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災厄の落とし子  作者: 特教機関ゲリュオン
第一章:落ちてきた星

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020 叱咤


 気付けば、真っ白い空間にいた。

 だだっ広い空間。

 辺りには薄く霧がかかっている。


 ついに俺は死んでしまったようだ。

 まあ姉さんたちを守れて死ねたのなら本望だ。


 ふと後ろを向くと、誰かが立っていた。

 金髪で白いドレスをきた女性。

 背中には羽が生えている。


 ……なんかこういう事、前にもあったよな?


 女性はゆっくり近づいてくる。


 そしてアッパーカットをかましてきた。



-----



 目が覚めた。

 その瞬間、うおおおっと歓声が上がった。

 周りには20人ほどのエルフがいた。


 うるさいな。

 頭打って気絶してたんだからもうちょっと静かにしてくれよ。


 まあでも、俺もみんなも生きてて良かった。

 こうしてまた村の人たちの顔が見れるのは素晴らしいことだ。

 天に感謝。


 ふと横を見ると姉さんが涙を浮かべて座っていた。

 そして俺の胸元に飛び込んできた。


「うわあああんん! ゼオくん!!」


 あらあら。

 顔が涙と鼻水でぐちょぐちょになってますよ。

 ていうか……。


「姉さん。血、着いちゃいますよ」


 エルフは血を嫌っている。

 寿命が削れてしまうからだ。

 嬉しい気持ちはわかるが、俺の服はまだ汚れているからあんまり触ったら血がついてしまう。


「ゼオ君!助けてくれてありがとう」

「はいはい。それはわかったんで、一旦……」

「ほんとに、ズビッ、ありがとうねぇ」


 離れるつもりはないらしい。

 というか、もう頬に血が付いてしまっている。

 言わんこっちゃない。


 少し強引に身体を引き離す。


「姉さん、まずは自分の身を……」


 その時だった。


「ゼオ君のバカァ!」


 姉さんに平手打ちされた。

 涙を流しながらキッと睨んでいる。

 唇は何かを訴えようとしているのか、わなわなとしている。

 さっきまで騒がしかったエルフたちも静かになった。


 少したってから姉さんは話し始めた。


「ゼオ君がいなかったら、私たち死んでたかもしれないんだよ。

 幸いにも死人は一人も出ていない。これはゼオ君のおかげなんだよ!

 言ってる意味わかる?ゼオ君は私たちの命の恩人なの。

 その恩人が意識を失って、みんな心配してたの。ずっと。

 それで今、やっと起きて、嬉しくて抱き着いたら、今度は寿命の心配?

 1000年もある寿命が少し削れる程度がなんだっていうの!?」


 姉さんは真剣な目で俺を見ていた。

 そして、フッと呆れたように笑った。


「ダメだあたし。何に怒ってんだろ」


 そう言うと俯いてしまった。


 そんな姉さんに男が後ろから肩を叩いた。

 そして俺の横に座った。


「どうだいゼオライト君。まだ傷口は痛むかい?」


 胸元を触ってみる。

 少し痛いかもしれない。

 というかこれって。


「そうだ。私たちが治療させてもらったよ。包帯をきつく巻いているから動きにくいかもしれないが、5日もあればとれるだろう」


 そうか治療してもらっていたのか…


「あの……」

「おっと、それ以上は言わないでくれ」


 お礼を言おうと思ったら、止められた。

 続けて男はこう言った。


「勘違いして欲しくないのだが、私たちは嫌々君の血を触ったわけじゃない。

 血を触れば寿命は減るだろうが、そんなの構わないんだ。

 だって、君の勇気ある行動が無ければ既に死んでいた人もいたかもしれない。

 私たちエルフにだって心はある。恩人を見捨てるようなことはできないよ」


 そうか……。

 俺はエルフの人たちを見くびっていたのかもしれない。


 いきなりここに飛ばされてきて、文化の違いを目の当たりにし、なんとか対応して、理解して、それでも慣れないこともあって…

 まあとにかく頑張って慣れようとした。

 でもそれは間違いだったのだろう。

 エルフだって心を持った生き物だ。

 違う世界で生まれた種族じゃない。

 結局、他人を想う気持ちは人間と同じなのだ。

 「エルフは人間と違う」

 そう思い過ぎていて、一番大切なことに気づいていなかった。

 

「レティシアはそういうことが言いたかったんじゃないのかな?」


 姉さんは未だ俯いている。


「みんな、助かったんですか?」

「ああ。怪我人は多いが全員生きているよ」


 うん、そうか…

 俺のお陰でみんなが助かった。

 姉さんはもっと誇ってほしかったのかもしれない。


「姉さん」

「……なに?」


 そして俺は姉さんたちの想いに失礼なことをしてしまった。

 

「ごめんね。感謝の気持ち、ちゃんと受け取るよ」

「……もう一回抱きついていい?」

「うん。いいよ」


 今度はそっと抱きついてくる姉さん。

 俺も背中に手を回した。

 髪からはいい匂いがした。

 あのオイルか。


 村が半壊してもなんとかビジョーは行えるだろう。

 一生に一度、自分が主役になれる祭り。

 俺がいなければそれは行われなかったのかもしれない。

 そこに対しての感謝もあるのかな。


 俺は抱きしめたまま頭を撫でた。


「うぅ……」


 姉さんだけじゃない、村のみんなにも言わなきゃならないことがある。


「僕からもお礼を言わせてください。ありがとうございます。

 師匠や皆さんの助けが無ければ僕も死んでいたでしょう」


 ん?

 そうだ!


「師匠! 師匠は大丈夫なんですか!?」

「ちょっと!耳元で叫ばないでよぉ!」


 完全に忘れてた。

 そもそも飛竜と戦う羽目になったのは師匠を助けるためである。

 これで死んでいたら。

 いやでも全員生きてたって言ってたし。


「儂はここにおるぞ」


 背後から声がした。

 振り返ると師匠が座っていた。


「生きていらっしゃったんですね!」


 頭に包帯を巻いているのが気になるが、無事でよかった。


「あほう。儂が飛竜ごときに殺されるわけなかろう」

「え、でも飛竜に踏まれて……」

「あれは死んだふりをして魔力を回復していたんじゃ」


 流石師匠。

 なんて抜け目ないんだ。


「って、意識あったのなら助けてくださいよ!」


 エルフの人たちが来てなかったらマジで死んでましたよ!


「お前さんなら勝てると信じていたぞ」

「どう見てもピンチでしたよね? どこに勝てる要素があったんですか?」

「いや、動きは良かった。あれでもう少し筋力か魔力を鍛えれば一人でも勝てただろう」


 じゃあやっぱり今の俺じゃ勝てなかったってことじゃん。


「そう睨むな。魔力は防御するので精一杯だったんじゃよ」


 まあ今回は結果オーライってことで。


「てことは長老。ゼオライト君は既に飛竜を倒せる領域に入りつつあるということですか?」

「そうじゃな」

「それは凄いなぁ」

「私も竜狩りなんて久しぶりに見たわ」


 エルフでも飛竜を一人で狩るのは珍しいことみたいだ。


 それもそうだろう。

 一流の戦士、一流の魔術師……。

 そう呼ばれる人は山ほどいるが、その中にも壁というものがある。

 それは「飛竜を一人で倒せるかどうか」である。

 上位の人たちでもそれができるのは1%もいないだろう。


 そう思うと自信がついてきた。


「ほらあなたたち。ゼオ君はまだしんどそうにしているわ。そろそろ静かにしてあげて」


 レティシア姉さんのお母さん、レミィさんはそう言った。

 実際まだちょっとフラフラしていたから助かる。

 お腹もすいたし、眠い。


 村の人たちは「ありがとう」とか「また明日」とか言いながら家から出ていった。


「じゃあなゼオ君。稽古はビジョーが終わるまでせんから、ゆっくり休んでおけ」

「はい。師匠」


 師匠が最後に出ていき、家の中は三人だけになった。


「ほらレティシアも離れなさい」

「うん……」


 随分長い間抱きついていた姉さんもトボトボと出て行こうとしていた。

 その様子を見ていると、レミィさんが匙とお椀を持って来た。


「お腹すいているでしょう?ほら、あーん」

「え、いや、流石に一人で食べれますよ」

「そんなこと言わないの。腕にも傷はあるし、握力も弱くなってるから危ないわ」


 それは確かにそうだ。

 手に力が入らない。

 料理をこぼしてしまうかもしれない。

 だから食べさせてもらうのはありがたい。

 少々恥ずかしいが、さほど問題ではない。


 じゃあなにが問題なのかというと…


「ほらゼオ君。あーんして」


 ちょっと奥さん、胸元はだけすぎですよ。

 春になって薄着になるのはわかりますが、それにしても…


 ああそれ以上近づかないで。

 そういうふうに近づいたら、谷間だけじゃなくて……


「ちょっとお母さん! なにゼオ君をユーワクしてるの!?」


 ナイス姉さん。


「ゼオ君も鼻の下伸ばさない!」


 すいません。


「そんなこと言ったって、しょうがないでしょう」

「ご飯ぐらい一人で食べれるよ。ねぇ?」

「でも危ないわ~。こぼして火傷したら大変」

「んん~も~! あたしがやるからお母さんは出ていく!」


 親子喧嘩が始まった。

 攻める娘と受け流す母。

 こうなると長いってばあちゃんが言ってたな。


 だが、勝負はすぐに決まった。


「はいはい、わかりました。お母さんは出ていきますね」


 母が負けた、というか負けにいった。

 これでは実質姉さんの負けのように感じるが、本人はご満悦のよう。


「じゃあねゼオ君。娘をよろしくね~」


 ついに姉さんと二人っきりになってしまった。

 まあいつも通りと言えばいつも通りなのだが。

 ある意味、安心感もある。


「ゼオ君。ほら」


 匙を突き出してくる。

 その顔はぶすっとしていたが、心配している心もにじみ出ているようだった。


 よし。

 今日は存分に姉さんに甘えるとしよう。



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