変な道のりになるだろう。


 まず、アトルカ大陸とツレバス大陸、それとユーバーランドの南の方は通称『魔界』と呼ばれており、魔神と魔族の領域である。

 人間に対して友好な地域もあるそうだが、俺ごときが行ける場所ではない。

 特にアトルカには『古竜山脈』、ツレバスには『コキュートス』、ユーバーランドのオステル砂漠には『旧都ロニア』とやばい場所ばっかりだ。

 なので、前者は無理。


 後者は距離が大変だ。

 セイエナ大陸からオストロルとなればこの星を半周以上移動することになる。

 『巨人の高原』で近道できるが、これも死にに行くようなものだ。

 どうしよっか。



「世界って危険でいっぱいだね」

「少なくとも人間が魔族と敵対しているのはエルフの所為ですけどね」

「え、そうなの?」


 なんも知らねえなこいつ。


 まあいいや。

 説明を続けよう。

 

 次はあの三人だ。


 まずは『魔界将軍サンドリス』。

 魔神であり魔族のトップだった奴だ。

 セイエナ大戦では多くの魔族を引き連れセイエナ大陸に侵攻。

 一時は大陸制覇をするも、軍師としての才は全くなかったようで何度も敗北。

 根っからの武闘派で、将軍のくせに前に出る。

 そしてやっぱり負ける。

 ただしそれは軍隊として負けただけであり、個としてはとてつもなく強かったという。

 最後は二大英雄であるイングとストロマイトに敗北して、現在はコキュートスに封印されている。


 『竜王ドルヴァングラン』。

 古竜山脈に住んでおり、竜族の長を努めている。

 体長は山に巻きつけるぐらい大きく、現在は山脈にもたれかかって瞑想しているという。

 人間と魔族とは中立な立場をとっており、サンドリスほど脅威ではないが、まあ強いそうだ。

 逸話としては、件の大戦時に勝手に縄張りを通り抜けようとしたサンドリスの軍隊にぶちぎれて、サンドリス以外を焼き殺したというものがある。 


 最後に『雷の巨人アンタレス』。

 謎。とにかく謎だらけ。

 大陸を動かしたりだとか、雷雨を作っているだとか、地震を起こして文明を破壊しているだとか、規模が大きい伝説が多く残っている。

 現在は巨人の高原で寝ているそうだ。

 逸話としては、サンドリスの宴会の騒音で起こされてぶちぎれ、山を一個投げ飛ばしたというものがある。



「魔界将軍……なんか愉快な人だね」

「実際人間の中にもファンはいますね」


 この世界には強い古竜や魔神が多くいるが、この三人ぶっちぎりでやばく『三大悪神』と呼ばれているのだ。

 そんなやつらが同時に動いたとしたらとんでもないことになる。

 何か悪いことが起きるだろう。

 いや、もう起きているのかもしれない。


 師匠は言った。

 星の子が災厄を呼ぶ、と。

 それが本当ならマサキを殺さなければならない。

 それが俺の使命で、俺が生まれてきた意味なのかもしれない。


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